山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼471号 「北ア・鷲羽岳の鷲羽池」

【概略】
北アルプス黒部の源流の鷲羽岳。その南東中腹にある鷲羽池は、標
高2740mの小さな池。紺青色をした水面はまさに竜でもすみそうな
感じだ。ふもとの人々はこの池を畏敬し、その山・鷲羽岳を「竜池
ヶ岳」と呼んだ。
・長野県大町市と富山県富山市との境

▼471号 「北ア・鷲羽岳の鷲羽池」

【本文】
北アルプスのど真ん中、黒部渓谷源流の鷲羽岳(わしばだけ)の南
東中腹、標高2740mあたりに鷲羽池という小さな池があります。
鷲羽池は直径250m。紺青色をした水面はまさに竜でもすみそうな
感じです。そんなことから鷲羽池を昔は竜池と呼んでいたそうです。

さらに人々はこの池を畏敬し、山の名まで「竜池ヶ岳」と呼んだそ
うです。

また、大正期の登山家・植物学者の辻村伊助は「飛騨山脈の縦走」
で、「山の八合目とも思われる右の直下に、小さな池が表れて、融
けそめた積雪の間に、ひたひたと冷水をたたえている。疑もなく、
花崗岩なる鷲羽の側面を破壊した小火山」と書いています。

池のほとりまで踏みあとがひとすじ湖面へ続いています。一度訪れ
たいところです。

ある年の8月、三俣蓮華山荘キャンプ場にテントを張ったのは入山
してから4日目目でした。次の日、すぐ目の前に鷲羽岳が大きい。

さわやかな風がテントの中を通り、少し体調をくずした家内が寝息
をたてはじめました。

その間、鷲羽岳まで2時間半、横目で鷲羽池を見ながら休みなしで
往復しました。なるほど眼下に青い水の色の小さな池が望めます。

遠く槍ヶ岳や穂高連峰・黒部五郎岳・薬師岳・立山・水晶岳・烏帽
子岳など欲しいままの展望が開けています。

目を移すと三俣蓮華山荘とテント場が見えます。家内の体調も気に
かかります。さすがに池まで行くには気が引けました。

▼【データ】
【所在地】
・長野県大町市JR大糸線信濃大町駅からタクシー・高瀬ダムから
歩いて延べ12時間で鷲羽岳。さらに15分で鷲羽池。そのほか付近に
何もなし。地形図上には池名のみ記載。付近に何も記載なし。

【位置】
・【鷲羽池】緯度経度:北緯36度23分57.5秒、東経137度36分
27.6秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「三俣蓮華岳(高山)」。5万分の1地形図
「高山−槍ヶ岳」

【参考】
・「飛騨山脈の縦走」辻村伊助:(「日本山岳風土記・1」(宝文館)
1960年(昭和35)所収

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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