山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼448号 「富士山・頂上に舞う天女」

【概略】
富士山の伝説です。平安時代前期、富士山の上で2人の天女が舞っ
ている姿を目撃した人がいるという。「…山嶺の上一尺許(ばかり)
を離れて白衣の美女二人雙び舞へるあり…」と『富士山記』という
本にあります。875年(貞観17年)11月5日のことだったという。
柳田国男も「昔話と文学・竹取翁」のなかで触れています。
・山梨県と静岡県の境

▼448号 「富士山・頂上に舞う天女」

【本文】
富士山はやはり日本中から霊山と仰がれた山だけあって、不思議な
話がたくさんあります。木花開耶姫(このはなさくやひめ)が、山
頂から天に昇っていった話は有名です。

またウグイスの卵から生まれたかぐや姫(「古今和歌集序聞書三流
抄」)が、天皇の求婚を断り富士山の頂上へ姿を消した話(「富士山
縁起」)もあります。

また昔から伝わる山頂にあるといわれる謎の池・コノシロ池は、噴
火口の大内院の上方、剣ヶ峰の所の旧火口跡だとする説があります。
コノシロ池についてはそのほか、山頂にある浅間神社奥社と三島岳
の間にある広場の雪溶けの水がたまってできる池がそうだとする説
もあります。このコノシロ池には、ニシン目ニシン科のコノシロと
いう魚がすんでいたという伝説があります。

そのほか平安初期の学者、都良香(みやこのよしか)が富士山につ
いて記した短い漢文の文章「富士山記」(「本朝文粹註釈」(巻の12)
柿村重松註・内外出版社)には「此(こ)の山は神仙の来たり遊ぶ
所なり。

承和年中(平安時代初期)、山峰より珠玉落ち来たりしが、、其の玉
には小孔ありきと。是れ蓋し仙簾の貫ける珠なるべし」とあります。
さらに不思議なのは、平安時代前期、富士山の上で二人の天女が舞
っている姿を目撃した記録があります。

続けて同書に「…又貞観十七年(875年)十一月五日、吏民舊例に
よりて祭を行ひしに、午時に及びて天甚だ美しく晴れ、仰ぎ観れば
山嶺の上一尺許を離れて白衣の美女二人雙び舞へるあり、土人共に
見きと。是れ古老の傅ふる所なり」とあります。

これについては柳田国男も「昔話と文学・竹取翁(たけとりのおき
な)」のなかで触れています。確かに富士山は不思議な山です。

▼富士山頂【データ】
【山名】
・【異名、由来】:富士山、不尽、不二、布士、富慈、芙蓉峰(ふよ
うほう)、富岳などの呼び方がある。富士山8合9勺(はちごうき
ゅうしゃく=3360m)からから上、約400万平方mは、徳川家康が
富士山本宮浅間大社に寄進したとの記録があるが、明治維新後国有
地にされていた。

8合目から上の神社の施設のある約16万平方m分は1952年(昭和27)
に大社に譲与されているが、富士山頂が返還されなかったため、大
社側が国を相手取って裁判を起こしました。1974年(昭和49)、最
高裁の判決で大社側の所有が認められた。

しかし静岡、山梨の県境が確定しておらず、登記手続きがとれず(東
海財務局)、2004年(平成16)12月17日、土地の所有権が国から富
士山本宮浅間神社に移った。(2004年(平成16)12月18付け朝日新
聞から)。

しかし、土地の所有権は認められはしたものの、山頂付近の静岡県
と山梨県の県境はまだ定まっていないという。したがって、土地登
記が出来ずじまい。住所は、もちろん静岡県でもなく山梨県でもな
い。

所在地は、日本国富士山無番地なのだそうです。同大社側は「これ
で所有権の手続きは解決した。県境の問題は県民感情もあり、登記
に向けて時間をかけて解決したい」と話しているという。

【所在地】
・山梨県富士吉田市、山梨県南都留郡鳴沢村と静岡県富士宮市、富
士市、御殿場市・静岡県駿東郡小山町との境だが八合目付近から上
部は富士山本宮浅間大社の「私有地」になっており、境界がはっき
りしていない。富士急行河口湖駅からバス、河口湖口五合目から5
時間30分で富士山頂。山頂剣ヶ峰に電子基準点(3777.39m)と二
等三角点(3775.63m)、白山岳に二等三角点(3756.36m)がある。
火口内に写真測量による標高点(3535m・標石はない)がある。

【位置】山頂剣ヶ峰に電子基準点と三角点、白山岳に三角点、火口
内に標高点がある。

・【剣ヶ峰の電子基準点】(標高3774.9m)緯度経度:北緯35度21分
38.75秒、東経138度43分38.3秒(国土地理院「電子国土ポータルWe
bシステム」から検索)

・【剣ヶ峰電子基準点のすぐ南の三角点】(標高3775.6m)緯度経度
:北緯35度21分38.26秒、東経138度43分38.52秒(国土地理院「電
子国土ポータルWebシステム」から検索)

・【白山岳の三角点】(標高3756.4m)緯度経度:北緯35度22分0.02
秒、東経138度43分46.43秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシ
ステム」から検索)

・【火口内の標高点】(標高3535m)緯度経度:北緯35度21分46.53
秒、東経138度43分53.27秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシ
ステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「富士山(甲府)」。5万分の1地形図「甲
府−富士山」

【参考】
・『新稿日本登山史』山崎安治著(白水社)1986年(昭和61)
・『古今和歌集序聞書三流抄(こきんわかしゅうききがきさんりゅ
うしょう)』:(『中世古今集註釈解題(二)』片桐洋一(赤尾照文堂)
1973年(昭和48)p233に所収
・『日本伝奇伝説大事典』編者・乾勝己ほか(角川書店)1990年(平
成2)
・「富士山記」都良香(「本朝文粹註釋・巻第12」に収録):「富士山
記」柿村重松註(注釈あり)(内外出版)1992年(平成4)所収
・「昔話と文学・竹取翁」柳田国男:ちくま文庫『柳田国男全集8』
1990年(平成2)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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