山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼438号 「上州・榛名山磨墨峠の烏天狗」

【概略】
榛名山には天狗が2狗もいることになっています。磨墨峠の奇岩ス
ルス岩の上にはカラス天狗の石像も建っています。石像うらに昭和
12年(1937)と読める高崎登山講の銘もあります。石像は、榛名山
の厳しい自然の中で60年もの間の風雪に耐えています。
・群馬県高崎市

▼438号 「上州・榛名山磨墨峠の烏天狗」

【本文】
群馬県の榛名山は掃部ヶ岳を最高峰に、榛名湖をとりまく外輪山の
総称です。この山は榛名神社を中心にした天狗山、相馬山など山岳
修験の山々です。

「前橋風土記」や「榛名山由来記」などの古書によれば、榛名山満
行坊(まんぎょうぼう)や相馬ヶ岳相満坊(そうまんぼう)と名前
の持っている大天狗が2狗(2人?)もいるとされ、その他にも「ひ
ともっこ山」にちなむ天狗伝承など数多く残っています。

ここ磨墨峠(スルス峠)は相馬山と松之沢峠の間に広がるススキの
原の中に、スルス岩と呼ばれる大岩があります。磨墨(スルス)とは、
籾(もみ)や粉をひく臼のことで、この岩の形からきているという。

岩の横を通る細道からわきに入ると洞穴があって、奧に修験道の祖
・役ノ行者とその従者である前鬼後鬼(ぜんきごき)がまつられて
います。

同じ道を戻り、梯子につかまって登ると岩の上に出られます。岩上
には石像があり、肩から羽が生えた山伏姿のカラス天狗が、太刀を
振りかざしています。

石像うらに昭和12年(1937)と読める高崎登山講の銘があります。
カラス天狗は長〜い風雪に耐えてきた面構えです。スケールを持ち
出し天地左右を計ります。

せまい岩の上で写真を撮るためおそるおそる歩きまわります。そん
なこととは関係なく、ファインダーの彼方に榛名湖が湖水がひかり、
榛名富士へつながる観光客のためのロープウェイの音楽がやかまし
く響いていました。

▼榛名山磨墨峠【データ】
【所在地】
・群馬県高崎市旧榛名町地区名(旧群馬郡榛名町)。JR高崎駅か
らバス・榛名湖畔・歩いて30分で磨墨峠。地形図に地名のみ記載。
付近に何も記載なし。

【位置】
・【磨墨峠】緯度経度:北緯36度28分19.62秒、東経138度53分24.97
秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「伊香保(長野)」

【山行】
・某年4月26日(土・快晴)榛名山磨墨峠探訪

【参考】
・「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平(名著出版)1990年(平成2)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・「日本歴史地名大系10・群馬」(平凡社)1987年(昭和62)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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