山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼399号 「群馬県・榛名山相馬岳の石仏」

・【概略】
榛名湖の東方にそびえる相馬山は、昔から不思議な出来事おこるた
め、かつては「総魔」とも書いたといいます。山頂の黒髪神社(水
の神さま暗?神(くらおかみ)がなまったもの)があり、相馬大神
の親しみのわく石像が大いばりしています。
・群馬県高崎市・渋川市・榛東村との境

▼399号 「群馬県・榛名山相馬岳の石仏」

・【本文】
榛名山の火口原湖である榛名湖は標高1084m。その東方にそびえる
相馬山は、一名黒髪山と呼ばれています。「誰袖の秋のわかれのく
しのはの黒かみ山そまなくしくるゝ」(「北国紀行」)と、戦国時代
の文明19年(1487)9月、上野の国長野陣所を訪れた京都常光院の
僧・尭恵がこう詠んでいます。

近世になると登るものもなくなったらしく、古書には「総魔嶽(魔
所なり、人登を不得)」とあるくらい怪異が多かったという。幕末
からは木曾の御嶽山の行者たちの御嶽教の修行地になっていきま
す。

相馬山上には、神社や石仏、大山祇(おおやまずみ)神などの石像
がならんでいます。なかでも大いばりしているのは石造りの権現立
像・相馬大神です。

これは慶応4年(1868)、中村(いまの渋川市)の講中が建立した
ものとか。明治14年(1881)、黒髪神社の奥宮が山頂に建てられま
した。翌年コレラが大流行し、その時神勅があったとされ登拝者が
押し寄せたこともあったという。

黒髪とは、雨をつかさどる神・暗?神(くらおかみ)がなまったも
ので、よく雷がおこる相馬山を神として信仰の対象したものだそう
です。

このあたりには源頼朝に従った千葉常胤の先祖千葉常政(将)にま
つわる伝説が多くありますが、相馬山も常政の一子相満丸が天狗と
すんだところといわれています。

▼【データ】
【山名】別称・黒髪山。

【所在地】
・群馬県高崎市旧榛名町地区名(旧群馬郡榛名町)・群馬県渋川市
伊香保町(旧北群馬郡伊香保町)・群馬県北群馬郡榛東村(しんと
うむら)との境。

・JR高崎線高崎駅からバス榛名湖畔・歩いて1時間30分で相馬
山。写真測量による標高点(1411m)と黒髪神社の奥宮がある。
地形図に山名と標高点の標高と神社記号(鳥居)の記載あり。

【位置】
・標高点:写真測量による標高点(1411m)。【緯度経度】北緯36度
28分28.13秒、東経138度54分2.83秒(国土地理院「電子国土ポータ
ルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「伊香保(長野)」(国土地理院「地図閲覧
サービス」から検索)。

【山行】
・某年4月26日(土・快晴)相馬山探訪

【参考】
・「角川日本地名大辞典10・群馬県」井上定幸ほか編(角川書店)
1988年(昭和63)
・「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平(名著出版)1990年(平成2)
・「神道集」安居院作:東洋文庫94「神道集」貴志正造訳(平凡社)
1994年(平成6)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和52)
・「天狗の研究」知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・「日本歴史地名大系10・群馬」(平凡社)1987年(昭和62)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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