山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼398号 「北ア・剱岳早月尾根馬場島の錫杖」

【概略】
「人間登る能はず人間登るべからず」といわれた神聖な剱岳。1907
年(明治40)、三角点測量のため剱岳の登った測量官柴崎芳太郎は、
山頂で錫杖の頭を見つけてショックをうけたという。すでに山伏た
ちが修行のため登っていたのです。その錫杖の頭のみやげ品が早月
尾根登山口馬場島で売っています。

▼398号  「北ア・剱岳早月尾根馬場島の錫杖」

【本文】
北アルプス剱岳を北西側から登るルートに早月尾根があります。こ
のルートは高低差約2200mもあるというしんどいコース。その取り
付きが富山県中新川郡上市町馬場島というところ。

剱岳北方の大窓・池ノ平山・小窓・池ノ谷から裏剱を流れる白萩川
と、剱岳南側・一服剱・剱御前・奥大日岳などから流れる立山川が
合流する場所にあります。剱岳は、昔は「人間登る能はず、人間登
るべからず」といわれた神聖不可登の山。

1907年(明治40年)、三角点測量のため剱岳に登った測量官柴崎芳
太郎は、自分たちが初登頂だと思っていたのに、山頂で錫杖(しゃ
くじょう・山伏などが持ち歩く杖)の頭を見つけてショックをうけ
たという。鑑定の結果、平安時代初期とわかりまたまたショック。

すでに山伏たちが修行のため登っていたのです。錫杖の頭は鋳銅で
できていて、長さ13.4センチ、心葉形の外輪に6個の金剛牙がつい
ていて、輪内の厥手形の上に、外輪と逆方向の心葉(こころば・平
安時代、冠につけた飾り物)形の内輪がついているいう。

内輪の中心に中央の宝瓶(ほうひん・取っ手がない急須)形の頂部
が接ぎ合わされ、輪の二つの頂点に柄がついている珠目(しゅもく)
がついた形だそうです。

その錫杖の頭のみやげ品が早月尾根登山口馬場島で売っています。
ここはかつては富山地方鉄道上市駅からバスがありましたが、いま
はなくなってしまいました。家族の森中央管理センターや、馬場島
荘があります。

▼馬場島【データ】
【所在地】
・富山県中新川郡上市町。富山地方鉄道上市駅からバス(いまは廃
線のためタクシー)馬場島下車。地形図に地名と馬場島荘、北西側
に家族の森中央管理センター、東側に標高点(760m)の記載あり。

【位置】
・馬場島:【緯度経度】北緯36度38分49.04秒、東経137度33分
16.11秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形「剱岳(高山)」(電子国土ポータルWebシス
テムから検索)

【山行】
某年7月27日(土・快晴)早月尾根登山口馬場島

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典16・富山県」坂井誠一ほか編(角川書店)
1979年(昭和54)
・「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平著(名著出版)1990年(平
成2)
・「日本歴史地名大系16・富山県の地名」(平凡社)1994年(平成
6)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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