山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼386号 「房総・高宕山観音堂の涸れ滝」

【概略】
雨を司る神・高?神(たかおかみがみ)を祭る高宕山山頂。雨乞い
の水として涸れたことがないといわれる観音堂のわきの小滝。さす
がにことしの雨不足には勝てなかったか涸れてしまっていました。
いつものオタマジャクシはどうしたのでしょう。
・千葉県富津市と君津市との境

▼386号 「房総・高宕山観音堂の涸れ滝」

【本文】
よく千葉県にも山があるんですか?と聞かれれます。千葉県といえ
ども全部平地ではありません。高くはありませんが結構奥深い山並
みがつづいています。

その中で360度の展望が得られる、房総半島のほぼ中央にある高宕
山(たかごやま)という山があります。九十九谷、東京湾、丹沢、
富士山も望めます。

狭い山頂の岩峰には小さな清滝(きよたき)神社の石祠とふたつの
鉄釜がさびて穴があいて置かれています。ここは昔から雨乞いの山
として有名なところ。

清滝神社は、雨をつかさどる神・高?(たかおかみ)神をまつりま
す。村人はこの神社に雨乞いを祈念し、山頂肩にある高宕観音堂わ
きからしたたり落ちる清水を入れ物に入れてお借りして、帰って村
の田んぼにまくと不思議に雨が降ったといいます。

その時、途中で休んだりすると、そこに雨が降ってしまうというの
で、この「水借り」には村の若い衆がリレー式に走って運んだそう
です。そして念願がかなうと水を2倍にして返したという。

したたり落ちている清水は涸れたことがなく、落下する水のたまっ
た小さな池は毎年オタマジャクシで真っ黒になります。

しかし枯れたことがないといわれる観音堂のわきの小滝も、さすが
にことし(1996年3月)の雨不足には勝てなかったか、訪れたとき
は石清水も涸れ、岩も乾いていました。

こんなこともめずらしい。同行の諸氏もうなっていました。まだオ
タマジャクシの時期ではありませんが、こんな時カエルたちはどう
するのでしょう。

▼高宕観音堂【データ】
【所在地】
・千葉県富津市と君津市との境。内房線上総湊駅の北東5キロ。J
R内房線木更津駅からバス宿原下車、歩いて1時間45分で高宕観音。
地形図上には山名と建物記号のみ記載。山頂は観音堂より南東方向
直線約480mにある。

【位置】
・【高宕観音】緯度経度:北緯35度12分1.63秒、東経139度59
分26.85秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検
索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「鬼泪山(横須賀)」。5万分の1地形図「横
須賀−富津」

【山行】
・某年3月10日(日・快晴)高宕山探訪

【参考】
・「角川日本地名大辞典12・千葉」(角川書店)1991年(平成3)
・「房総の山」千葉県山岳連盟(千秋社)1977年(昭和52)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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