山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼385号 「奥武蔵・黒山三滝」

【概略】
埼玉県奥武蔵の高山不動の参道にあたる黒山三滝。男滝、女滝、天
狗滝の三つの滝は古くは修験道場。日本観光百選にも選ばれた名勝。
男滝・女滝はその名から男女和合の象徴として神格化。もうひとつ
の天狗滝は、このような霊山には天狗がいるということから名がつ
いたという。
・埼玉県越生町

▼ 385号 「奥武蔵・黒山三滝」

【本文】
埼玉県奥武蔵のハイキングでおなじみ高山不動の参道にあたる黒山
三滝。越辺川(おっぺがわ)の源流にあたる三つの滝です。

2段になって落ちている二つの滝が男滝・女滝。もうひとつは天狗
滝です。男滝と女滝は落差が10mと5mでそれぞれお釜を持ってい
ます。

この二つの滝は、江戸時代の中期からその優美さを愛でられ、信仰
と行楽を兼ね、江戸庶民がたくさん訪れたそうです。男滝・女滝は
その名から男女和合の象徴として神格化、江戸吉原の信仰を集め、
その講中の道標もいまに残っているという。

男滝のわきには不動明王がまつられています。その他にもいくつか
の宗教施設や遺跡が散在しています。

もうひとつの天狗滝の方は、落差15mのチムニー状の滝。このよう
な霊山には天狗が住むといういい伝えがあることから天狗滝と呼ば
れているそうです。

ここ黒山は、室町時代の応永5年(1398)に、山本坊栄円という行
者が紀州の熊野をかたどって熊野神社を開き、関東に修験道を広め
るための拠点としたのだという。

そのためこのあたり一帯は昔は山伏たちの修行の場で、「関東の熊
野霊場」といわれていたそうです。近くの大平山には栄円のお墓と、
修験道の祖・役小角(えんのおづぬ)像がユニークな表情をして2
匹の鬼を従えています。

これは幕末に建てられた石像だという。(一時何者かによって行者
像と前鬼後鬼の像が何者かによって壊されましたがその後修復され
ました)。

この入口から三滝までは樹木に被われ、修験者たちは岩山をよじ登
る峰入りの修行や、滝に打たれてみそぎをする滝行などを行って修
行をしたといいます。

いまも本山修験宗となった京都・聖護院講中との交流があるそうで
す。日本観光百選にも選ばれた名勝で、時どき行者の姿を見かける
こともあるという。

▼黒山三滝【データ】
【所在地】
・埼玉県入間郡越生町。東武越生線・JR八高線越生駅からバス黒
山・歩いて20分で黒山三滝。地形図に地名のみ記載。標高なし。

【位置】
・【黒山三滝】緯度経度:北緯35度56分31.56秒、東経139度14分36.3
秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「正丸峠(東京)」と「越生(東京)」(2図
葉名と重なる)

【山行】
・某年11月13日(日・くもり)黒山三滝探訪

【参考】
・「郷土資料事典11・埼玉県」ふるさとの文化遺産(人文社)1997
年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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