山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼275号 「群馬県・妙義山の第四石門」

【概略】
赤城山、榛名山とともに上毛(群馬県)三山に数えられる妙義山。
第一〜第四までの石門、大砲岩、日暮岩などなど奇岩怪石がならび、
耶馬渓や寒霞渓とともに、日本三大奇勝のひとつになっている。第
四石門の広場で張ったテントから荒船山をねらう大砲岩がわざとら
しく望めた。
・群馬県下仁田町

▼275号 「群馬県・妙義山の第四石門」

【本文】
赤城山、榛名山とともに上毛(群馬県)三山に数えられる群馬県の
妙義山は、第一から第四までの石門や大砲岩、日暮岩などなど奇岩
怪石がならび、大分県の「耶馬渓」や香川県の「寒霞渓」とともに、
日本三大奇勝のひとつになっています。

妙義山は中木川を境にして東側を表妙義、西側を裏妙義といってい
ます。表妙義は、白雲山、金洞山、金鶏山などからなっています。

表妙義の白雲山中腹には、白い鉄板でつくった「大」の字が浮かん
でいて遠くからでも木々の中に浮かんで望めます。これは東麓にあ
る妙義神社の神仏習合時代の妙義大権現の「大」だとのこと。

妙義神社は日本武尊や菅原道真らをまつっています。伝説では、日
本武尊が白雲山に社を建て「波己曽(はこそ)神」とし、以前は「は
こその山」と呼んだそうな。

のち南北朝時代の名臣・花山院長親が出家、明魏法師となってこの
山にたどりつき亡くなったため、山の名を明魏(妙義)と改めたと
いう。

その西方金洞山南麓には中之岳神社があって、その周辺には「第一
石門」から「第四石門」などの岩場がならんでいます。また「カニ
の横ばい」、「大砲岩」、「轟岩」、「天狗の評定岩」などのその名も奇
妙な岩がもあります。

そんな景観に誘われて、古くから多くの文人墨客が訪れています。
江戸時代の儒者・貝原益軒も訪れたらしく、その紀行文『東路記』
には「山上に草木なし。他所にはなき程の珍しき山なり」と書いて
あります。

また『南総里見八犬伝』(滝沢馬琴)、『山吹日記』(奈佐勝皐)、『遊
金洞山歌』(安積艮斎)などにも紹介されています。

ここはまた、春の新緑とともに秋の紅葉が見事で、行楽客がたくさ
ん訪れ、奇岩怪石に映える紅葉は有名で関東でも指折りの名所です。

ある晩秋、燃えるような紅葉のなか、表妙義あずまや方面から下る
鉄の階段は手すりが冷たくなって素手では触るのがつらい。

第四石門の広場でテントを張りました。夜になると結構冷えてきま
す。アルコールと熱いスープをすすり体を温めます。ほろ酔い加減
になりテントから顔を出すと、石門の内側に大砲岩が見えます。

それは荒船山にでもねらいを定めているのでしょうか。荒船山のと
も岩からはどう見えるのでしょう。乗員はさぞかし慌てているでし
ょう。「面舵いっぱいーッ」。方向を変える大声が聞こえてくるよう
です。イットキ空想の世界に遊びました。

▼【データ】
【所在地】
・群馬県下仁田町。信越本線松井田駅の南西4キロ。JR信越本線
松井田駅からバス、妙義神社前下車、歩いて3時間10分で第四石
門。石門のそばに物置小屋がある。地形図に建物記号のみ記載。付
近に何も記載なし。

【位置】
・【第四石門】緯度経度:北緯36度17分12.98秒、東経138度44
分22.3秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「南軽井沢(長野)」

【山行】妙義山から岩船山・高津牧場
・某年11月23日(水・快晴)探訪

【参考】
・『妙義山』(歴史と信仰の山)(あさを社)1981年(昭和56)
・「角川日本地名大辞典10・群馬県」井上定幸ほか編(角川書店)1
988年(昭和63)

【とよだ 時】 山と田園風物漫画
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 (主に画文著作で活動)
【ゆ-もぁ-と】事務所
山のはがき画の会

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