山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼263号 「北ア水晶岳・水晶小屋の水不足」

【概略】
ことし(1994年)の夏は3000mの稜線も30度の暑さ。ここ北アルプ
スの最奥水晶小屋は天水が頼り。残雪も少なく、雨も少ない。水不
足の山小屋が続出しているという。麓から水を入れた容器を運ぶヘ
リコプターが忙しそうに飛びかっているのを三俣蓮華テント場から
望む。
・富山県富山市

▼263号 「北ア水晶岳・水晶小屋の水不足」

北アルプスのど真ん中を貫く黒部川。その源流にある水晶岳(標高
2978m)は、黒々とした色から黒岳の異名があり国土地理院発行の
2万5千分の1地形図にも記載されています。

この山は富山県の属しているのに、黒岳という名前は長野県側の呼
び名だそうです。この山から南東方面の富山県と岐阜県の境の黒部
五郎岳も信州(長野県)側で呼んだ山名らしい。

だいたいこのあたりは長野県境に近く、また登山道も信州側から入
りやすい山域です。

かつて信州の木こりが木材を伐採のため、烏帽子岳から野口五郎岳、
いまの水晶小屋(いずれも富山県と長野県境)のある赤岳の稜線づ
たいに国境を越えてよく侵入していたといいます。そんなことから
加賀藩では見張り役人を強化したとも聞きます。

かつて信州の木こり三吉が水晶岳・赤牛岳周辺で木を盗んでいる時
加賀藩の役人に逮捕された事件も起きているという。

そのため、木を伐採していた谷を三吉谷(東沢支谷)、盗みに入っ
たルートを三吉道、三吉が小屋がけをしていた烏帽子岳付近を三吉
小屋場と呼びました。

ある年の8月、長野県、富山県、岐阜県境の三俣蓮華岳を訪れまし
た。ことしの夏は3000mの稜線も30度の暑さです。ここ三俣山荘の
テント場から眺めても見るからに残雪が少ない。

水不足の小屋が続出しているという知らせがあちこちの山小屋の入
り口に張り出されています。

三俣山荘と同系列の水晶小屋は水場がなく天水が頼りです。さすが
に天水だけの貯水では足りなくなったのか、水を入れた容器を麓か
ら小屋へ運ぶヘリコプターが忙しそうに飛びかっていました。

▼【データ】
【山名・地名】
・【異名、由来】:水晶岳。黒岳。南峰(標高点)と北峰(三角点)
がある。

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第69番):日本二百名山、日本三百
名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)
・清水栄一選定「信州百名山」(含まれず)

【所在地】
・富山県富山市旧大山町各地区名(旧上新川郡大山町)。大糸線信
濃大町の南西24キロ。JR大糸線信濃大町駅からタクシー、高瀬
ダムから歩いて延べ11時間半で水晶岳南峰、さらに5分で北峰。
南峰には写真測量による標高点(2986m)があり、北峰には三等
三角点(2977.7m)がある。南峰(標高点)の方が北峰(三角点)
より高い。南峰から北91mに北峰がある。地形図に山名水晶岳(黒
岳)の文字の記載あり。

【位置】
・南峰の標高点:【緯度経度】北緯36度25分34.84秒、東経137
度36分9.93秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」か
ら検索)

・北峰の三角点:【緯度経度】北緯36度25分37.57秒、東経137
度36分8.9秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「薬師岳(高山)」。5万分の1地形図「高
山−槍ヶ岳」

【山行】北アルプス笠ヶ岳〜黒部源流縦走
・某年8月12日(金・快晴)探訪

【参考】
・「日本歴史地名大系16・富山県の地名」(平凡社)1994年(平成6)
・「富山県山名録」橋本廣ほか(桂書房)2001年(平成13)
・「黒部の昔話」(立山黒部貫光)発行年不明

【とよだ 時】 山と田園風物漫画
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 (主に画文著作で活動)
【ゆ-もぁ-と】事務所
山のはがき画の会

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