山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼185号「南ア・鳳凰三山地蔵岳のオベリスク」

【概略】
地蔵岳岩峰の下の賽の河原には地蔵の石仏がたくさんならぶ。子ど
もが欲しい人は、この地蔵を1体借りて家にまつると授かるといわ
れていう。また願いが通じるとお礼に2体を返す風習があり、一時
は数百体の石仏がならんだこともあったそうです。
・山梨県韮崎市、南アルプス市、武川村の境

▼185号「南ア・鳳凰三山地蔵岳のオベリスク」

南ア入口の鳳凰三山地蔵岳のオベリスクは、高さ18m、基部からは
50mもある岩峰で中央線の車窓からも望めます。かつては鳳凰山信
仰の奥ノ院として神聖視されたところ。

その昔、奈良法王が病気療養のため、山梨県早川町奈良田地区へ滞
在した時、ここに登り安産を祈って地蔵を安置したという伝説もあ
ります。

昭和9年に行われた山頂調査で、奈良時代または平安初期の開山だ
と推測されています。その時神仏習合信仰時代に、神社にかけて拝
んだとされる懸仏(かけぼとけ)などが発見されています。

また同じ時期、オベリスクのへこみにまつってある2体の地蔵も見
つかったといいます。

岩峰の下の「賽の河原」と呼ばれるところは礫地になっていて、子
授けにご利益があるという地蔵の石仏がたくさんならんでいます。

子どもが欲しい人は、ここのお地蔵さまを1体お借りして家にまつ
ると授かるといわれています。

また願いが通じるとお礼に2体を返す風習が江戸時代から続いてい
るそうです。一時は数百体の石仏がならんだこともあったそうです。

▼【データ】
【山名】・異名:地蔵ヶ岳・地蔵岳・地蔵仏、大鳥ヶ岳、おおとん
がり(大尖り)、ウェストンピーク。

【所在地】
・山梨県韮崎市と山梨県南アルプス市芦安(旧山梨県中巨摩郡芦安
村)、山梨県北巨摩郡武川村との境。中央本線韮崎駅の西13キロ。
JR中央本線韮崎駅からマイクロバス、青木鉱泉から歩いて6時間
30分で地蔵ヶ岳。写真測量による標高点(2764m)がある。山頂直
下に賽の河原がある。地形図に山名と標高点の標高のみ記載。オベ
リスク標高点より南方向90mに賽の河原がある。

【ご利益】
・【賽の河原の地蔵】:子授け

【位置】
・標高点:北緯35度42分43.28秒、東経138度17分55.37
秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「鳳凰山(甲府)」

【参考】
・「日本歴史地名大系19・山梨」(平凡社)1995年(平成7)
・「日本霊異記」中田祝夫校注訳・「日本古典文学全集・第6巻」(小
学館)1993年(平成5)
・「日本架空伝承人名事典」大隅和雄ほか(平凡社)1992年(平成
4)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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