山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼147号「東北・早池峰山頂のお宮の伝説」

【概略】
540種もの高山植物が群生することで有名な早池峰山。その山頂には、
早池峰神社奥宮があります。ふもとのあちこちに里宮があり、それぞれ多
少くいちがう開山伝説のある社殿が残っています。神さびた伝説とは関
係なく登山者たちは高山植物に夢中だ。
・岩手県遠野市と大迫町と川井町の境

▼147号「東北・早池峰山頂のお宮の伝説」

【本文】
540種もの高山植物が群生することで有名な岩手県の早池峰山(は
やちねさん・1914m・実質標高1917m)。岩手山に次いで県内第2の
高峰です。その山頂には、早池峰神社奥宮がまつられています。

ふもとのあちこちに里宮あり、それぞれ多少くいちがう開山伝説の
の社伝が残っています。

南麓の遠野市附馬牛(つきもうし)町の里宮早池峰神社社伝によれ
ば、平安時代初期806年(大同元)、来内村(いまの上郷村)の猟師
・藤蔵が早池峰山頂で夜中でも真昼のように輝く金色の神霊を感得
したという。その霊威に驚いてお堂をつくったのがこの神社の最初
だとしています。

また北西麓にある稗貫(ひえぬき)郡大迫(おおはさま)町側の里
宮に伝わる話では807年(大同2)、田中兵部という者が山中で体中
真っ白で、額に金星がある不思議な鹿を発見。

夢中であとを追ううちいつの間にか早池峰山頂に登っていたとい
う。そしてまばゆく金色に輝く権現の霊威(れいい)を見たといい
ます。

そこにはたまたま遠野の来内村の猟師・藤蔵も来ていて、神を感じ
た2人はそこにホコラを建てたとする伝説です。その後、本宮のと
なりに若宮のホコラが建てられ、いまでも2つの社がならんでいま
す。

祭っているのは、はじめ姫大神(ひめおおかみ)という神さまでし
たが、いまでは瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)ということに
なっているそうです。まつられる神さまも時代により代わるんです
ね。

【データ】
【山名】・早池峰山(はやちねさん)・早池の泉(つねに清水を八分
くらいに湛えていて、甘みがあり、不思議なことに雨が降っても水
があふれず、ひでりになっても涸れないという。ところが汚れた器
で汲んだり、不浄を加えればたちまち水は涸れてしまう。しかしお
経を唱えて祈ればすぐに湧いてくるという。その感応の早さから「早
池峰」の名前がある)

【所在地】
・岩手県花巻市大迫町(旧稗貫郡(ひえぬきぐん)大迫町(おおは
さままち)と岩手県下閉伊郡川井村との境。JR花巻駅からバス・
川原の坊から3時間20分で早池峰山。一等三角点(1913.61m)と
早池峰山神社奥宮がある(ご利益:災難除け・豊作祈願・作神)。
地形図に山名と三角点の標高と神社の鳥居記号と避難小屋の記載あ
り。

【位置】
・三角点:北緯39度33分30.08秒、東経141度29分20.45秒
成果等閲覧サービス」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「早池峰山(盛岡)」or「高桧山(盛岡)」(2
図葉名と重なる)

【参考】
・「山岳宗教史研究叢書7・東北霊山と修験道」月光善弘編 (名著
出版)1977年(昭和52)
・「山岳宗教史研究叢書16・修験道の伝承文化」五木重編 (名著出
版)1981年(昭和56)
・「定本附馬牛(つきもうし)村誌」岩手県遠野市
・「早池峰山神社社記」宮司山蔭幸三(早池峰山神社)1987年(昭
和62)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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