山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼142号「栃木県日光・金精峠の峠道」

【概略】
栃木県奥日光と群馬県片品村とを結ぶ金精峠道。峠の上には縁結び
や出産に御利益のある金精神社がまつられている。ここはかつては
日光山の修験道夏峰の道。1965年(昭和40)に峠下標高1850m付近
から長さ755mのトンネルが開通したもの。
・栃木県日光市と群馬県片品村との境

▼142号「栃木県日光・金精峠の峠道」

栃木県奥日光湯本から群馬県片品村とを結ぶ国道120号線の県境ト
ンネル上に金精(こんせい)峠があります。峠には赤い屋根の社が
建っていて、コンセイ様がご弊のわきにちん座し、そばに「金精神
社」と書かれた額が置かれています。

この神は「金精権現」ともいって、男女の縁結びや、出産などに霊
験あらたかとされています。金精の金(こん)は「金色」のように
輝く立派なものという意味という。精は精力絶倫の勢いをあらわし
ています。

つまり、勢いづいた堂々たるイチモツのこと。昔から続いてきた性
信仰の姿です。金精峠の名前はもちろんこの神さまに由来するもの。
この峠道は、かつて日光山の信徒のための修験道夏峰の道。かつて
は手へんに越の字を書いて「こむら峠」と呼んでいましたがなまっ
て「きむら」になり、さらに金精権現の信仰にちなみ「きまら峠」
になっていまの名前に転化したという。

また「人境をはなれたる山道なり。(中略)常に人の通行なし」と
「日光山志」(「日本歴史地名大系」平凡社)にあるほど人里離れた
ところだったらしい。

金精山の山腹にある高さ700mの垂直の岩場は、笈吊岩(おいづる
いわ・笈づり)といい、日光修験の補陀洛(ふだらく)夏峰の行場。
行者はあまりの厳しさに笈(おい・山伏が背負う箱)を置いて岩を
登り、登って終わってから箱を吊り上げたという。

温泉ヶ岳も夏峰の経路で山頂に石仏もまつられていたという。明治
の時代まで日光と上州方面を結ぶ重要な生活道路でしたが、1965
年(昭和40)に峠の下・標高1850m付近から長さ755mのトンネ
ルが開通、国道120号としていまは重要な産業道路になっています。
なお、この道路は山岳道路のため、冬季(12月〜4月)は積雪に
より閉鎖されるそうです。

▼【データ】
【所在地】
・栃木県日光市と群馬県利根郡片品村との境。JR日光線日光駅の
北西23キロ。JR・東武日光線日光駅からバス、金精峠。地形図
に峠名の記載あり。峠より西方60mに金精神社(鳥居の記号)があ
る。

【位置】
・金精峠:36度49分08.89秒、東経139度23分42.92秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「男体山(日光)」

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典9・栃木県」大野雅美ほか編(角川書店)1984
年(昭和59)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「旅と伝説」全193号(三元社)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・「日本歴史地名大系・栃木県」(平凡社)1988年(昭和63)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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