山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼095号 「奥日光・白根山のシラネアオイ」

【概略】
シラネアオイは日光の奥白根山が群生地。火口湖・弥陀ヶ池はちょ
うどいまが真っ盛りだった。しかしその後、鹿の食害や盗掘などか
ら一時は絶滅するのかといわれていたが地元有志が復旧作業に励ん
だお陰でいまはもとのようになりつつあると聞いている。
・栃木県日光市と群馬県片品村との境

▼095号 「奥日光・白根山のシラネアオイ」

毎年6月も中旬を過ぎるころ、新聞やテレビで風物詩として話題に
なるシラネアオイの花。日光の白根山(2578m)が群生地。白根と
は白峰のことで、雪が白くなる高い峰のこと。

♪富士の高嶺に降る雪も…の「ネ」なのであります。白根山の東側
に前白根山も控えており、白根山・奥白根山・白嶺山とも呼ばれて
います。

山頂からは男体山から日光連山、尾瀬燧ヶ岳、至仏山、谷川など上
越の山、さらに鈴ヶ岳、皇海山、武尊山などが一望できます。この
山は男体山の奥ノ院になっているそうです(日光山志)。

ここは日光修験の補陀洛夏峰の修行地で、山頂に「魔海・仏海」と
いう2湖があるとするのは火口湖である五色沼と弥陀ヶ池のことで
しょうか。

山頂には白根山神社の奥社があり、白峰権現をまつっています。権
現とは日本の神は仏や菩薩が人々を救うために権(かり・仮)に神
の姿になってあらわれているとすることなのだそうです。

これは奈良時代におこり平安時代以後盛んになった本地垂迹説(ほ
んぢすいじゃくせつ・神仏同体説)のことで、つまり白根神社の祭
神の大己貴命(おおなむちのみこと)は垂迹神、その本地仏は十一
面観音なのだという。

ある年の6月、一面真っ白なガスの中、白根権現のホコラをスケッ
チ。さい銭を上げて高山植物の宝庫として知られる、北部座禅山と
の間の火口湖・弥陀ヶ池に向かいました。

ちょうど群生するシラネアオイの花が真っ盛り。その花々の中に体
を埋めるようにしてカメラにおさまりました。1度やってみたかっ
た「花とオジサン」なのでした。

その後、鹿の食害や盗掘などからの一時は絶滅するのかといわれて
いましたが地元有志が懸命に復旧作業に励んだお陰でいまはもとの
ようになりつつあると聞いています。

▼【データ】
【山名・地名】・白根山・奥白根山・白嶺山とも。一般には奥白根
山。男体山の奥ノ院(日光山志)。補陀洛夏峰の修行地。山頂に「魔
海・仏海」という2湖があるとするのは火口湖である五色沼と弥陀
ヶ原のことか。白根山神社(祭神は大己貴命)をまつる。その本地
仏として十一面観音をまつっている。前白根山頂には前白根山神社。

【所在地】
・栃木県日光市と群馬県片品村との境。JR日光線日光駅の西北西
24キロ。JR駅から日光駅からバス、湯元から歩いて4時間で日
光白根山。標高点(2578m・標石はない)がある。地形図に標高
点の標高と鳥居マークの記載あり。

【位置】
・写真測量による標高点(2578m)。緯度経度:北緯36度47分55
秒、東経139度22分33.2秒(国土地理院「電子国土ポータルWeb
システム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「丸沼(日光)」or「男体山(日光)」(2図
葉名と重なる)(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典9・栃木県」大野雅美ほか編(角川書店)1984
年(昭和59)
・「日本歴史地名大系・栃木県」(平凡社)1988年(昭和63)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「山の神々イラスト紀行」とよた 時(東京新聞出版局)1997年
(平成9)

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山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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