山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼081号「北ア・剱岳三ノ窓のガイド」

♪剣見るなら赤谷尾根でヨ、大窓小窓にネ、三ノ窓ヨカネ、と歌われる
「剱岳の歌」。八ツ峰のピークににも人の影。池ノ谷の乗越から砂地のガ
リーを下り、三ノ窓のおり立つ。鼻がつかえる小窓の王の岩壁から2つの
影があらわれた。かなりなとお年女性とガイドだった。
・富山県立山町と上市町との境

▼081号「北ア・剱岳三ノ窓のガイド」

【本文】
山の歌に、♪剱見るなら赤谷尾根(あかたんおね)でヨ、大窓小窓
にネ、三ノ窓ヨカネ…というのがあります。北アルプス「剱岳の歌」
2番(ダンチョネ節替え歌 飯田忠純・詩)です。

大窓小窓などの窓とは稜線の鞍部のことだそうです。富山県剱岳の
場合、北から大窓、小窓に続くキレット状のところを三ノ窓(2650
m)というそうです。

ある年の9月、立山の室堂から入り、剱沢に1泊し、剱岳山頂の祠
で休憩。その後、池ノ平から仙人池方面へ向かいます。八ツ峰の各
ピークには岩遊び(ロッククライミング)をする人たちの姿が見え
ます。

池ノ谷(たん)の乗越(のっこし)から薄暗い、砂地のような滑り
落ちそうなガリーを下ります。一抱えもありそうな大石が砂の上を
同じ速度で滑っていきます。

やっと三ノ窓におり立つと、八ツ峰で岩登りをしている人たちのも
のでしょうかテントが一張り取り残されたようにありました。その
先は鼻がつかえるように小窓の王がそびえたっています。

と、小窓の王の岩壁の肩から2つの影があらわれました。ザイルで
確保されながら降りてきたのはなんと、かなりな「お歳」の女性で
す。もう1人はガイドらしい。

しばらくわがパーティ仲間と歓談し、さっき下りてきたガリーを登
っていきました。あとで聞いた話では有名なガイドさんだとか。冥
土のみやげ話に登りたくて雇ったのだろうとのパーティ仲間のうわ
さ。一日いくらとして宿泊代込みで、ン百万円はかかるだろうと、
みんなで余計な計算をしあいました。

それにしてもあの元気な「おばあさん」?、よほど山がお好きなん
ですねえ。いつまでもお達者でいてもらいたいものです。

▼【データ】
【地名】・大窓、小窓、三ノ窓と三つある鋭く切れ込んだ所(キレ
ット)

【所在地】
・富山県中新川郡立山町と富山県中新川郡上市町との境。富山地方
鉄道立山線立山駅の北東20キロ。富山地鉄立山駅からバス、室堂
から歩いて延べ9時間20分で三ノ窓。地形図に地名標高ともに記
載なし。「角川日本地名大辞典16・富山県」では標高2700m、「日
本山名事典」では標高2650m。三ノ窓より北方166mに小窓ノ王が
ある。

【位置】
・三ノ窓:北緯36度37分46.61秒、東経137度37分23.36秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「十字峡(高山)」or「剱岳(高山)」(2図
葉名と重なる)(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

【参考】
・「角川日本地名大辞典16・富山県」坂井誠一ほか編(角川書店)1
979年(昭和54)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・「山ことば辞典」岩科小一郎(百水社)1993年(平成5)
・「山の用語なんでも事典」(山と渓谷社)1984年(昭和59)
・「山の歌150」土橋茂子編著(山と渓谷社)1981年(昭和56)

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山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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