山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼060号「八ヶ岳・阿弥陀岳の石仏」

・【概略】
阿弥陀岳は赤岳と共に修験道の奥の院にあたる。立場川の旭小屋で
朝食。裏手から阿弥陀南陵を登る。岩場をいくつか過ぎると雪の詰
まったP3のガリー。勾配が急で足首が痛い。山頂には石仏・石碑
が雪の中から顔を出す。石仏は道標の代わりにもなっている。

▼060号「八ヶ岳・阿弥陀岳の石仏」

・【本文】
阿弥陀岳、権現岳、行者小屋などの名があるように、八ヶ岳は古く
から主峰・赤岳を中心とした山岳修行道場だったという。赤岳の西
にある阿弥陀岳は赤岳と共に修験道の奥の院にあたり、山頂には石
仏がたくさんあってとくに阿弥陀像とその本尊大日如来の石碑がよ
く目立ちます。

その西方にある御小屋山は、諏訪大社上社の神林で、7年ごとの寅
(とら)と申(さる)の年の御柱祭りにはここから神木を伐り出し
ます。

御柱祭りの時に歌われる木遣りの歌詞に「御小屋の山の樅の木は里
へ下りて神となる」とあり、また長持唄にも「八ヶ岳より曳き出す
大木、諏訪の社のいみ柱」というのもあります。

さて阿弥陀岳から南に延びる尾根南稜に立場山があります。初冬か
ら早春、牡鹿の角形の雪形が現れ、山麓の農民は雪のとけ具合で農
作業の時期を判断したという。

「タツバ」とは「タツマ」に同じで、猟師が獲物を待ち伏せる場所
のことをいう(「日本山岳ルーツ大辞典」)との説もあります。

3月上旬、立場川の旭小屋で朝食。小屋の裏手から阿弥陀南陵を登
りました。途中カモシカが朝飯?を食べているのに出会います。無
名峰でアイゼンをはき、岩場をいくつか過ぎるといよいよ雪の詰ま
ったP3のガリーです。

勾配が急で足首が痛い。……山頂には石仏・石碑が雪の中から顔を
出しています。北アルプス、南アルプス、富士山など豪快な展望が
ひろがります。石仏のうしろから急斜面を行者小屋へ下ります。吹
雪やガスの時も石仏は迷わないよう道標の代わりにもなっているの
です。

▼阿弥陀岳【データ】
【所在地】
・長野県茅野市と長野県諏訪郡原村との境。中央本線茅野駅の東19
キロ。JR中央本線茅野駅からバス、美濃戸から歩いて5時間20
分で阿弥陀岳。写真測量による標高点(2805m)。地形図に山名と
標高点の標高の記載あり。

【位置】
・標高点:北緯35度58分20.89秒、東経138度21分31.41秒

【地図】
・旧2万5千分の1地形図「八ヶ岳西部(甲府)」

【参考】
・「角川日本地名大辞典20・長野県」(角川書店)1991年(平成3)
・『信州山岳百科・3』(信濃毎日新聞社)1983年(昭和58)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)

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山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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