山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼046号「房総・元清澄山の地蔵峠」

【略文】
千葉県君津市にある地蔵峠は、元清澄山・三石山・郷台畑方面への
三叉路になっています。ここはもともと名無しの峠だったという。
いつのころか、某氏が母親のふるさとの地蔵峠に似ているというの
で、なんの気なしに書いたものという。
それがいつの間にか立派な道標まで出来てしまったと聞いていま
す。そのうちお地蔵さんでも建つかも知れませんね。

▼046号「房総・元清澄山の地蔵峠」

【本文】
大きな3つの岩が年々育つという千葉県君津市の三石観音。小規
模なお寺ながら、開運と海運、縁結びがご利益で、昔から人々の
信仰を集め、参拝客が多い。観光バスが並ぶほどの人気がありま
す。

その駐車場わきから山道に入り、元清澄山方面へ小一時間歩くと
地蔵峠と呼ばれる所があります。房総には峠と名のつくところは
非常に少なく、めずらしいといいます。

ここは群馬県出身の母親を持つ某氏が、山好きの母親とよく一緒
に歩いた榛名山の「地蔵峠」に似ているというので、なんの気な
しにあり合わせの板きれに走り書き。

それが、1973年(昭和48)の第28回若潮国体の山岳競技のコース
のルート図に記載され道標まで建ち、その後に発行された案内書
に紹介され、いつの間にか地名として通用するようになったと聞
きます。

1月、ことしは特別雪が多く、房総の山でも雪山気分が味わえま
す。さっそく有名な清澄寺の奥の元清澄山あたりでテントでも張
ってみようと出かけました。

元清澄山と三石山、そして郷台畑地区への分岐の三叉路がこの地
蔵峠。ちょっとした平地になっていて、実際にお地蔵さまがあっ
ても不思議ではありません。

道路わきの大きな標識が建っている下を雪をはらってならし、石
を積んで台を作り賽銭をあげます。あとから来た人が次々にまね
て賽銭が上がれば……。

そのうち本当にお地蔵さんが建つかも知れません。これほど山好
きの人を楽しませてくれる地蔵峠の謎。謎はいつまでも謎でいて
欲しいものです。

▼【データ】
【所在地】
・千葉県君津市。JR久留里線上総亀山駅から歩いて1時間40分
で三石観音、さらに50分で地蔵峠。地形図に何も記載なし。

【位置】
・地蔵峠:北緯35度11分39.36秒、東経140度06分0.95秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「坂畑(大多喜)」

【参考】
・『角川日本地名大辞典12・千葉』川村優ほか編(角川書店)1984
年(昭和59)

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山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅通信【ひとり画展】
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