山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼034号「奥武蔵・伊豆ヶ岳子ノ権現」

【略文】
伊豆の山が見えるとも、ユズの木が生えていたともいう伊豆ヶ岳。
ここから子の権現へのコース。2月の日曜日。昼食に絶好な日だま
り。あっ、コンロのボンベを忘れてきた。お昼のラーメンがつくれ
ない。小学校の娘のうらめしそうな顔。数年経ったいまでも責めら
れている。
・埼玉県飯能市

▼034号「奥武蔵・伊豆ヶ岳子ノ権現」

【本文】
クサリと360度の眺望をほこっていた埼玉県奥武蔵の伊豆ヶ岳(851
m)。その名は伊豆の山々も見えるからだとも、昔ここにユズの木
が生えており、ゆずヶ岳が転じたのだともいわれています。ホント?
伊豆の山見えたっけ?。

ここから2時間半のところにある名刹子の権現は、足腰の守り神で
火難よけの神。重さ2000キロの大鉄ワラジが太陽に光ってまぶしい。

2月、快晴の日曜日。頂上からは削られた武甲山の傷あとが痛々し
く眺められます。途中、猟銃の音がします。しばらく歩いたところ
にあった日だまりは昼食に絶好地です。

あっ、コンロのボンベを忘れてきていたのでした。お昼のラーメン
がつくれない。小学校の娘のうらめしそうな顔……。随分と長い間
攻められました。いまとなっては懐かしい家族サービスの思い出で
す。

【追】・年月の経過は山の事情もいろいろと変化が急で、それから
十数年経たある日、久しぶりに伊豆ヶ岳へ行って驚きました。男坂
コースであるクサリ場は見るも無惨に崩落したまま。

進入禁止になっていて、すでに木や草が生えだしています。仕方な
く女坂コースを歩きます。急な坂を上りきると茶屋あとの広い台地。
そのすぐ上が山頂です。岩の上での大休止もいまは人の数も少なく
寒々していました。

この男坂コースもいまは復旧し、また岩場を登る人たちの歓声が聞
かれようになったようですね。

▼【データ】
【所在地】
・埼玉県飯能市と秩父郡横瀬町との境。西武秩父線正丸駅から1時
間30分伊豆ヶ岳。三等三角点(850.9m)がある。地形図に山名と
と三角点の標高の記載あり。

【位置】
・三角点:北緯35度55分36.69秒、東経139度9分38.3秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「正丸峠(東京)」

【参考】
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「ものがたり奥武蔵」神山弘ほか(金曜堂出版部)1984年(昭和5
9)

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山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅通信【ひとり画展】
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