山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼005号「房総・三石山観音奥ノ院」

【説明略文】
三石山の3つの大岩は毎年大きくなるという。奥ノ院への通路は
体を横にしてやっと通る。昔は傘をさしたまま通れたと古老から
聞いたことがある。奥ノ院には祠があり、そのまわりは縁結びの
願掛けのため、ハンカチやタオル、ネクタイなど、結べるものな
ら何でもビッシリ結んである。
・千葉県君津市。

▼005号「房総・三石山観音奥ノ院」

【本文】
房総半島のほぼ中央、千葉県君津市亀山湖の近くにある三石山(み
ついしやま)。標高は282mと低いですが360度の展望で東京湾をは
さんで箱根、丹沢の山々や富士山まで手にとるように眺められま
す。狭い岩峰は突起になっていてその上に立つと、まるで空中に
突き上げられた感じです。

ここは直下の三石観音堂の奥の院になっていて岩峰の上には祠が
あります。そのまわりは縁結びの願掛けのため、ハンカチやタオ
ル、ネクタイなど、結べるものなら何でもビッシリ結んでありま
す。三石観音のお堂は名前のとおり、3つならんだ大岩に食い込
むように建っています。

岩には貝の化石がついていて、大昔は海の底だったことを物語っ
ています。この3つの岩のちなみ三石山の名があります。観音堂
には十一面観音がまつられ、ご利益は海運、縁結びだといい、昔
から近郊の人たちの信仰を集めてきました。

この大岩が毎年育つというのです。奥の院に行くにはこの大岩の
狭い間を体を横にしてくぐり抜けます。この割れめは、かつては
傘をさしたまま通れたと古老から聞いたことがあります。そうい
えば以前はそれ程でもなかった窮屈さが、最近は通り抜けるのに
骨が折れます。

このままではあと何年通れるか心配です。足元が不安定な奥ノ院
の前で熱心に願いごとをしているおばあさんがいます。娘がまだ
未婚とのこと。それが心配で観音さまのお力でぜひ良縁をと、朝
一番の電車に乗ってお願いに来たと話してくれました。

7,8年前、ここを訪れたハイカーが行方不明になり大騒ぎにな
ったことがありました。その後どうなったのか、発見されたとい
う話は聞いていません。
・千葉県君津市。

▼三石山【データ】
【所在地】
・千葉県君津市。久留里線上総亀山駅の南2キロ。JR内房緑木
更津駅乗り換え久留里線終点の上総亀山駅下車、徒歩1時間40分
で三石山。標高点(282m)がある。地形図に山名と標高点とお寺
のマークの記載あり。

【位置】
・標高点:北緯35度12分33.81秒、東経140度05分20.77秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「坂畑(大多喜)」

【参考文献】
・『角川日本地名大辞典12・千葉』川村優ほか編(角川書店)1984
年(昭和59)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『房総山岳志』内田栄一(論書房出版)2005年(平成17)
・『房総志料続篇』(巻之九):(『房総叢書6』房総叢書刊行会編(房
総叢書刊行会発行)1941年(昭和16)所収
・『房総の山』千葉県山岳連盟(千秋社)1977年(昭和52)

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山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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山旅【ひとり画展】
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