【全国の山・天狗のはなし】
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▼23:茨城県の山
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▼03:加波山岩切大神 【略文】 |
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▼03:加波山岩切大神 【本文】 茨城県にある加波山(709m)は、筑波山・足尾山と合わせて「常 陸三山」と呼ばれています。また明治の加波山事件とともに天狗の 山としても有名です。 江戸時代の国学者平田篤胤も「加波山には四十八天狗」がいると『仙 境異聞』という本に書いています。江戸後期の話です。下谷の長屋 から天狗にさらわれ、茨城県岩間山でしばらく天狗と一緒に生活し た寅吉という不思議な少年がいました。 伝え聞いた平田篤胤は毎日のように寅吉のところに通い、話を聞き 本にまとめました。それによると「岩間山には十三天狗、筑波山に 三十六天狗、加波山に四十八天狗」が住んでいるとあります。その 中でも名前のある大物は岩切大神天狗と天中坊天狗だという。 2003年(平成15)の3月、うっすら雪の残る加波山に訪れました。 登山口の桜坊には両天狗の像が建っています。天中坊は一本歯の下 駄をはいた普通の姿。岩切大神は羽をつけ、鼻があるのに烏天狗の ように嘴がとがり、狐に乗って烏天狗をはべらせています。 この天狗は、加波山の後ろ山・燕山との谷間に建つ祠に祭られてい ると関係書にあります。しかし岩切大神を見てみると不動さまのよ うに火炎を背負っており、飯縄系とは少し違うようです。 また燕岳を訪れて、あちこち歩きながら岩切大神の祠を探しました がどうしても見当たりません。社務所で聞いても素っ気ない返事。 あげくは天狗祠のある岩屋に、いまも行者が籠もっているかも知れ ないなどと、話をはぐらかして詳しくは教えたがりません。 下山口から振り返れば、山頂に建つ大きなアンテナ、そこへつづく 林道、そして採石場が無惨です。すでに山中を歩いていても天狗の 「テの字」の気配も感じません。 とても岩屋に行者が籠もっているような環境ではありません。古く さい天狗話などもう過去のものか。しかし登山口桜坊の立像や絵符 と、今日ところの収穫はまずまず満足でした。 ▼【データ】 【所在地】 ・茨城県桜川市真壁町(旧真壁郡真壁町)と茨城県石岡市旧八郷町 各地区名(旧新治郡八郷町)との境。水戸線羽黒駅の南6キロ。加 波山。三等三角点(標高709.0m)がある。地形図に山名と三角点 の標高と加波山神社の記載あり。三角点の北方287mに神社鳥居記 号がある。 【位置】 ・三角点:北緯36度17分55.75秒、東経140度08分37.15秒 【地図】 ・2万5千分の1地形図「加波山(水戸)」 【参考】 ・「角川日本地名大辞典8・茨城県」杉山博ほか編(角川書店)198 3年(昭和58) ・「ご利益小事典」現代神仏研究会(燃焼社) ・「産業の神々」林正巳(東京書籍)1981年(昭和56) ・「祖神・守護神」川口謙二(東京美術)1979年(昭和54) ・パンフ(山岳ファイル) ・「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平著(名著出版)1990年(平成2) ・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17) ・「図聚天狗列伝・東日本編」知切光歳(三樹書房)1977年(昭和5 2) |
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【とよだ 時】 山と田園風物漫画
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(主に画文著作で活動)
【ゆ-もぁ-と】制作処
山のはがき画の会