【全国の山・天狗のはなし】  

▼01:天狗の遺物

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▼天狗の遺物

【概略説明文】
各地の山や神社、仏閣には、「天狗」の像や文字が目につきます。
天狗のどくろは、茨城県加波山神社にありますし、鹿児島県霧島山
ろくには、「天狗兵法虎の巻」があるそうです。また、静岡県伊東
の仏現寺というお寺には「天狗の詫び状文」があるといいます。天
狗の爪も琵琶湖竹生島(ちくぶしま)宝厳寺(ほうごんじ)に陳列
されているそうです。
【本文】

いまどき天狗の話なんて…。爺サン、モウロクしているんじゃない
の?と、いわれそうです。しかし、各地の山や神社、仏閣にさえ、
「天狗」の像や、文字が目につきます。


天狗で有名な、山はザット数えても、富士山からはじまり、高尾山、
丹沢大山、箱根大雄山など、数多く、思い浮かべられます。かつて、
明治政府が神仏分離令を発布しました。その時、「廃仏棄釈」の嵐
が全国に吹き荒れ、仏像や、お堂など壊しまくりました。まるでど
こかの「文化大革命」のようなものだったそうです。


山梨県石割山のふもとの忍野地区に内野天狗社という神社がありま
す。第2次世界大戦中、ここの天狗のお札をお守りにすると、敵の
弾丸が当たらないといわれ、そのご利益を願って関東一円から、お
参りに来たという神社でもあります。


すると当局が、この神社が神仏習合や、仏教系のためか、「ご神体
が天狗や摩利支天とは好ましからん」と、神道系のタケミカヅチノ
ミコトという、神さまに変えてしまったということです。この神は
猛々しさが身上の、戦いの神です。


このように、お上が都合のいいご神体に変えてしまっても、村人は
いまだに天狗社、天狗社といってお祭りしています。このように、
民衆の心の中には、修験道の神である「天狗」は、生き残りつづけ
ています。左上にある図のような天狗のミイラや、右上の天狗の爪、
はては下の図のような、天狗の詫び状まで残っているのは、人々に
こよなく愛されてきた証拠ではないでしょうか。


天狗のどくろは、茨城県加波山神社にあるというし、鹿児島県霧島
山ろくには、「天狗兵法虎の巻」があるそうです。また、静岡県伊
東の仏現寺というお寺には「天狗の詫び状文」を所蔵するといいま
す。天狗の爪も琵琶湖竹生島(ちくぶしま)宝厳寺(ほうごんじ)
に陳列されているそうです。


正直なところ天狗とは、修験道が盛んになり、行者たちが修行して、
呪術が向上するようになると、それに着いていけなく、落ちこぼれ
る行者が出てきます。その行者が山からふもとへ降りて行くにつれ、
村々で盗みや、かどわかしなど、悪さをするようになります。

落ちこぼれとはいっても、少しは修行をした身です。身のこなしや、
素早い動きなどは、村人とは競争になりません。そこで自分たちが
行った悪さをみんな、天狗のせいにしてしまったのではないかと考
えています。山にすむ妖怪にはいろいろいますが、私の興味を持っ
ているのは、鬼や天狗、仙人などであります。桃太郎に退治される
鬼も改心して、修行を積めば天狗になれます。

しかし天狗界は魔界です。この世に怨念を残し、怨霊としての天狗
になった、やんごとなきお方も数多くいるようです。あとで出てき
ますが、『太平記』では、後醍醐天皇を始めとして、非業の死を遂
げた南朝方の要人が、北朝方の武士達に、取りついて観応の擾乱(か
んのうのじょうらん)という、内乱を起こしています。その天狗が、
さらに修行を積んで仙人といわれる人もいます。各地の山々でよく
耳にする、役ノ行者もそのひとりです。



▼【参考文献】
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50):
・『図聚天狗列伝・東日本』知切光歳著(三樹書房)1977年(昭
和52)
・『図聚天狗列伝・西日本』知切光歳著(三樹書房)1977年(昭
和52)
・「化け物の文化誌」(国立科学博物館)2006年(平成18)

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