『新・丹沢山ものがたり』CD本(加筆版)
第9章「焼山・姫次・袖平山」

……………………

…………………………………

▼05:神ノ川のバアソブ

【本文】
 山中を歩いているとバアソブの花も見かけることがあります。
2センチ位の紫色をした丸っこく釣り鐘のような花が垂れ下がっ
て咲き、内側に濃い紫色の斑点があります。

 バアソブとは変わった名前ですが、漢字で書くと婆蕎。バアは
婆の意味。ソブはソバカスの意味で長野県木曽地方の方言なのだ
そうです。花冠の斑点をソバカスに見立てたとのこと。茎はつる
性でほかのものに巻きついています。

 その茎を切ると白い乳液が出てきます。葉は4枚がくっついて
付き輪生しているように見えます。地下には短く大きな球形の根
茎があり臭気を出すという。婆があれば爺があるはずです。


 やはり同じ属に大型のジイソブというのがあってこれはツルニ
ンジンのことなのだそうです。「薬用のチョウセンニンジンの代用
とするが、その効能はない」と植物図鑑にありました。

 もうかなり前の夏、神奈川県津久井町西丹沢の神ノ川支流で野
宿をしたときのこと。橋の横から風巻ノ頭へ向かう急坂で見つけ
た見たこともない花。

 しばらく見つめていると、同行の山仲間遊佐好子さんがバアソ
ブと教えてくれました。その時がこの花とのはじめての出会いで
す。
・神奈川県相模原市(旧津久井郡津久井町)。


▼神ノ川東海道自然歩道交差ピーク731地点【データ】
【所在地】
・神奈川県津久井町。JR中央線藤野駅から町営バスを乗り継ぎ東野下
車歩いて5時間あまりで神ノ川(東海道自然歩道交差ピーク731地点)。
写真測量による標高点(731m)がある。
【位置】
・標高点:北緯35度30分19.67秒、東経139度06分3.35秒
【地図】
・2万5千分の1地形図:「大室山(東京)」or「中川(東京)」(2図葉名と重
なる)。

▼【参考】
・「植物の世界・1」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・『日本大百科全書18』(小学館)1988年(昭和63)
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
・『原色牧野植物大図鑑』(北隆館)
・「世界の植物・1』(朝日新聞社)1975年(昭和50)

▼05:神ノ川のバアソブ(終わり)

…………………………………

 

目次へ戻る
………………………………………………………………………………………………………