【野の本・山の本】秋編

【まえがき】

 秋、野山で遊びます。天はあくまでも高く、すじ雲がたなびいて
います。いつの間にかツバメたちが姿を消し、代わりにガンが「く
の字」形にならんでやって釆ます。

 木々が紅葉で染まり、あの山、この山、みんな競い合って人間の
目を楽しませてくれています。木の葉が赤や黄に染まるのは、秋に
なり気温が下がり、日光が弱くなると、葉の付け根に壁ができ、葉
のはたらきがにぶくなり、養分が茎の方に流れなくなって、葉が赤
や黄に染まるのだそうです。

 秋は、果物の季節です。山ではヤマブドウが黒紫色に熟していま
す。ガマズミが赤くなっています。アキグミが、クリが、カキが、
それぞれ野鳥やリスなどに食べられるのを待っています。

 例によって、ナゼナゼ病。なぜ、秋はアキというのか。秋は収獲
の季節。収穫がア(飽)キ満チルのだそうです。稲が「あからむ」
(熟)ことからというのもあります。また、草木の葉がアカ(紅)
クなるので、アカク、アカクがいつしかアキになったとか。またま
た、秋の空が高くなり、アキラカ(清明)であるというのでアキと
いうのだと諸説フンプンなのであります。

 さて、秋という字。意味を示す「禾」と、音を示す「火」(力→
シュウ・取り入れ)が合わさってできています。禾は木の上にノ。
ノは穂を表し禾は稲などの穀物のこと。だから「のぎへん」なので
す。転じて作物が成熟する季節「アキ」のことです。

 天文学上では、秋分点(太陽の黄道が1870度)から冬至点(太
陽の黄道が270度)までを秋といい、気象学上では9月、10月、11
月をいうのだそうです。

 難しいことはともかく、天高く、実りの、食欲の、ヤキイモの秋
でいいのであります。
                             とよた 時

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(まえがき)終わり