春 編 5月

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●目次

第1章 ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ
 ・(1)ネギボウズ ・(2)クロ−パー ・(3)田植え
 ・(4)麦(ガム) ・(5)ナズナ(遊び) ・(6)アカザ
 ・(7)アマドコロ(花) ・(8)エビネ(花)

第2章 ここにもあるよと いばる げんこつワラビ
 ・(1)ワラビ ・(2)潮干狩り ・(3)潮の満ち干
 ・(4)スズメノテッポウ(遊び) ・(5)エンレイソウ(花)
 ・(6)オドリコソウ

第3章 トビを追う カラスの仲間徐徐に増え
 ・(1)トビ ・(2)イカリリウ ・(3)ハハコグサ
 ・(4)ソラマメ ・(5)クサスギカズラ (6)クサノオウ
 ・(7)コウゾ

第4章 垣根越し よそのタケノコの かず数え
 ・(1)タケノコ ・(2)チガヤ ・(3)ゼンマイ
 ・(4)アシナガバチ ・(5)カキの葉 ・(6)ザゼンソウ
 ・(7)シロヤシオツツジ ・(8)スズラン

第5章 霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ
 ・(1)クマザサの花 ・(2)タラの芽 ・(3)イワタバコ
 ・(4)ツツジ ・(5)シイタケ栽培 ・(6)コジュケイ
 ・(7)タイサンボク ・(8)チチブイワザクラ ・(9)ツルグミ

第6章 あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵
 ・(1)カエルの卵 ・(2)ウツギ ・(3)ショウブ
 ・(4)ドジョウ ・(5)キツネノボタン ・(6)スギナ
 ・(7)ホトケノザ ・(8)ヒメオドリコソウ
 ・(9)ノビル ・(10)ナワシログミ

第7章 子ツバメの 数気になって 背のびする
 ・(1)ツバメ ・(2)カワセミ ・(3)コイワザクラ
 ・(4)ハシリドコロ ・(5)ミツバ ・(6)アシ(ヨシ)
 ・(7)ベニウツギ ・(8)ミズナラ ・(9)ミズバショウ

第8章 一筆啓上 犬に吠えられて候
 ・(1)ホオジロ ・(2)ノカンゾウ ・(3)カズノコグサ
 ・(4)ウラシマソウ ・(5)マムシグサ  ・(6)ヤマツツジ
 ・(7)ライラック ・(8)レンゲツツジ

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第1章 ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ

春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(1)ネギボウズ

 こいのぼりの尾が、ネギボウズの頭をなでるようにおよいでいま
す。そのたびに小坊主たちが頭を振っています。

 初夏に、葉の間からまるい茎を出して、先端に大きな玉ができ、
たくさんの白緑色の花が集まって咲きます。ネギボウズとはよくい
ったものです。橋の欄干によくある擬宝珠にも似ているので「葱の
擬宝」とも呼ばれます。

泊まることにしてふるさとの葱坊主 山頭火
帰郷先の畑にならぶネギボウズはまた格別な心境にしてくれます。

 ネギは漢字で葱。昔はネギをキ(葱)とよんでいました。江戸時
代、貝原益軒は、その名前の由来について「きとは、きたないの「き」
なり。そのにおいくさくきたなし」と書き、余り評判がよくありま
せん。

 別の人の本には、ネギは臭気があるので気。気は葱(岐)に通じ、
根を食べるので根岐(葱)と呼ぶと記載されています。またネギを
ヒトモジともいうのは古名の「き」が1つの文字だからだそうです。

 ネギには胃腸をととのえ、寄生虫駆除などの薬効もあるといい
ます。「…そのにおいくさくきたなし……」などといわず、大いに
食べたいものです。フランスでは、アスパラガスの代用として、ネ
ギにマヨネーズをかけて食べることもあるそうですヨ。

 ネギの原産はシベリア、アルタイ地方だとされていますが、中国
西部に原産したものとする説もあります。

 ネギでもネギボウズのできないネギに「ボウズシラズ」という品
種があります。この品種はふつうのネギがボウズをだす5〜6月に
関東市場を独占しています。

 これは昔からあった不抽苔の小形ネギを改良したもの。いまは千
葉県松戸市付近に多く栽培されています。種子ができないため、株
分けで増殖していますが、この不抽苔性を保ちながら種子で増やす
方法はないかと研究されています。

 またヤグラネギという品種は、ネギボウズのかわりにいくつかの
小さな玉がつき、それがのびてまたその上に小球ができます。こう
して二階、三階とになるので「櫓葱(やぐらねぎ)とか「三階葱」、
「楼葱」の名もあります。このネギは、この小球を取って植えると
根づいて繁殖します。冬に休眠する性質があります。

 また、タマネギにもネギボウズのようなものができますが、これ
にもヤグラタマネギという変わった品種があります。ヤグラネギと
同じように花茎上に小さな玉がつき、この玉をピクルスなどに利用
します。

 これによく似たセイタカヤグラネギという品種も花茎上に小玉が
つき、同じように利用されます。ネギとタマネギの種間雑種だとさ
れています。
・ユリ科ネギ属の多年生草本
(051)

 

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春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(2)クロ−バー(シロツメクサ)

 野原にクローバー(シロツメクサ)が白い花を咲かせています。
原産と発しまするはヨーロッパ。オランダで最初に牧草化され、イ
ギリスで採取栽培法が行われたのが1754年と申します。

 適応性が強く、いまでは世界中に仲間を増やし、スイスでは標高
2000mの高地にまで住みついているそうです。

 日本には16世紀後半、オランダ人により長崎港にもたらされまし
た。ギヤマンでできた医療器具がこわれないよう、クローバの枯草
で包装、箱詰めになっていたのです。それについていた種子をまい
たのが日本でのクローバーの最初とのこと。箱に詰めてあったので
オランダ詰め草と呼ばれました。

 そのムカシ、ある戦場で騎士が傷ついて倒れました。気がついて
みると、美しい乙女が傷の手当てをし、やさしく介抱しています。

 騎士は感激し、なにかお礼をと思っても、ここは戦場。なにもあ
げるものがない。そこでちょうど心臓の真下にあった草をとって差
し出しました。それがなんと四ツ葉のクローバだった!という伝説
もあります。

 クローバーは、夏、葉のつけねから花柄を出し、多数の白い蝶形
の小花をまるくつけます。クローバの属名トリフォリウムは三つ葉
という意味だとか。クローバの葉はふつう三つ葉。納得です。

 433年、アイルランドの教祖セント・パトリックという人が、復
活祭の日、国王など居ならぶ前でクローバの葉を使って説教してい
ました。三つ葉を手に、信仰・希望・愛の「三位一体」を説いてい
ましたが、なかに四つ葉の葉が混じっていました。

 教祖はとまどいましたが、とっさに幸運をつけ加え「四位一体」
にしたということです。それからかどうかは知りませんが、幸運を
つかむために、クローバの四つ葉を見つけます。
(052)

 

 四つ葉になるのは奇形のせいだそうで、1、2枚のものから、な
かには10枚もあるものもあり、これは遺伝もするそうです。

 クローバの花を使って草花遊びをします。花のかんむりは、花柄
のついた花を順々に巻きつかせ冠をつくります。2番目からは葉に
しても面白いです。

 また花柄つきの花を用意し、花柄を花の首もとに巻きつけると指
輪ができます。3枚のうちの真ん中の葉に、爪で目と口の形の穴を
あけると両わきの葉が手に見えて、葉っぱの人形ができます。
・マメ科シャジクソウ属の多年草
(053)

 

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春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(3)田植え

 広ーい田んぼのあちらこちらで、機械で田植えをしています。今
でこそ、田植機が活躍していますが、昔はみんな人手。私もよく手
伝わされました。

 編み笠が一列に並び、にぎやかでした。朝早くから暗くなるまで、
弁当持ちで、朝十時やおやつの時間にもご飯を食べたものでした。

 大昔の人にとって、命を保たせてくれる作物、とりわけ、稲はも
う神そのものでした。栽培技術のない時代、田の神を祭り、ひたす
ら豊作を祈ります。

 稲を「さなえ」と言います。さなえの「さ」は神のことです。苗
を植える娘さんを「さおとめ」、神の乙女です。 

 農繁期、田の神が降りてきて、稲作を守ります。それを「さおり」
と言い、秋、収穫が終わり、天に昇るのを「さのぼり」と言ってい
ました。
(054)

 

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春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(4)麦のガム

 畑の麦がそろそろ、実り始めました。黄色に熟した小麦の穂を数
個とります。両手でもみほぐし、とがった毛のような「のぎ」や
殻をフーッと吹き飛ばします。

 何度も繰り返し、粒だけ残ったら、口の中へほおばり、かみます。
出てくる白い液は、だ液といっしょにはき出します。これをまた繰
り返します。

 すると、だんだん口の中に、弾力のあるかたまりができます。「麦
のガム」です。手で持って伸ばすと、ガムのように伸び、ねばり気
もあります。これは、でん粉をとったグルテンという「めん」の原
料となるものです。

 また、麦のやわらかい茎の片方を舌などでつぶし、吹くと「麦笛」
になります。ただし、作物なので、むやみにとると、農家の人の迷
惑になるので、気をつけましょう。
(055)

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春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(5)ナズナ

 誰でも知っているペンペングサが、道端に咲いています。上にむ
かってたくさんなっている三角の果実が、ペンペンとならす、三味
線のばちに似ているからだそうです。

 ペンペングサが生える――とは、荒廃した家などに使う言葉。そ
ういえば、わが家の庭は、今、ペンペングサの花盛り。よく見ると、
きれいな十字花。人にきらわれるこの草が気の毒です。

 三角の実を順に引っぱり、少し皮を残して、ブラブラしします。
それを耳もとで振ると、実と実がふれて、カラカラと音がします。
今の時代、ファミコンゲームからみると、バカバカしいほど素朴な
遊びなのです。

 ナズナとは、かわいい菜という意味の撫菜(なでな)がなまったの
だとも、朝鮮の古語でこれをナジと言い、「ナジの菜」が変化した
という説もあります。
(056-1)

 

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春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(6)アカザ

 春うらら。のんびりといなか道を歩いていると、畑や荒れ地など
できれいな紅紫色の粉をまぶしたような葉を見つけます。アカザの
若葉です。

 葉の色が赤くなっているのでアカザだそうですが、それじゃ「ザ」
は何だと聞かれると、ムニャムニャムニャ……。その意味は不明だ
とか。

 また、草がアサに似ているので「赤麻」がなまってアカザになっ
たという説もあります。

 このアカザの若葉をつまみ、葉についている粉をよく洗ってから
ゆでて、和えものやひたしもの、ゴマ和えなどにして食べられるそ
うです。

 かつて第二次大戦中や終戦後の、アノ食糧難時代にはよく利用さ
れたそうです。成分はロイシン、ベタインなどいう高級脂肪酸や精
油も少し含んでいるという。また、アカザの果実はつくだ煮になる
といいますがまだ試したことはありません。

 原産地はインドか中国といわれ、遠〜い昔、日本にはるばる渡来
したという。太くなった茎は乾かして、以前は「アカザの杖」をつ
くったそうです。この杖は軽くてお年寄りに喜ばれたそうです。

 若葉の紅紫色が美しいので栽培しようとする人もいますが、続け
て同じ場所では気に入らず、枯れてしまいます。野生でも長く続か
ないというから小ムズカシイ。

 「イタタタ…」。突然ハチに刺されてしまいました。救急箱など
ない野っ原です。あわててアカザの薬をむしり、生葉をもんで、汁
をさされたところにつけるとよいという。…古くから伝わる民間療
法です。

 アカザに似ているが、若葉が赤くならず、白っぼいものがありま
す。これをシロザとかシロアカザとか、まるで運動会のような名で
呼ばれています。実際にはこっちの方が多くみかけます。アカザと
は色のほかは変わりません。
・アカザ科アカザ属の1年草
(056-2)

 

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春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(7)アマドコロ

 4、5月ごろ、木陰や竹やぶなどで、葉のつけ根に緑がかった白
い鈴のような花がつり下がっているのを見かけます。アマドコロで
す。

 アマドコロとはおもしろい名前ですが、根茎が甘く、ヤマノイモ
科のトコロに似ているというのでついた甘ドコロなのだそうです。

 草の高さ40〜70センチ、葉が弓なりに曲がり葉をたがいちがい
に出しています。花は葉脈から3〜5個ずつつけ、長さ2センチ位
の筒形で先が6つに分かれています。雄しべは6本、果実は球形で
1センチ位の液化。熟すと黒くなります。

 地下茎は太く、径1センチばかり、トコロに似ています。ところ
どころに節があり、煮もの、てんぷらにされ、干して家庭酒の原料
にもされています。

 根が食えればトーゼン若芽も花も食べられます。早春につんでて
んぷらに、煮ものに、酢みそあえ、ひたし物などにして食べます。

 さらに根は薬用にもなるというからありがたいもの。生薬名を萎
(い)ずいといい、天日乾燥し煎じて滋養強壮薬に。また打ち身に根
茎をおろしてキハダの粉を加えて酢で練って温湿布するとよいそう
です。

 胃炎、胃潰瘍(いかいよう)に刺激緩和と滋養の目的でハブ茶をま
ぜて煎服すると効果あるといいます。近種にオオアマドコロ、ナル
コユリなどがあり、葉に斑(ふ)入りの品種もあって庭園に、切り花
にもします。
・ユリ科アマドコロ属の多年草
(056-3)

 

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春編(5月)・第1章「ネギボウズ 五月(さつき)の空見て 風に揺れ」

(8)エビネ

 エビネ。漢字で海老根。地下の根っこである、太い偽球茎が、つ
ながっているのをエビに見ていたものだそうです。この根の連なり
が増えるのに何年もかかると聞いたことがあります。

 一時のエビネブームの時は、愛好家の間で大さわぎ。ネコもシャ
クシも山に入り、根こそぎとってしまい、すっかり少なくなってし
まいました。

 山を歩いていると、あっちでもこっちでもクルマで堀りにきてい
る人をよく見かけたものでした。

 葉は新茎の先に2、3枚つけて、春になると、葉の間から花茎を
出して、10個位の花をつけます。

 花は、茶褐色で茎2〜3センチ。内花被片と唇弁は白い色をして
います。日本全土の低山の林や、竹やぶに生えていて、朝鮮や中国
にも分布しています。

 エビネは、漢方にも利用されたそうで、地下の偽球茎を煎じて、
解毒、扁桃炎などに服用したこともあったようです。

 ラン科エビネ属のこの仲間は、日本には15種類もあるといいま
す。花が黄色で大きいエビネ(和歌山以西)、花が白から淡紅色で
あまり開かないキリシマエビネ(西南日本

 深山のブナ林などに生え、黄緑色の花弁、唇弁が赤褐色のサルメ
ンエビネ、がく片が紫色、唇弁が淡黄色のキソエビネ、淡紅紫色の
花を夏咲かせるナツエビネなどがあります。
・ラン科エビネ属の多年草
(056-4)

 

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第2章 ここにもあるよと いばる げんこつワラビ

春編(5月)・第2章「ここにもあるよと いばる げんこつワラビ」

(1)ワラビ

 日当たりの良い山道で、げんこつのようなワラビを見つけます。
あそこにも、ここにもと、いったん取りだしたらやめられなくなり
ます。田舎生まれの私などは、子どものころ、♪ワラビは笑って出
るもんだ、松露はショ(ヒョ)ロッと出るもんだ……と唱えながら
取って歩いたのを思い出します。

 ワラビは、茎が芽である、というので、茎芽(からめ)と言って
いたのが、なまったものだという説。いや、ワラビのビは、アケビ
のビと同じ、食べられる物としての実から転化したしたものとする
説、いやいや、ワラビの出る様子をわらが燃える火にたとえ「わら
火」としたのだと、いろいろな説があります。

 ワラビからでん分をとったり、糊の原料に、また大きくなったの
を床にしき、畳のかわりにしたこともあったそうです。
(057)

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春編(5月)・第2章「ここにもあるよと いばる げんこつワラビ」

(2)潮干狩り

 昔は旧暦の3月3日は、家から出て海岸の村は、磯遊びで、山村
では山登りをして、飲んだり食べたりして過ごす習慣があった。潮
干狩りは、この磯遊びから始まったのだろうといわれています。
(058)

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春編(5月)・第2章「ここにもあるよと いばる げんこつワラビ」

(3)潮の満ち干

 月や太陽の引力で、海水が引っ張られて満ち干が起こります。
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春編(5月)・第2章「ここにもあるよと いばる げんこつワラビ」

(4)スズメノテッポウ

 あぜ道や休耕田などに、スズメノテッポウが淡緑色の穂をつけ、
かたまって生えています。かわいい円柱形の穂を、スズメが鉄砲を
使うとすれば、こんな形だろうとつけた名前です。

 子どもにとっては、スズメの鉄砲だろうと、カラスの鉄砲だろう
と、かまいません。昔の子どもは、何でも遊びの道具にしてしまい
ます。

 「ピーピー草だ」と花茎を引っぱります。ツウーツ、ポンという
かすかな音がして、節から穂が抜け、穴のところに葉が一枚残りま
す。

 その葉といっしょに口に入れて吹くとピーピー。細く、高く、風
そよぐ田んぼにひびきます。

 根元に近い節を抜くと、太く低めの音が、穂に近い節ほど高い音
がでます。「梅干し、酸っぱい」といって、唇を引きしめて吹くと、
うまく鳴るそうです。
(060-1)

 

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春編(5月)・第2章「ここにもあるよと いばる げんこつワラビ」

(5)エンレイソウ

 いまごろ山道などを歩いていると、林の中に大きな丸っこい3枚
のつけねからでた花柄に赤紫色や緑色の花をつけた植物を見つけま
す。エンレイソウ(延齢草)という多年草です。名前は「齢を延ば
す草」ですが、猛毒ではないが毒草の一種だそうです。

 赤紫色の花弁のように見えるものは、実はがく片で、これはエン
レイソウ植物の中で唯一花弁のない種だという。花のあと、3室に
種子を入れる液果になります。液果は球形で、熟すと果肉の部分が
甘味くなるため、アリによって運ばれといいますがアリには毒は通
じないのでしょうか。

 果実の色によって4変種に分けられ、緑色のアオミノエンレイソ
ウ・暗紫色のクロミノエンレイソウ・緑色に紫色の斑のあるウスグ
ロミノエンレイソウ・赤いアカミノエンレイソウがあります。

 3枚の葉がよく目立ち、3を基数にしたユリという意味の「トリ
リウム」の属名があります。また、種小名をアペタロンといい、内
花被がない意味だそうです。

 毒草というのは裏返せば薬草です。民間療法では胃腸病によいと
いう。しかし、胃腸病によいというが、漠然とした病名判断で用い
るのは誤りと専門書にありました。タチアオイの別名があります。
北海道・本州・四国・九州に分布。
・ユリ科エンレイソウ属の多年草。
(060-2)

 

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春編(5月)・第2章「ここにもあるよと いばる げんこつワラビ」

(6)オドリコソウ

 春の野原や道ばたに群がって生えるオドリコソウはよく見かける
野草です。その名は茎の上部につく葉のわきの花の形が傘をかぶっ
て踊る踊り子ににているからだという。

 花期は4月から6月で、白か淡紅色の唇形花。日当たりのよいと
ころでは淡紅色が多い。上部は前に大きく口を開いた二唇形で上唇
になっているところは広く突き出てフードになり、下唇になってい
るところは2つにわれて大きく開き、虫がとまりやすいようになっ
ています。

 4本のやく(花粉のう)は花冠のフードにより、花粉を雨や霧か
ら守られ、フードの下に前後二対並び、下向きに割れて花粉を出し
ます。

 ハナアブなどの虫は、蜜が筒の底にあるため下唇の上に止まって
花の中にもぐりこむと、虫の背中や頭にビッシリと花粉がつくしか
けになっています。自然はうまくできているものです。

 オドリコソウは高さ30〜60センチ。葉は卵形で、1枚1枚茎に
向かってつく対生。長さ5〜10センチで、まばらに毛があり、縁
に粗い鋸歯があります。

 この若苗をゆでておひたしに、ゴマ和え、辛子和え、酢味噌和え、
油炒めや揚げ物にして食べます。また花は三杯酢にも利用できます。

 仲間のヒメオドリコソウはこれより小型の10から25センチ。上
部の葉が紫色に染まることが多い。ヨーロッパ原産で、各国に帰化。
日本では1893(明治26)年初めて東京の駒場で見つかったという
ことです。
・シソ科オドリコソウ属の多年草
(060-3)

 

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第3章 トビを追う カラスの仲間徐徐に増え

春編(5月)・第3章「トビを追う カラスの仲間徐徐に増え」

(1)トビ

 テントに泊まりながらの山歩き。やっと、人里に降りてきました。
農家の庭先にサクラソウが咲いています。舗装道路の感覚が足に伝
わってきます。

 カラスが裏山で騒いでいます。何事かと見ていると、トビが一羽、
飛び出しました。それを目がけて、数羽のカラスが飛び掛かります。
別の木の枝に逃げるのを、なおも追いかけ、追い出します。

 カラスが集団でいじめているのです。トビは攻撃されるたびに、
羽根をよじり、むこうの山に逃げていきました。

 上昇気流ににのって「ピーヒョロロ」と舞う。あの悠然たるおも
かげはなく、なんだかかわいそうなトンビくんでした。

 図鑑をみたら、トビは比較的集団性の高い取りだとか。その後、
仲間をひきつれ、仕返しに来たかもネ。
(061)

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春編(5月)・第3章「トビを追う カラスの仲間徐徐に増え」

(2)イカリソウ

 林の中の草むらに、赤紫色のイカリソウが咲いています。船の錨
のような形をしたおもしろい花が、数個ずつ下向きに咲いています。

 昔昔は、中国のお話です。一匹の雄の羊が、疲れ果てた様子で、
ヨロヨロと山に登っていきましたが、元気はつらつになって帰って
きました。

 不思議に思った老人が、ある日、そっと後をつけました。雄の羊
はイカリソウを食べていました。老人もまねをして食べたところ、
グ、グーンと元気をとりもどし、やっと登った山も、杖を投げ出し、
駆けおりたと言います。

 茎や葉を乾燥、粉末にして、元気薬に。また、乾燥したものを煎
じて服用したり、お酒に入れて飲んだりします。

 やわらかい葉は、ゆでて、からし和え、ゴマ和え、油いため、揚
げものにして食べられるそうです。
メギ科イカリソウ属の多年生草本
(062)

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春編(5月)・第3章「トビを追う カラスの仲間徐徐に増え」

(3)ハハコグサ

セリ、ナズナ、オギョウ(ゴキョウ)、ハコベラ……と、春の七草に
かぞえられるオギョウはハハコグサのこと。かつては、草もちはこ
のハハコグサを材料に使っていました。

 6世紀中国の『荊楚(けいそ)歳時記』にすでに草もちの記録があ
り、「鼠麹菜(そきくさい)=ハハコグサ)の汁を蜜に合わせて粉にす
る」と記述されているそうです。

 これが日本に伝わり、平安時代前期の歴史書『文徳実録』に3月
3日に、ハハコグサをもちにつき込んだ記録があります。ハハコグ
サは漢字で母子草。大昔はホウコと呼んでいたというが、この『文
徳実録』がハハコグサの名を創作、以後使われているのだとか。

 ちなみに、草もちにヨモギが使われだしたのは、15世紀、室町
時代からだとも、江戸中期、新井白石が朝鮮からその方法を伝授、
広めたともいわれています。

 ハハコグサの名は、頭花の冠毛がほうけ立っているので、ハハケ
ルがハハコになったとの説、また葉を利用するため、葉っこ草とよ
ばれていたのがなまっていまの名前に変わったなどの説がありま
す。

 ハハコグサは、中国から西はヒマラヤまで分布。日本には古い時
代、中国か朝鮮半島から伝来した帰化植物だろうとされています。

 「母子草」があるからには「父子草」もあります。ハハコグサに
似ていますが、その姿がやせており、花の形からハゲ頭を連想させ
るためについた名だともいわれています。
キク科ハハコグサ属の越年草
(063)

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春編(5月)・第3章「トビを追う カラスの仲間徐徐に増え」

(4)ソラマメ

 畑にソラマメのさやが空に向かって立っています。ですからソラ
マメなのです。

 ソラマメは、エンドウマメとともに、世界で最も古い作物の一つ。
エジプトや古代ギリシアで、すでに栽培され、トロイの遺跡からも
出てきています。

 原産は、中央アジアから地中海地方。日本へは天平年間というか
ら奈良時代。インドのお坊さんが、中国を経て来たとき持ち込んだ
といいます。しかし文献にあらわれるのはなぜか江戸の初期。

 農家のおばさんにおねだりして、わけてもらいます。さやをわり、
豆を出して、小枝でつなげば「二そう舟」のできあがりです。

 また、マッチ棒を豆にさしたものを二本、さやに通し、「人形」
づくり。マッチ棒の頭の方に糸をつけて引っぱると、豆の手が上が
ったり、下がったり……。
(064)

 

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春編(5月)・第3章「トビを追う カラスの仲間徐徐に増え」

(5)クサスギカズラ

 海岸の砂地に生える薬草クサスギカズラ。根を漢方薬として利用
します。似ても似つかぬユリ科に属し、野菜のアスパラガスの仲間。

 一見葉のように見える細い緑色のものは、実は枝の変化したもの。
本当の葉はすべて退化して薄い膜になり小さく茎についています。
下の方ではトゲに変化しており、退化した葉にかわって葉状枝が光
合成を行います。

 名前は葉状枝が杉の葉に似ているというのでクサスギカズラ(草
杉葛)。雌雄異株で地下の根茎は短く、肥大した根をたくさんつけ、
その先にひげ根がある。茎は細く、高さ1〜2m、半つる状、下の
方は木本状でわき枝を生やします。

 5,6月ごろ、小さな淡黄色の花を葉のつけ根に2,3個集まっ
て咲かせます。花被は6片で平開し、せまい線状楕円形。おしべは
6個。子房はつぼ形をして柱頭は三つに分かれます。液果は直径7
ミリくらいの球状で、汚れた白色に熟し、中に黒く丸い種が入って
います。

 クサスギカズラの肥大した根を、かつては砂糖漬けにして土産物
などにしました。根の外側の薄いコルク皮をとり、天日乾燥したも
のを天門冬(てんもんどう)といい、滋養、強壮、鎮咳、利尿、下
痢止めに利用しますが、成分はいまひとつはっきりしません。仲間
のアスパラガスの根もヨーロッパでは利尿の民間薬だそうです。
・ユリ科クサスギカズラ属の多年草
(064-2)

 

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春編(5月)・第3章「トビを追う カラスの仲間徐徐に増え」

(6)クサノオウ

 山麓や草地に黄色い4枚の花弁のクサノオウの花が咲いていま
す。クサノオウとは珍しい名前です。

 葉や茎をちぎると、黄色い汁が出てくるので「花の黄」の名がつ
いたのだとも、あるいはこの汁ができものに薬効があるので「瘡(く
さ)の王」なのだとも。ほかに「草の王」という説もあります。

 クサノオウは、葉や茎がやわらかく、葉の表面は緑色、裏面は白
っぽい色で細かい毛が生えています。葉は互生しており、1〜2回
の羽状複葉で5,6月ごろ、散形花序を出して、数個の花を咲かせ
ます。

 クサノオウは、普通は有毒植物として扱われますが、以前は民間
薬としてイボとり、たむし、はれもの、虫さされにこの草からでる
黄色い汁を塗ったこともあったという。

 有毒は使い方によっては薬にもなります。漢方では、生薬名をハ
ックツサイ(白屈菜)といい、全草を乾かして鎮痛、鎮痙(ちんけ
い)薬として用います。

 クサノオウの薬効は、一時もてはやされ、胃潰瘍や胃ガンにまで
使われたこともありますが、やはり毒草。汁に含まれるアルカロイ
ドの作用が激しいため、シロウトがみだりに用いてはならないそう
です。
・ケシ科クサノオウ属の越年草
(064-3)

 

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春編(5月)・第3章「トビを追う カラスの仲間徐徐に増え」

(7)コウゾ

 今ごろ、ハイキングの帰りなどに、林道わきでクワの葉に似たコ
ウゾの木に赤く熟した実を見つけ、手にとってほおばります。みん
な子供の頃にかえったような顔をしてニコニコしています。

 ジンチョウゲ科のミツマタ、ガンピとともに、樹皮の強いコウゾ
は、和紙の原料になっています。また、昔から衣料にも利用され「た
え(木へんに考)」という布を作ったといいます。

 コウゾには、製紙用栽培品種のコウゾと野生種のヒメコウゾ、ツ
ルコウゾ、カジノキがあります。しかし野生のヒメコウゾを普通「コ
ウゾ」といい、栽培品もただの「コウゾ」と呼ぶのでまぎらわしい
のです。研究の結果、栽培コウゾは、ヒメコウゾとカジノキの仲間
ということになっています。

 その実は、いずれも食べるとイチゴのように甘く、生で食べたり、
ケーキやジャム、またお父さんたちは果実酒をつくって楽しみます。
・クワ科コウゾ属の落葉高木
(064-4)

 

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第4章 垣根越し よそのタケノコの かず数え

春編(5月)・第4章「垣根越し よそのタケノコの かず数え」

(1)タケノコ

 竹の葉をふんで、湿った坂道を下ります。垣根越しに、竹林をの
ぞくと、あそこにも、ここにも、タケノコが顔を出しています。農
家の裏庭で、イヌが吠えています。

 タケノコとは、事典に、竹類の地下茎に生ずる芽とあります。あ
れは、竹の芽かァ。なるほど、ちがいねエ。

 タケノコは、漢字で筍。タケノコは、芽ばえてから旬(十日)内
が竹の子で、それをすぎれば竹になる……。食べるには、旬内に…
…とも。上旬、下旬の旬です。だから、字も竹に旬。

 普通、八百屋さんで買ってくるのは、孟宗竹のタケノコ。中国が
原産で、日本に渡ってきたのは16世紀という。

 昔、中国に孟宗という孝子がありました。病気の母のため、雪の
中からタケノコを掘ったという逸話がもとで、こんな名前がつきま
した。
(065、066)

 

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春編(5月)・第4章「垣根越し よそのタケノコの かず数え」

(2)チガヤ

 ツバナも昔の子供はよく食べました。ツバナはチガヤの花。春に
先がとがった芽が地上に生え、はだしの足に刺さり痛かったことを
思い出します。

 この芽はやがて葉ざやがふくらみ、さやをむくと穂わたが出てき
ます。このしっとりしたものがツバナ(芽花)。ツバナや根にはか
すかに甘味があるため、食べられます。

 「万葉集」巻八に「戯奴(わけ)がため吾が手も数に春の野に抜
ける茅花ぞ御食して肥え座せ」とあり、「万葉集」時代から食べら
れていたようです。また、江戸時代の元禄8年(1695)の『本朝食
鑑』(平野必大著)にも「ツバナ(津波奈)は児女が、また塩でもみ
あわせて食べる……」と出ています。

 群がったこの花穂が銀色に風になびく様子は美しく、昔は老成し
た花穂は火打ち石で火をつける「火口(ぼくち)」に使われたそうで
す。

 チガヤは、千茅とか血茅と書き、皮のや堤防や畑の周りに群がり
ます。千本も群がって生える茅の意味だそうです。

 チガヤの白い根茎は、掘りとって陰干しして薬に使います。根茎
は、「白茅」、「茅(ぼう)根」といい、利尿、止血に、身体内部の熱
をとる清熱作用があるという。

 以前は東京の多摩川の調布市あたり産のものが、多摩川茅根とい
われ最上級品だったとか。今ではみる影もありません。

 チガヤの葉は編んで苫(とま・船などを覆って雨露を防ぐもの)や
縄として利用されたこともあったそうです。このツバナは、煎じて
こどものセキどめ、疳(かん)などに用いてもいいと薬草の本に出て
います。
・イネ科チガヤ属の多年草
(067)

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春編(5月)・第4章「垣根越し よそのタケノコの かず数え」

(3)ゼンマイ

 野原や林の中に、ゼンマイが並んで生えています。山菜として、
ワラビとともに、よく食べられます。

 ゼンマイとは、「銭巻」の意味。くるりと巻いた丸い顔を、昔
のお金(鉄の銭)にたとえたものとか。

 以前まで使われていた時計のぜんまいは、逆に、この草から連想
してつけた名前だそうです。フーン。

 生えているゼンマイを失敬して「カタツムリ」をつくります。う
ずまいた芽の茎を角の形に切れば、もうできあがりッ。簡単!

 また、葉を全部とった葉柄の皮をむいて芯を取ります。その芯を
クルクル巻いて丸くし、小枝で留め、つりひもをつければペンダン
ト。お母さんにプレゼントしてみよう。

 巻いた若芽をあく抜きして、煮つけ、汁の実、天ぷらにして食べ
られるヨ。
(068)

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春編(5月)・第4章「垣根越し よそのタケノコの かず数え」

(4)アシナガバチ

 よく、農家の納屋の軒下などで、せっせとアシナガバチが巣づく
りをしているのを見かけます。

 まだ、つくり始めたばかりなのか、正六角形の部屋が五,六個。
小さい巣に、母バチが一匹、忙しそうです。

 こんなところに巣をつくるのは、セグロアシナガバチとのこと。
今ごろから日光や雨があたらず、風当たりの少ない所に母バチが巣
づくりを始め、家族を増やします。

 古い木材の繊維をだ液で練って、部屋をつくり、中に卵を生みま
す。こどもが成虫になり、働きバチになると、巣はどんどん増築さ
れます。にんげんと違って、ローンの心配などありません。

 巣がどんどん大きくなり、大家族になりますが、身分がちゃんと
あって、母バチはいつも一番上、それからは生まれた順番にえらい
のだそうです。
(069)

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春編(5月)・第4章「垣根越し よそのタケノコの かず数え」

(5)カキの葉

 大きなカキの葉が、深い緑になってきました。小さな青い実がた
くさんなつています。

 このカキの葉を取ってきて、幅1センチぐらいに、はさみで切り
ます。それを水道の水に20〜30分つけまておきます。その水を飲
んでみましよう。

 ナント、まるで渓谷の湧き水のようのおいしくなっています。

とても水道の水とは思えません。スルスルッとのどに流れていきま
す。お父さんの晩酌のウイスキーの水わり用につくってみよう。う
まくいけば、お小遣いアップとなるかも。

 カキも、古くから日本で栽培されている果樹です。原産は中国の
揚子江沿岸。日本にも自生していたという説もありますが、イマイ
チはっきりしません。

 語源は、熟した実の色から「あかつき」の転化したものとか「赫
(かが)やき」という意味からきたという説があります。
・カキノキ科カキノキ属の落葉高木
(070-1)

 

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春編(5月)・第4章「垣根越し よそのタケノコの かず数え」

(6)ザゼンソウ

 夏、湿った登山道に、大きな円状ハート形の葉が道いっぱいにひ
ろがっています。ミズバショウに似ていますが、それが生える場所
より少し乾いた所なのでザゼンソウであることがわかります。

 ザゼンソウはミズバショウの仲間。春3月から5月ごろ、まだ葉
がのびないうちから花が咲きだします。花はミズバショウと違い、
暗紫褐色の仏炎苞につつまれた球形の肉穂花序(多肉な花軸の周り
に花柄のない小花をたくさん密着させた花序)をしています。小花
は両性で、4枚の果被片と4本の雄しべ、1本の雌しべからなって
います。

 地中に太い根茎があり、草全体に悪臭があります。葉は根もとか
ら生えだし、長い柄を持ち、大きくなると40センチにも生長しま
す。

 仏炎苞は、花序の少し下の花茎につき、大きなもので長さ20センチ、
径13センチにもなります。この仏炎苞の内側は、草自体の呼吸熱
で温度が高くなっていて、外側の気温と比べるとかなりの温度差が
あるといいます。

 ザゼンソウは「座禅草」の意味で、仏炎苞を仏像についている光
背(後光)に見たて、中の花序を座禅を組んだ達磨大師にたとえた
名前だといいます。一名をダルマソウとも呼んでいます。

 カラフトから沿海州、朝鮮半島、日本の北海道、本州に分布。北
米の東岸には、花に悪臭があるので「スカンクキャベツ」と呼べれ
るザゼンソウの母種があるそうです。
・サトイモ科ザゼンソウ属の湿地に生える多年草
(070-2)

 

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春編(5月)・第4章「垣根越し よそのタケノコの かず数え」

(7)スズラン

 かれんな花を咲かせるスズラン。キミカゲソウ(君影草)の名もあ
ります。純白で香りのよい鈴のような花はおなじみです。スズラン
といえば北海道が有名ですが、アイヌは、チロンヌプキナ(キツネ
のギョウジャニンニク)とかセタプクサ(イヌのギョウジャニンニ
ク)といって、特別に利用しなかったそうです。

 江戸時代になっても、園芸書にはスズランの記載はなく、後期に
なり1776年(安永5)に松平秀雲という人の、『本草生譌(ほんぞ
うせいか)』の中で君懸草(きみかけそう)とあるのが初出とか。

 正確な図が載るのは安政3年(1856)『草木図説』(飯沼慾斎著)に
なってから。まして一般に知られるようになったのは明治の終わり
ごろというからまだ100年にもなっていないんですね。

 スズランは、高原や原野に生える多年草で切り花。鉢植え、庭植
えにされます。2枚の葉が基部を抱くようにして鞘(さや)状になり、
長楕円形の葉身は長さ12〜18センチ。下面は粉白色をおびていま
す。

 初夏、高さ20〜35センチの花茎を出し、おなじみの花を約10
個まばらに片側に寄せて咲かせます。花はつりがね形で焼く1セン
チ。花冠は六裂して外側にそりかえります。果実は球形で熟すと赤
くなります。

 しかし、いまよく栽培されているのはドイツスズランだそうです。
花が大輪で強い香りがします。
・ユリ科スズラン属の多年草
(070-3)

 

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第5章 霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ

春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(1)クマザサの花

 クマザサに囲まれた平らな場所にテントを張りました。町の夜景
が光り、空には月が輝いています。汗をかいた体に、夜風がさわや
かです。

 翌朝、目がさめたころは夕べの天気はどこへやら、強風とガス。
右も左も真っ白けの霧です。そんななか、花を咲かせるつもりなの
か、若い穂をつけたクマザサの群生が風にゆれているのが印象的で
した。

 タケやササ類は、一度花を咲かせると、ほとんど枯れてしまうと
いう。120年ぐらいの周期で、花を咲かせるというから、あのク
マザサはちょうど120年たったのでしょうか。

 花のあとの実は、かつては飢饉の時などの重要な食料源であった
そうです。そんなところから「竹の花が咲くと飢饉になる」という
俗信がささやかれるようになったのだそうです。
(071)

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(2)タラノメ

ウコギ科タラノキ属の落葉低木
・タラノキは別名オニノカナボウともいう
・薬用 木の皮・根の皮は糖尿病、胃腸病に。葉は健胃剤に利用。
・天ぷら、ゆでてゴマ和え、その他おひたし、酢みそあえ、油いた
め、煮びたしなど
(072)

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(3)イワタバコ

 いまごろから初夏になると、タバコのような大きな葉が、ジメジ
メした岩肌や滝の近くに生えているのを見かけます。見た目のよう
に岩煙草(いわたばこ)です。

 お浸しに揚げ物、酢味噌和え、煮浸し、芥子和えなど山菜として
も利用されます。いつだったか「野草を食べる会」でのこと。大き
な一枚の葉のまま、草履のような天ぷらが出てきてビックリ。どこ
からかじろうかと迷いました。

 また若葉は苦味があるものの、やわらかく粘り気があって生でも
食べられます。でも実際に食べてみたものの「毒はないかも知れな
いけどな」程度の味です。

 昔は、胃腸、腎臓の民間薬して利用されたそうですが、その薬効、
有効成分についてははっきりしないそうです。

 イワタバコの茎は、褐色の鱗茎毛が生え、短縮して地表に横たわ
り、その頂から葉が1〜2枚出て、岩壁からたれています。葉は楕
円形で、長さ10〜30センチ、幅5〜15センチで、ふちに不ぞろ
いのギザギザがあります。

 真夏に高さ10〜20センチの花茎をのばし、その先に星型の紅紫
色(白色系もある)の花をたくさん咲かせます。きれいで、山草と
して観賞用に栽培されることもあります。

 花冠は、径は約2センチ、短い筒になり上の方は5裂になってお
り、5本の雄しべと1本の雌しべをもっています。本葉の枯れてし
まったあと、次の年の葉をちりめん状のボールのようにして休眠し、
翌年春になって徐々にその葉をのばします。

 イワタバコは秋田県に野生の記録があり、同じ科の他の仲間に比
べ寒い地域にまで進出できたのはそんな「特技」があったからでし
ょうか。

 イワタバコ属は、イワタバコ1種だけで、イワタバコ科の中では
最も原始的な特徴を残しているのだそうです。日本特産。
・イワタバコ科イワタバコ属の多年草
(073)

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(4)ツツジ

 春の一ヶ月あまり、毎週土曜日から泊まりがけで同じ山に登って
みたことがありました。

 初め、まだふもとの茶色い木々の間で見えた、ミツバツツジの花
が、だんだん頂上に向かっていくのがわかります。木の葉の緑も次
第に濃くなり、山全体の景色も変わります。

 下から今度は、紅色のヤマツツジが咲き出して、山々をいろどっ
ています。最後のころ、山頂付近はミツバツツジにシロヤシオが混
ざって咲いていました。

 ミツバツツジは、その名の通り、枝の端に「三つ葉」を広げるツ
ツジで紅紫色。一番ツツジともいいます。

 ヤマツツジは、緑一色の山々に一段と目立つ、はでな花。この花
を「食い花」といって摘んで食べたりします。そのほか名前のわか
らないなんだかツツジで野山はにぎわうのです。
ツツジ科ツツジ属
(074)

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(5)シイタケ栽培

薄暗い林の中の作業道を歩いていたら、突然、丸太を合掌組みに
並べてあるところに出ました。丸太にはキノコが生えています。

 ここはシイタケの栽培場です。丸太はミズナラ、コナラ、クヌギ
などを材料にした「ほだ木」で、シイタケの菌を植えつけたものだ
そうです。

 生えているキノコはシイタケです。スーパーなどで売っているシ
イタケはこういうところで栽培されています。

 シイタケという名前のように、山林中のシイノキなどに生えるキ
ノコで、クリ、カシナラの切り株にも発生します。

 シイタケの種つきの原木を栽培者から分けてもらい、日の当たら
ない湿気の多いところに立てかけておきます。(地面にころがして
はダメ)。1年で小さいシイタケが、2年もすると、春には春子、
秋には秋子がぞろぞろ生えてきます。家庭でも栽培が楽しめます。
(075)

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(6)コジュケイ

 雑木林や竹やぶで、「チョットコイ、チョットコイ」と、人を呼
びつけている声がします。昔の警察でもあるまいし。ちょっっとこ
い!とは失礼なヤツ。気になる声です。

 しかし、聞きようによっては「ワン、ツー、スリー、ワン、ツー、
スリー」ともいっているようです。これは、ウズラに似た大型の鳥、、
コジュケイの鳴き声です。

 コジュケイは、中国南西部から南アジアにかけてが原産。日本に
は、1919年ごろに数十羽輸入。東京、神奈川に放したものが最初。
その後、野生化し、増え出して、今では岩手から九州、四国まで繁
殖しています。

 しかし、肉がおいしく、その声が、ハンターまでも呼びつけてし
まい、毎年百万羽以上が鉄砲にうてれてしまうそうです。
(076-1)

 

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(7)タイサンボク

 これは大きな名前のタイサンボク。大山木とも泰山木とも書
かれますが、もとの和名は大盞木。名前ばかりでなく花も大き
く、直径15〜20センチにもなります。

 5,6月ごろ、枝先に香りのよいコップ形の白い花が咲きま
す。このすばらしい花も残念ながら、寿命が短い。それをなん
とかならぬかと、マレイン酸ヒドラジッドを散布したりして実
験した結果、いまでは花を長持ちさせられるようになったのだ
そうです。

 花弁は広倒卵形でふつう6枚、まれに9〜12枚あることも。
その名はサカズキの形をした大きな花をたたえたものだろう
といわれています。

 タイサンボクはモクレン科の常緑高木で、北アメリカは東南
部原産。ヨーロッパには1734年に渡ったという。すぐに南部
一帯にひろがりましたが、この植物は寒さに弱く、パリとロン
ドンを結ぶ線から北はあまり育たないそうです。日本には明治
初年に渡来。庭木としてひっぱりだこになったという。

 北アメリカには、花も葉も小さいヒメタイサンボクがあるそ
うです。直径10センチの花はクリーム色で、フリージアに似た
香りを放ちます。またタイサンボクとヒメタイサンボクとの雑
種もつくられているそうです。       
・モクレン科モクレン屬の常緑高木
(076-2)

 

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(8)チチブイワザクラ

 埼玉県の秩父に武甲山という石灰岩で出来た山があり、その岩場
に自生する多年草。サクラソウ属の一種で、同属のサクラソウの変
種とされています。

 イワザクラに大変似ていますが、全体的に見てそれより大きめで
す。葉は卵形で茎2〜4センチ、浅く掌状に裂けています。また若
葉の裏面に毛のあるのが、コイワザクラと異なっています。花柄や
花茎の下部に、暗赤色の毛がやや蜜に生えて生えるのも特徴のひと
つだそうです。

 花が5月上旬で、下部の中央から高さ7〜12センチの花茎をの
ばし、その先端に紫紅色の美しい花をつけます。花茎は2〜3.5セ
ンチでコイワザクラの1.8〜2.5センチに比べて大きい。

 花冠の筒状部は長く、先は五つに裂け、裂く片はさらに2つに割
れていて、上から見るとサクラの花のようです。

 日本のサクラソウ属には、サクラソウをはじめ、カッコソウ・オ
オサクラソウ・イワザクラ・コイワザクラ・ハクサンコザクラ・ユ
キワリソウ・クリンソウ・ヒナザクラなどがあり、さらに多くの品
種が自生していて、登山者の目を楽しませてくれています。

 名前はもちろん花がサクラに似ていることによりますが、それは
外見だけでサクラ属は離弁花属であるのに対して、サクラソウ属は
合弁花類で花弁はもとの方でくっついて離れていません。
・サクラソウ科サクラソウ屬の多年草
(076-3)

 

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春編(5月)・第5章「霧の中 覚悟のひと花揺れるクマザサ」

(9)ツルグミ

 グミにはアキグミやナツグミのように落葉性のものと、ナワシロ
グミやマルバグミのように常緑性のものがあります。ほかにもう一
つツルグミがあります。

 ツルグミは春から夏にかけて熟し、山地や丘陵でよく見かけます。
果実は長楕円形で1.5センチくらい。細い糸でぶら下がっています。

 ツルグミは枝がツルのようにのび、高さ1.5から2m。葉は4
センチくらいで楕円形。互生して表面は緑色、裏面は赤銅色。晩秋、
葉のわきに柄のある白い花が2,3個垂れ下がって咲きます。外側
は赤褐色の鱗片におおわれています。雄しべ4本、雌しべ1本。果
実は翌年の5月ごろ赤く熟し、甘くて食べられます。

 ツルグミの根や樹皮はせんじて飲むと風邪、心臓病、黄疸、破風
症の特効薬になるそうです。本州(福島県以西)・四国・九州・沖
縄・朝鮮南部・中国・台湾に分布。
・グミ科グミ属の常緑つる性植物
(076-4)

 

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第6章 あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵

春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(1)カエルの卵 

 あぜ道で、足元の草むらから急にカエルが飛び出します。苗を植
えた田んぼの中に目玉のようなブヨブヨした丸いものがたくさんあ
ります。カエルの卵です。

 長く、ひものようにヌルヌルまかれているのがヒキガエルの卵。
中に黒いツブがたくさんあります。ひとつひとつが丸く、ひとかた
まりになっているのがトノサマガエルのもの。

 コケで緑になったアワの中に、アカガエルの卵があります。もう
オタマジャクシにかえっているのもいます。いまににぎやかになる
でしょう。

 ♪オタマジャクシはカエルの子……という歌があります。これは
当たり前。ナマズの孫だったら大変です。ま、こんな歌に出てくる
ほど、カエルは私たちの身近な動物。カエルにちなんだことわざや
言い伝えがたくさんあります。
(077)

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(2)ウツギ

 ♪う〜のはな〜のにおうかきねに……。そのにおいは、まるで夏
を運んでくるようです。ウノハナはウツギの別名、漢字で「空木」
と書きます。茎の中ががらんどうの中空ため、空木(うつぎ)と名
づけられたのだそうです。

 ウツギの花は、枝の先っちょにたくさんの白い花を円錐花序(え
んすいかじょ・ピラミッド型)につけて咲かせます。花弁は5つで
ラッパ状に開き雄しべは10本です。かつては観賞用として庭木や
生け垣にも植えられました。

 昔は、この花がよく咲く年は、農作物も豊作だといわれ、その咲
き具合で収穫を占ったという。ウツギは古い時代から親しまれ、平
安時代の本・「和名抄・わみょうしょう」にも出てきており、また
『万葉集』にも24首が歌われています。

 春から初夏への季節の変わり目に咲くこのウツギの花は、まだ暦
が普及しなかったころは、重要な季節を知る目安にもなっていたと
いう。かつては若葉をゆでて食用にもしたそうです。また、ウツギ
の木質は堅いので木釘を作るのに利用されます。

 丹沢山塊の蛭ヶ岳(ひるがだけ・1673m)から北に向かったとこ
ろに「姫次」という所がありますが、これは山地に生えるウツギの
別種で小形の「ヒメウツギ」が多く生えていたところで、それが「ヒ
メツギ」となまったものだという説もあります。

 そのほか、中央アルプスの空木岳(うつぎだけ・2864m)は麓
でちょうどウツギが咲くころこの山を見ると、まるで山の雪がウツ
ギの花が咲いているような景観なのでその名がついたともいわれて
います。

卯の花のうへを月夜でぬりにけり  来 山
・ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木。北海道から九州まで広く分布
しています。
(078)

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(3)ショウブ

 5月5日のこどもの日は「端午の節句」ともいい、昔は男の子の
お祭りでした。いまでもこいのぼりをあげたり、ショウブ湯に入っ
たりします。

 ショウブは全体に香りがあり、お風呂がいい匂いになります。で
も茎が体に当たって、気持ちは悪いけれど。

 ショウブは、池のふちやみぞなどの水辺に群生するサトイモ科の
多年草で、全国に自生しています。日本では冬になると地上に出て
いる葉が枯れて休眠してしまいますが、南の暖かい地方では常緑だ
という。

 ショウブの葉は剣のように細長く幅は2センチくらい、長さ1m
にもなることがあるという。根茎の上に2列につき、もとの方は互
いに抱き合っています。

 初夏に円柱形の花序を出し、淡い黄緑の花をビッシリと咲かせま
す。昔はこの葉をつかって絵のような遊びをしました。でも公園な
どに植えてあるショウブを取ったりしてはだめですよ。
・サトイモ科ショウブ属
(079)

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(4)ドジョウ

 水田の日当たりの良い水底で、ドジョウが昼寝をしています。水
といっしょに体がゆれてもおきません。よほど気持ちがよいのでし
よう。

 ドジョウにはひげがあります。それも文字通りの「ドジョウヒゲ」。
受きようのある顔をしています。

 ひげは上あごに6本、下くちびる?に4本。これは、えさを探す
ためのたいせつなもの。ダテではありません。

 えらで呼吸するほかに、水面に顔を出し、口から空気を吸い込ん
で尻から出す芸当もできます。

 小さいときに餌を十分にやると、同じ条件で餌を少なくしたもの
より雌が多くなるといいます。また、幼児期、えさの中に卵胞ホル
モンを混ぜて40日間食べさせると、雄になるべきものが雌になっ
てしまうという不思議な魚です。
(080)

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(5)キツネノボタン

 ♪ことしのボタンはよいボタン……というわらべ唄があります
が、それとは関係ないキツネノボタン。

 よく田んぼの道端に、緑色のトゲトゲの球をつけた草が生えてい
ます。まるで、昔のお菓子のコンペイトーのようで、ちょっと気に
なる草です。

 溝のふちや湿地などによく生え、子どものころ、プツンととって
は、いたずらしました。キツネノボタンとは、狐の牡丹の意味。野
に生え、葉がボタンに似ているからだといいます。
(081-1)

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(6)スギナ

 ほとんどのツクシがしぼんでしまい、たくさんのある節から枝を
出したスギナだけが風に揺れています。このスギナで「どこつない
だ遊び」をします。

ツクシと同じように節をはずし、また元のように差し込んで、当て
っこします。単純な遊びですぐあきてしまうけど、一度はやってみ
よう。若芽は食べられます。
(081-2)

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(7)ホトケノザ

 畑や道ばたに咲いているホトケノザ。といっても、春の七草に出
てくる「……ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ……」とは、全然違
うもの。春の七草の方は、タラピコのことでキク科。

 こちらのホトケノザは、シソ科。淡い紅紫色の筒部の長い、唇形
の花をつきだすよう、上に向いて咲いています。ホトケノザとは、
二枚の葉が茎をつつむようになっているのを舞台に見立て、仏の座
と呼んだものです。
(082-1)

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(8)ヒメオドリコソウ

 茎の上部に葉が集まり、暗い紅色をおびて、空き地に群生してい
ます。オドリコソウを小さくしたような花。

 ヨーロッパ、小アジア原産。日本では明治26年に初めて東京の
駒場で見つかったとか。ちなみに、オドリコソウの名は花が、笠を
かぶって踊る人に似ている所からきているそうです。
シソ科オドリコソウ属の1,2年草
(082-2)

 

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(9)ノビル

 人里近くの野原や土手などで、白紫色のノビルの花が線香花火の
ように咲いています。ノビルとは野に生えるヒルの意味。ヒルとは、
ニンニクやネギなどのことで、かむとひりひりするものをいうのだ
そうです。

 東京・八王子の宮下遺跡の深鉢土器の中からノビルの炭化鱗(り
ん)が出土しているそうで、縄文時代にすでに食べられていたこと
がわかっています。

 また、あの「古事記」(中つ巻)応神天応の項にも、応神天皇の
歌で「いざ子ども野びる摘みに、ひる摘みに、わが行く道のかぐは
し花橘は………」とあり、古代人も野草菜としてノビルなどを摘み
に行ったようです。

 多年草のノビルは、秋も遅くから葉を出し越冬。茎は柱状で柔ら
かく、淡い緑色で、高さ60センチくらい。地面の中には直径1〜
2センチの鱗茎があります。

 初夏のころ、茎の先に1個の散形花序をたてて、白紫色の花を咲
かせます。花序ははじめ、膜質の袋状の苞葉に包まれています。果
皮片は6枚、雄しべ6本、雌しべは1本。果実は、裂けて開き、各
室に二つの黒い種子があります。

 花の大部分は発達せず、球形の珠芽(ムカゴ)になります。ノビ
ルはネギの仲間。鱗茎や若葉を酢味噌あえ、おひたし、薬味、汁の
実、ごま味噌あえ、辛子あえ、また生食にも利用します。栄養的に
もすぐれているそうで、日本全土、東南アジアに分布しています。
 花で首飾りをつくって遊びます。
・ユリ科ネギ属の多年草
(082-3)

 

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春編(5月)・第6章「あわ浮かぶ アオゴケの中 カエルの卵」

(10)ナワシログミ

 ナワシログミは暖かい地方の海岸近くに多く分布し、高さ約2.5
m、葉は長楕円形で革質で互生し、ふちが波うっています。10月
から11月にかけて葉腋に数個の花をつけます。外側に褐色と銀白
色の鱗片が密生しています。

 果実は、長さ1.5センチくらいの長楕円形で、次の年の5月ごろ
熟して食べられます。庭木などにも植えられます。関東地方から西、
中国、四国、九州に分布しています。
・グミ科グミ属の常緑低木
(082-5)

 

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第7章 子ツバメの 数気になって 背のびする

春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(1)ツバメ 

 農家の軒先のツバメの巣は、今、にぎやかです。親ツバメがくる
たび顔中口にしたヒナが大騒ぎ。餌を運ぶ方もいささかやけ気味に
なっています。

 ツバメは、日本人に大事にされ、「ツバメが巣をつくる家は長者
になる」とか「不吉なことがあると翌年からツバメがこない」「ツ
バメを殺すと、火にたたる」などといわれてきました。

 昔は、秋にいなくなるのが不思議で、樹の穴の中で冬眠するのだ
とか、泥の中に隠れるのだとか考えられていたそうです。

 去年の巣にちゃんと帰ってくるのも不思議だと、ほんとに去年の
ツバメかどうか首に赤い糸をつけて実験した話が「今昔物語」に出
ています。

 ツバメは、さえずる声が「土喰って、虫喰ってシブーイ」と聞こ
えるという。注意して聞いてみよう。

・ツバメの種類 コシアカツバメ、ショウドツバメ、イワツバメな
(083)

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春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(2)カワセミ

川や沼や池の近くで魚が浮かんでくるのを待っている。魚を見つ
けると、水中に飛び込んで捕まえる。ガケをくちばしでつついて巣
をつくる。

・婚約 雄のプレゼントをもらうと婚約が成立する
(084)

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春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(3)ハシリドコロ

 ハシリドコロは、走り所の意味。根には猛毒があり、山菜とまち
がえて食べたりすると大変です。とくに根茎からくる強い副作用は、
幻覚症状をおこして半狂乱になり「所」かまわず「走り」まくるの
で、この名があります。

 また苦しみも激しく、うめくため、オ(ウ)メキグサという方言も
あるという。この草は谷間や木の下に生えて、若芽などはみずみず
しくやわらかく、一見食べられそうなので始末が悪い。

 しかし、毒は使い方により薬になります。根茎や根は水洗後、日
乾して、ロート根といい、腹痛などの鎮痛剤原料となりますが、劇
薬のため素人がみだりに用いるのは危険だといいます。

 ハシリドコロには、オメキグサのほか、ユキワリソウ、サワナス
などの方言があります。早春、残雪の谷間から雪を割って芽が出て
くるというのでユキワリソウ。また、この草はナス科です。沢すじ
に生えるナスなのでサワナスというのだそうです。日本特産。

 春早く湿地帯に紫黒色の芽を出し、草の丈は30〜60センチ、葉
は柔らかく大きく、とがった長楕円形です。

 4月ごろ、葉腋(わき)から柄を出して、その先に1個ずつ花をつ
けます。花は釣鐘状で内側は淡黄色、外側の上方は濃い紫紅色をお
びています。

 太い結節のある根茎が横に伸びて生長するので、生育が遅いうえ、
栽培がむずかしいため薬用資源として減っており、いまは外国から
の同属の植物を輸入しているとのこと。
・ナス科ハシリドコロ属の猛毒多年草
(085)

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春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(4)コイワザクラ

 花が紅紫色の5弁花で、花弁に切れ込みがあり、サクラによく似
たサクラソウ。その岩に生えるのがイワザワラです。また、その小
さいのがコイワザワラです。

 サクラソウは、江戸時代初期から盛んに栽培され、品種も増えて
います。

 一方、コイワザクラが「日本植物目録」に発表されたのは、江戸
時代も末期。フランス人の医者と植物学書によってでした。最近は、
こつそりととるフラチ者がいて、深山に行かないとなかなか見られ
ません。

 5月、丹沢塔ヶ岳の仏像の形をした巨岩が、地震で谷底へくずれ
落ちたという場所に行ってみました。ワッ。くずれ残った大岩にギ
ッシリしがみついたコイワザクラがミゴト、ミゴト。1週間後、ま
た行ってみたら、もう花はしぼんで残がい。はかない花の命でした。
来年もたのむ∃。
(086)

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春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(5)ミツバ

 日の当たらない林の中に、ミツバがヒョロヒョロと生えています。
ミツバというように葉柄の先に三つの葉がついています。

 そのミツバを摘んで帰って、お母さんに料理してもらう。汁の実、
天ぷら、ひたし物など、八百屋さんやスーパーで売っているものよ
り香りが強く、野性味があるゾ。

 ここで、野菜としてのミツバのウンチクを……。ミツバが畑に栽
培されたのは、江戸も中期の元禄時代(1688〜1704年)です。今
の東京・葛飾区と千葉市だとか。その後、葛飾区で起こった軟化栽
培が関東一円に広まり、1897年(明治三十年)代に関西へも伝わ
っていったのでした。

 ミツバは、アジア東部と、北アメリカの温帯に一種ずつ野生して
いますが、利用するのは中国と日本だけです。

・薬効 カゼのひきはじめに、ミツバを刻み、ヒネショウガをすり
おろしてすまし汁を作って飲む。しもやけ、凍傷に…熱湯に茎や葉
をきざんで入れ、患部に浸してよくマッサージする。
セリ科ミツバ属の多年草
(087)

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春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(6)アシ(ヨシ)

 湿地に行くと、アシが大群生しています。古い人は、日本のこと
を豊芦原瑞穂国(とよあしはらみずほのくに)といっていました。太
古の日本は、アシでおおわれていたのでしょう。瑞穂とは、みずみ
ずしい稲穂のことで、日本をほめていった言葉です。

 アシは、芦と書きますが「悪し」にも通じるというので、逆に
「善し」にしようと、いつのころか、ヨシとも呼ぶようになりま
した。

 おおきくなったアシは、すのこ、すだれ、よしずに編まれたり、
紙のパルプ、根は漢方薬に利用、また、若芽は食用にされるそうで
す。

 まだ成長しないアシの芽を引きぬいて、芯をとり、まきもどしま
す。もとの方から吹いて、「笛」にします。また、葉を4枚使っ
て「風車」を作ります。十文字に重ね、一枚ずつ折り返し、小枝で
留めてできあがりです。
(088-1)

 

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春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(7)ミズナラ

 クマザサが一面に生えた中に、大きなミズナラが天に枝をのばし
ています。ナラ材は、いろいろなものに利用されていますが、なか
でも有用とされるのがミズナラです。

 幹が30mにもなり、材は淡い褐色。ずい線が細かく並んでいて
美しく、家具、建築、手すり、階段、床板、ドアかあら船室用材、
机、テーブル、酒だる、楽器、下駄の歯まで間に合わせてくれます。

 ミズナラとは、木に水分を多く含み、燃えにくいところから付け
られた名。大木なので、オオナラとも呼ばれ、材面の美しさに北海
道から北アメリカへオーク材として輸出したことも。

 5月頃、新しい枝のもとからひものような雄花の穂をつり下げま
す。雌花は上部の葉腋につき、短く、秋になる果実は、おなじみの
ドングリです。 
・ブナ科コナラ屬の落葉高木
(088-2)

 

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春編(5月)・第7章「子ツバメの 数気になって 背のびする」

(8)ミズバショウ

 初夏の湿原、あふれるような雪どけの水の中でミズバショウが咲
いています。ミズバショウとは、夏になり花が終わるとバショウに
似た大きな葉が茂るためつけられた名前だそうです。

 ミズバショウはサトイモ科というだけあって、地下に太い肉質の
根茎をもっており、茎は生長しただけ地下に引きずり込まれるため、
芽はいつも地面直下にあるという不思議な植物です。

 春、葉がそろそろ展開を始めるころ、同時に葉腕から花茎が出て、
緑色の肉穂をつけます。花茎と花序は真っ白な仏縁苞に包まれてい
ます。水の中で群生する姿は美しく、尾瀬の「夏の思い出」にも歌
われています。花の時期は5〜7月。兵庫県以北の本州から北海道
に分布しています。
・サトイモ科ミズバショウ属の多年草
(088-3)

 

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第8章 一筆啓上 犬に吠えられて候

春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(1)ホオジロ

 「チイチョン、チー・ツク、チー・ツク、チイー……木のてっぺ
んでホオジロがさえずつています。山里の草の生えたあぜ逼を、歩
きながら聞きほれます。

 この辺はまだ放し飼いをしているのか、大きな犬が三匹怪しいヤ
ツだとだとほえかかってきました。それに驚いたのか、ホオジロは、
どこかへいってしまいました。

 ホオジロは、ほおが白いので、ホオジロ。いつも木のてっぺんに
いるのかと思ったら、えさを食へるときは、地面におりて虫や草の
実を食べるのだそうです。

 子どものころ、となりのおじさんが、鳥かごで、メジロやホオジ
ロ、シジュウカラなどを飼っていて、ホオジロがさえずると「ほら、
一筆啓上仕り候と聞こえるべ」と教えてくれました。昔の手紙は最
初に「一筆啓上仕り候」と書いたものだそうです。いまは、むやみ
に飼ってはいけません。
(089)

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春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(2)ノカンゾウ

 田のあぜやみぞのわきなど夏草が茂ったなかに、ノカンゾウが黄
赤色の花を咲かせよく目立っています。ノカンゾウはユリ科ワスレ
グサ属の多年草。有名なニッコウキスゲ(ゼンテイカ)に近い仲間
です。
 葉は広線形で幅2センチくらい、長さ50から70センチ。この葉
は煎じて膀胱炎(ルビ・ぼうこうえん)に効力があるという。

 夏、葉の間から70センチくらいの太くて強い花茎を出し、分岐
させた先端にそれぞれ上向きにラッパのような花をつけ、下から順
に咲きだします。直径7センチくらいのユリのような花です。この
花がまた一日花。昼間だけ咲き、夕方にはしぼんでしまうという潔
さ。
 こんな花を食べるというから人間はスゴイ。まだつぼみのうちに
ゆでて、酢じょうゆやマヨネーズをつけて食べると淡い甘味があり、
また色もよいので昔から親しまれてきたそうです。春、淡い緑色の
若芽を摘んで、ゆでて酢みそあえ、ごまあえ、汁の実にも利用します。

 ノカンゾウの花や葉を使って人形や指輪・水車・かたつむりなど
を作って遊びます。

 よく似たヤブカンゾウはノカンゾウより人間の集落近くにありま
す。
ユリ科ワスレグサ科の多年草
(090-1)

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春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(3)カズノコグサ

・穂がカズノコに似ている
・カエル釣り 穂の先だけ残してカエルに近づける
イネ科ミノゴメ属の1〜越年草
(090-2)

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春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(4)ウラシマソウ

 ♪ムカシ、ムカシ浦島が助けたカメに連れられてェ……。浦島太
郎が釣りザオを肩にカメの背に乗り竜宮城へまいります。

 そんな釣り糸をたらした浦島太郎にちなんだのがこのウラシマソ
ウ。仏炎苞の外にのびる長い糸が浦島太郎の釣り糸に似ているとい
うわけです。だから漢字で浦島草。

 湿った林ややぶなどに生え、ヘビの舌のような糸をふりあげた紫
色の花は、ふいに山中で見つけたりするとちょっとびっくりします。

 北海道の南部から本州、四国に分布し、地下の球茎にはたくさん
の子球がついて、茎のような柄のある葉を一枚出します。葉は鳥の
足のような形に切れ込んだ複葉で、高さは40〜60センチ。

 葉柄の基の方から出た花茎の先に紫褐色の仏炎苞に包まれた肉穂
花序から付属体を糸のように長く伸ばします。これが釣り糸です。
雌雄異株。

 果実は秋、太い花軸にぎっしりとついて赤く熟しよく目立ちます。
この種子は地面に落ちて次の春芽を出しますが、地上には葉を出さ
ず、地下に小さな球茎をつくるだけ。2年目になってやっと地上に
顔を出し、三小葉の葉が日の目を見るという変わった性質がありま
す。

 ウラシマソウは薬草でもあります。薬用部は根。生薬名を天南星
(てんなんしょう)といい、漢方では三生飲(さんしょういん)とし
てアオマムシグサと共に、気管支炎、偏(へん)桃炎、咽(いん)頭炎、
凍瘡(そう)、神経痛などに応用されます。

 民間療法では手足のマメに、水虫に、はれ物のちらし薬に、掻破
湿疹(かきこわし)に利用すると、江戸時代の本にも載っています。
子球で栄養繁殖を盛んにするため、一ヶ所にかたまって生えること
が多い。
サトイモ科テナンショウ属の多年草。
(091-1)

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春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(5)マムシグサ

・マムシグサとは不気味な名前だが、偽茎がマムシのようなまだら
模様になっているため。そのほかヘビノダイハチなんて名もある
・薬用 手足のマメ、気管支炎、神経痛、おできの吸い出しに…
サトイモ科テナンショウ属の多年草
(091-2)

 

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春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(6)ヤマツツジ
ヤマツツジのオレンジの花びら(花冠)は食べられます。歯ざわ
りもよく甘酸っぱい味がします。また雄しべ、雌しべをつけたまま
合弁の花冠を萼を取って、下から蜜をします。ほんのりと甘いです。
この花をボールに盛ってサラダにしても食べられます。

 ヤマツツジは山野に生え、高さ1〜4mになり、枝に褐色の毛が
生えています。葉は互生し楕円形からまたは卵状楕円形で長さ3、
4p。両面に褐色の荒い毛があります。夏秋葉は春葉より小さく、
冬を越します。4〜6月にオレンジ色の花を2〜3個咲かせます。
花冠は直径4〜5センチの漏斗形で5つに半開き。雄しべは5個あ
ります。

 どのツツジでも蜜は吸えますが、花びらが食べられるのはヤマツ
ツジだけ。レンゲツツジ(高原に多く、花の色が似ている)のよう
に毒のあるものもありますので注意が必要です。
・ツツジ科ツツジ属の半落葉低木
(091-3)

 

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春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(7)ライラック

 日本名でムラサキハシドイ。この名は、知らなくても英名のライ
ラックや、フランス名のリラといえば知らない人はいないくらいす
でにおなじみです。北海道は札幌の花になっています。

 バルカン半島中部およびクリミア半島原産で、モクセイ科ハシド
イ属に属する落葉低木です。ハシドイ属は世界に約30種,その大
部分は中国に自生しており、日本にもハシドイという仲間が山地に
野生しているそうです。

 古くからその花や香りが愛されていたらしく、イランの古い絵「雄
獅子と雌獅子」(1298年)にもライラックが描かれているそうです。
またトルストイの小説「復活」にも「窓の下の花盛りのライラック
の茂みから甲高いナイチンゲールの鳴き声が聞こえて来た」という
一説があります。

 ライラックは涼しい乾燥地帯を好み、日本では関西から西では正
常に育たないというからかなりの「気むずかし屋」です。

 かつてライラックの材は笛を作るのに使われたので、分類の属名
シリガはギリシャ語の「笛」という意味だそうです。花は紫色が普
通ですが、品種によっては白、赤、青から八重咲きまであるそうで
す。
・モクセイ科ハシドイ屬の落葉低木
(091-4)

 

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春編(5月)・第8章「一筆啓上 犬に吠えられて候」

(8)レンゲツツジ

 花びらが食べられるヤマツツジがありますが、毒のあるツツジも
あります。レンゲツツジもその一つで、高原に多く生え、花の色が
ヤマツツジに似ていますが、牛や馬も毒があるのを知っているのか
食べないという。

 花が大きいのでオニツツジともいうそうです。だいたいツツジ科
の多くは有毒なジテルペン類化合物などを含んでいるのだそうで
す。そういえばツツジの葉や花には虫食いがないですねえ。

 ツツジとは、ツツジ科ツツジ属のうち、シャクナゲ類を除いた半
常緑性または落葉性のものの総称。
・ツツジ科ツツジ屬の落葉高木
(091-5)

 

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5月終わり