【クスリになる野菜・果物】第9章
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▼11月の野菜・果物
・(1)エノキダケ ・(2)カキチシャ(カッティングレタス) ・(3)カブ
・(4)カリフラワー(ハナヤサイ) ・(5)カリン ・(6)金時ニンジン
・(7)サツマイモ ・(8)サルシフィー(西洋ゴボウ・バラモンジン)
・(9)下仁田ネギ ・(10)ショクヨウギク(料理ギク)
・(11)ステムレタス(クキチシャ・茎レタス・チシャトウ) ・(12)ダイコン
・(13)ツワブキ ・(14)練馬ダイコン ・(15)ハクサイ ・(16)ヒノナ
・(17)ブロッコリー
・(18)フローレンスフェンネル(アマウイキョウ・イタリアウイキョウ)
・(19)宮重ダイコン ・(20)守口ダイコン ・(21)レタス ・(22)レンコン
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▼(1)エノキダケ(秋11月) エノキダケの栽培は戦前からあったというが、いまのような白 |
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▼(2)カキチシャ(カッティングレタス)(秋11月)
古代ギリシャやローマで利用されていた結球しないレタスが中
国へ渡ったのは7〜10世紀ごろという(結球する玉レタスが知
られるようになったのは16世紀になってから)。そこで茎レタス
(ステムレタス・クキチシャ)が生まれたという(このレタスが
中国から日本へ伝わり、カキチシャの名で栽培された)。
カキチシャはレタスの仲間でも茎が比較的太く長く、生長する
にしたがい、下葉から順にかき取って食用にします。クキチシャ、
チシャトウ、カッティングレタスなどともいいます。葉には苦味
があり、生食に向かないので一度ゆでて用います。
日本には古く渡来し「本草和名」(918年ころ)に「白苣、和
名知佐」と書かれています。これは現在のタマレタスが普及する
までは広く栽培されていました。葉は淡緑色のものが多いが赤紫
色の品種もあります。春にタネをまいて2〜3ヶ月後から収穫で
きます。
カキチシャの1種・ステムレタスは茎と葉を食用にします。カ
キチシャよりもさらに茎が太く、短い。茎の部分がよく発達する
性質を持ち、長さ30センチ以上、直径3センチにもなります。
葉は互生してやはり結球しません。セロリとレタス両方の用途
をもっています。茎が3、40センチに伸びたころ中ほどから下
の葉を落として収穫します。新鮮な若葉には甘みがあり、サラダ
に用いられます。茎はやわらかく多汁質でアスパラガスやウドに
似た風味があります。皮をむいて生あるいは湯を通してサラダ、
酢の物、炒め物、煮物などにして食べられます。
・キク科アキノノゲシ属の1年草………………………………………………………
▼(3)カブ(秋11月)
頭をふることを「かぶり」をふるといいます。カブは株に通じ、
根が塊になる……その形から頭にみたてたのだそうであります。
漢字で蕪、蕪菁と書き、カブラ、カブナとも呼んでいます。原
産はヨーロッパとシベリアの半温帯地方。中国へは約2000年
前に伝播。「斉民要術」(さいみんようじゅつ・530年ころの本)
にすでに栽培や利用法についてくわしく書かれているそうです。
話は「三国志」に移ります。蜀(しょく)の軍師・諸葛孔明が戦
陣を進めるごとにカブをつくらせ食糧の補いとしていたというは
なしがあります。そのため、カブは諸葛菜とも呼ばれ、古くは救
荒作物として重視されていました。
日本へはといいますと神話時代に渡来というから、よくわから
ない位に古いもの。ダイコンより前だそうであります。
「日本書紀」持統天皇の7年(639)に「天下にクワ、アサ、ナ
シ、クリ、カブなどの草木を植うる事を勧め、もって五穀を助け
しむ」と出ています。
平安時代の新撰字鏡(しんせんじきょう)や本草和名(ほんぞう
わみょう)には「阿お奈(あおな)」と書かれ、倭名類聚抄では蕪
菁、和名阿お奈、蕪菁根(かぶら)加布良(かぶら)となります。延
喜式には根、葉ともに漬けものに、種子も薬用にと記載。かなり
重要な野菜だったようです。
はじめは葉だけを食べていたカブも、その後、根も利用される
ようになり、それを特に据(すわ)り蕪(かぶ)といいました。
【効能】カブの葉にはカルシウム、鉄が比較的多く、ビタミンA
とCも富んでいます。内臓の働きをよくし、咳を止める。ビタミ
ンA,C、カルシウムの豊富なアルカリ性食品。
・アブラナ科アブラナ属の越年草………………………………………………………
▼(4)カリフラワー(ハナヤサイ)(秋11月)
ハナヤサイとも呼ばれるカリフラワーは、キャベツの変種で、
改良され、つくり出されたものだという。カリフラワーの名はコ
ウル・フラワー(キヤベツの花)からきています。
カリフラワーの原産地は、ヨーロッパ西岸地域で昔はとうの立
ったキャベツの花やつぼみをとって食べていたものらしい。紀元
前、6世紀ころ、花茎がが大きくなるものが現地で知られており、
これが発達してつぽみや花茎を専門に利用する野菜ができました。
花を食べるキャベツはローマ時代から栽培され、珍重された記
録があり、これがおそらくカリフラワーの祖先にあたるものらし
い。 その後イタリアで改良され、ブロッコリーができました。
カリフラワーはイギリスに渡って発達。18世紀以後各国で改良
され、いまのようにりっぱなものに。なかでもデンマークで特に
改良が進んだという。
日本には明治初年キャベツとともに導入。「舶来穀葉要覧」とい
う本には、花耶菜(やさい)、はぼたん、英名カウリフラワーとし
て七種の品種が載っています。しかし、種子を取るのがむずく一
般には普及せず。戦後になり、次第にに需要が増え始め、昭和3
0年ころから急に普及したものです。
・【効用】
ビタミンC,繊維が豊富で便秘、成人病の予防に効果あり。
・アブラナ科アブラナ属の多年草………………………………………………………
▼(5)カリン(秋11月)
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▼(6)金時ニンジン(秋11月)
金時ニンジンは、長さ30センチ位で長円錐形。色は濃厚色をし
ており、色はリコピンという成分が主力で、そのためビタミンA
効力は低いという。やわらかく甘味が強い。京ニンジン、大阪ニ
ンジンともいわれ、関西の代表的品種。
11月から来年の3月ごろまで多く出回ります。日本料理やお
せち料理に用いられます。
若葉もやわらかく、風味があるので、葉ニンジンとして、ゆで
てゴマ和えなどにして食用されます。(「新・食品事典・野菜」)。
オランダの改良種は全世界に広まり中国にも伝わりました。中
国では根の長いものが好まれ、ここでも改良された長根種が日本
に導入され、これがのちの東京の滝野川ニンジン、大阪の金時ニ
ンジンに発展しました(『世界の植物』)。
東京の滝野川ニンジンはいまではほとんど西洋ニンジンに置き
換えられたが、関西ではこの金時ニンジンに以前強い嗜好がもた
れているようです。これは夏蒔き種で、春にまくとトウが立って
つくられない。
そのため初冬から春までしか出荷されない。金時ニンジンの特
殊な紅さは、中国にもこのような濃紅から紫紅色の長ニンジンが
作られている。普通のニンジンのようなカロチンも含まれている
が、それよりもトマトの赤色のもとと同じリコピンの方が多く含
まれているためにあのような鮮やかな紫紅色をしているのだとい
う。
これはプロビタミンAとして働かないので、普通のニンジンよ
り金時はAの含量が低いことになるが栄養価値がないというほど
のものではないという。(『果物と野菜の四季』)。
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▼(7)サツマイモ(秋11月)
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▼(8)サルシフィー(西洋ゴボウ・バラモンジン)(秋11月)
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▼(9)下仁田ネギ(秋11月) 群馬県下仁田地方特産のその名も高い一本ネギ。太くてずんぐ りした特異な形と、肉質が軟らかく風味がよいことで知られてい ます。来歴ははっきりしませんが、長野県に近い下仁田の天川地 区で200年以上昔、佐藤なにがしという老人によって育成。幕 府や宮廷に献上されていたことから「殿様ネギ」、「献上ネギ」の 名もありました。 明治4年、東京で開かれた万国博覧会に出品して一般に知られ るようになり、産地の名から下仁田ネギと呼ばれるようになった という。
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▼(10)ショクヨウギク(料理ギク)(秋11月) キクの品種のうち、花弁の苦味の少なく香りや歯ざわりのよい もので、料理ギク、甘ギクとも呼ばれます。 品種は、青森、八戸市、三戸郡が主産地の阿房宮(あぼうきゅ ・「八重大輪の黄ギク・香りと甘味がある」)、名取川、紫紅色の八 重咲きの青あらし、うまいので「もってのほか」の名がある延命 楽(えんめいらく・「淡紅紫色の八重咲き、山形県、新潟県で栽 培」)、秋田県大館付近でとれる秋田白菊(白い花弁の大輪)、秋 田県湯沢市の湯沢夏菊などがあります。 食用ギクは、大輪の花弁はバラバラにはずし、小さいものはそ のまま熱湯でゆで調理します。ひたし物、酢の物、和え物に利用。 生の花や葉はてんぷらにもします。葉は食用ギク以外でも可。
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▼(11)ステムレタス(クキチシャ・茎レタス)(秋11月) ステムレタスはカキチシャの一種で中国原産の茎と葉を食用に します。古代ギリシャやローマで利用されていた結球しないレタ スが中国へ渡ったのは7〜10世紀ごろ。そこで茎レタス(ステ ムレタス)が生まれたという(このレタスが中国から日本へ伝わ り、カキチシャの名で栽培された)。 ステムレタスはカキチシャよりも茎が太く短い。茎の部分がよ く発達する性質を持ち、長さ30センチ以上、直径3センチにも なります。葉は互生して結球しません。セロリとレタス両方の用 途をもっています。茎が3、40センチに伸びたころ中ほどから 下の葉を落として収穫します。新鮮な若葉には甘みがあり、サラ ダに用いられます。茎はやわらかく多汁質でアスパラガスやウド に似た風味があります。皮をむいて生あるいは湯を通してサラダ、 酢の物、炒め物、煮物などにして食べられます。 これと似たものにカキチシャがあります。カキチシャはレタス の仲間で茎が太く長く、生長するにしたがい、下葉から順にかき 取って食用にします。クキチシャ、チシャトウ、カッティングレ タスなどともいい、葉には苦味があり、生食に向かないので一度 ゆでて用います。
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▼(12)ダイコン(秋11月) ダイコンおろしにふろふきダイコン、おでんにたくあん、切り 干しダイコン、なます、はりはりづけ、あの「おしん」さんで有 名なダイコン飯。生食に煮色、切り干し、塩漬け、みそづけとダ イコンの調理法をあげたらキリがありません。 古名を「おおね」。漢字で大根、ナルホド。そのほかねじろ、か らもの、すずしろ……。異名は戸類語辞典を調べてみたら、ある わ、あるわ、秦松(しんしょう)、楚菘(そしょう)、蘿蔔(らふ く)……などナドエンエンと17もならんでおります。とてもワタ シなんぞの脳ミソにおさまるかずではありません。ことほどかよ うにダイコンは日本人の生活にとけこんでいるのでございます。 学術的にいうならば、ケシ目アブラナ科の越年草本。原産地は コーカサスからギリシャにいたる地中海沿岸とも中央アジアだと もその他いろいろ。日本のダイコンはヨーロッパ原産でハツカダ イコンが原種とする説(牧野富太郎)、いやいや日本のダイコンは ヨーロッパのとは別の原種だとする説(ベイリー)、ハツカダイコ ンは中央アジア以西だ(熊沢三郎)などあって諸説フンプン、な にがなんだかなのであります。 ダイコンに関する最古の記録は、紀元前五世紀のギリシャの史 家ヘロドトスのもの。ピラミッド建設に使われたどれいたちに食 べさせたダイコンとタマネギの費用について書いております。ピ ラミッドは “ダイコン力(ぢから)でできたのです。
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▼(13)ツワブキ(秋11月) 若い葉柄をフキと同じように皮をむいてから煮てアク抜きし、 煮つけとし、またキャラブキなどに利用します。 ツワブキは日本原産の多年草。葉がいつも青く、花の少ない冬 に黄色の美しい花を咲かせ、観賞用に庭にも植えられ、花が舌状 花だけのヤエツワブキや葉の縁がちぢれたシガミツワブキ(ボタ ンツワブキ)、葉に黄色の紋があるキモンツワブキなどの品種があ り、ヨーロッパやアメリカなどにも持ち込まれています。 ツワブキとはツヤのあるフキのことで、この大きな葉にはタン ニンが含まれており、細胞を引きしめ、皮膚の炎症をやわらげて くれるます。また葉緑素が細菌を追い払い、皮膚の損傷部を保護 する作用があるという。 漢方や製薬の原料としては使われないけれども、いろいろな民 間療法に利用されます。
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▼(14)練馬ダイコン(秋11月) かつて東京練馬を中心に栽培された練馬ダイコン。神奈川県三 浦半島に移植されたいまもその名は全国的に有名です。昔から優 秀性がかわれ、元禄時代には会津地方で栽培、江戸時代後期には 青森や北海道でも作られた。 五代将軍徳川綱吉が、まだ館林城主で右馬頭(うまのかみ)だ ったころ、持病の脚気を占ったところ城の北西方向の"馬"の字の つく土地に移住せよとでた。早速下練馬村に移り療養したところ、 たちまち治ったという。 そのとき、綱吉が食べるため尾張から宮重ダイコンのたねを取 り寄せ栽培させました。これが地味にあったのか、長さ、1、2メー トル、11キロものでっかいダイコンができた。綱吉が館林城に帰 ったあとも、地元の大木金兵衛にダイコンの献上を命じたという。
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▼(15)ハクサイ(秋11月) ハクサイは漢字で白菜。文字通り白い野菜であります。戦前か らほかの野菜にくらべ、生産量がダントツだったため、ちょっと 目には日本原産のように思えますが、どうしてどうして。最初に 日本に入ってきたのは1868(慶応2)年と比較的新しいので あります。 その後博物学者の田中義男が再導入して試作。ああだ、こうだ と手をかけましたが結局、うまくいかなかったという。 ハクサイの原産地は東南アジアだとも、地中海沿岸のナタネが 原種だとの説がありますが、結球形のハクサイは中国東北部原産 とするのが一般的。 中国では、西暦600年前後からハクサイが栽培されていて、 「清異録」(陶穀著・11世紀)にはすでに結球形について記載 されているという。 1875(明治8)年、東京の博物館に中国からハクサイ3株 が出品。そのうち2株が愛知県の試作所に移された。それをきっ かけにハクサイ栽培の研究が始まったという。 そんなこんなで日本で生産が安定してきたのは大正中期。当時 はハクサイの結球のさせかたが大問題。結球すれば「とう」が立 たず種子がとれない。逆に「とう」が立って種子がとれるものは、 いくら縄で巻いてやっても結球しないとくる。
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▼(16)ヒノナ(秋11月) ヒノナは、緋の菜、赤菜ともいうカブの一種。一見小さなダイ コンのようですがカブの仲間。首の部分が、地上に突き出てて、 その部分が紫赤色で下の方は白い。葉も紫赤色を帯びています。 また、根の内部は白いが、心部から放射状に紅色の線があって 輪切りにすると一段と美しい。一名緋の菜、赤菜というのはこれ から来ています。 ヒノナ(日野菜)は、その名前が示すように、滋賀県蒲生郡日 野町を中心に栽培されており、小形で種子をまいてから35〜40日 で収穫できるので家庭菜園にもよいという。 ただ、アクが強いので煮食にはむかず、もっぱら塩漬け、味噌 漬け用です。
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▼(17)ブロッコリー(秋11月)
ブロッコリーの名は、ラテン語の「枝」からきたものといわれ、
ヨーロッパの野生のキャベツが栽培化されたものらしく、カリフラ
ワー(ハナヤサイ)の原種とされています。原産地は西地中海沿岸
でクレタ島ともいわれています。
ブロッコリーは、茎の先端にできるつぼみ(頂花蕾)と、茎につ
いている葉のわき芽がのびてできるつぼみ(腋花蕾)を食用にしま
す。子持ち野菜とも呼ばれるのは、腋花蕾が子どものように見える
からという。このつぼみが大きくなり、黄色い花が咲きはじめると
味や香りが落ちてしまいます。
そもそも花を食べる野菜(キャベツ類)は、ローマ時代から利用
されていたらしい。六世紀ころにはすでにふんだんに食べられて、
健康に良いというので医者がいらなかったとか、この野菜を祭る祠
まであったとの記録があります。
ブロッコリーがアメリカに伝わったのは19世紀。イタリア人に
よって持ち込まれましたが一般化したのは第二次世界大戦中とい
う。
日本へは明治初年に導入されたが、普及せず、京浜地区で細々と
作られていたという。その後第二次大戦前でも、ブロッコリーとい
えばカリフラワー(ハナヤサイ)に似た白い大きなつぼみの、キダ
チ(木立)ハナヤサイ(カリフラワー・ブロッコリー)のことだっ
たといいます。
ブロッコリーが一般に普及したのは、せいぜい1965(昭和4
0)年代になってから。カリフラワーとともに次第に需要がのびて
いきました。
【効能】ブロッコリーは、カロチン(ビタミンA効力)が多く、ビ
タミンCも豊富で、カリフラワーとは比較にならない量という。無
機質では鉄分も多く、シミ、そばかす、肌荒れの予防になり、鉄分
は貧血、高血圧に有効という。
・アブラナ科アブラナ属の1、2年草………………………………………………………
▼(18)フローレンスフェンネル(イタリアウイキョウ)(秋11月) 何やらむつかしい名前ですがアマウイキョウとかイタリアウイキ ョウとも呼ばれるウイキョウの仲間。南ヨーロッパ原産でウイキョ ウよりやや小形。日本には明治の中ごろに移入されたという。地面 の際から互い違いに出る葉の葉柄が詰まって重なり合います。 それを土よせし軟白すると肥えて厚くなって鶏の卵くらいに大き くなります。これは煮食や生食もでき、イタリア料理で利用します。 葉はハーブに用います。 果実はウイキョウより大形で香りと甘味があってキャンディーや リキュールの香辛料にに利用、またウイキョウ油をとります。 4月ごろ日当たりと水はけのよいところに種まきし、翌年の夏開 花結実します。耐寒性はやや弱いという。
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▼(19)宮重ダイコン(秋11月) 愛知県西春日井郡の宮重が発祥地。成長するにしたがい根が地 中からとびだし、上部が青くなるので青首ダイコンともいうが白 いものもあります。 宮重ダイコンは、東北、北海道、北陸、九州など全国各地で栽 培され尾張ダイコンとして名をあげました。歴史も古く、平安時 代の『延喜式』(920年)にも出てくるほどです。 宝永年間(1704〜11)、遊猟中の尾張の殿さまが、西春日 井郡春日井村宮重の庄屋の近藤庄右衛門の家に昼食に立ちより、 その時出されたダイコンに大満足。毎年献上を命じたというエピ ソードもあります。 根の長さ30〜40センチ。円筒形で太さ形が整っていて、先 端が急に細くなります。肉質がやわらかく甘味も強い。
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▼(20)守口ダイコン(秋11月) いろいろな形のダイコンがあるなかで、細長いことでは世界一 の守口ダイコン。太さわずか2センチ位なのに長さは普通1.2メー トルもあり、なかには1.7メートルを超えるものもあるという。 1956(昭和31)年、日本で開かれた国際遺伝学会議に巨大な桜 島ダイコンとともに展示され、世界の遺伝学者のキモを抜かせた エピソードもあります。 江戸中期の『和漢三才図会』に長さ60センチ、『本草図譜』に 90センチ位とあり、この100年ばかりのうちに30センチものびた という。ほとんどが粕漬けにしたものを樽のなかにグルグル巻い て詰め、守口漬けにします。 栽培が盛んになったのは明治に入ってからといい、もと大阪の 守口市付近が産地だったがいまでは岐阜市を中心に栽培されてい ます。
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▼(21)レタス(秋11月) チシャやチサではわからなくても、レタスといえば知らない人 はいません。ひとくちにレタスといっても玉レタス、コスレタス、 バターヘッドなどの結球種と、リーフレタス(葉レタス)、アス パラガスレタス(茎を食べる)などの結球しない種類があります。 レタスはチシャ(チサ)の一種です。 レタスの原産地はヨーロッパ温帯地方から西アジア、地中海あ たり。すでに古代ギリシャ、ローマ時代から栽培され主要野菜と して用いられていたという。見たわけではないけれど……。 当時のレタスはみな不結球種で、いまのような玉レタスは16 世紀になってやっと記録が出てきます。そしてヨーロッパ全土に 広まり、改良されアメリカへ渡ります。
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▼(22)レンコン(秋11月) レンコンは蓮根で、文字どおりハスの根っこのこと。昔はハス をハチスといいました。果実の入った花托(蓮房)が蜂の巣に似 ているからです。そのハチスのチが略されていつの間にかハスに。 大賀博士の古代ハスから、なんとなく古い時代を連想させるが、 そのとおり、インドでは2500年前に「白いハス」の記録があ り、さらに5000年前のものといわれるハスの女神像もみつか っています。 インドでは元来、ハスの花をめでたい花としていました。それ が仏教にとり入れられ、仏教と共に、中国経由で伝来してくると、 いつしか仏さまの花、仏壇の花になってしまいました。
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第9章(11月)終わり
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