【クスリになる野菜・果物】第1章

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▼3月の野菜・果物
 ・(1)アシタバ ・(2)イヨカン ・(3)ウグイスナ ・(4)エシャロット
 ・(5)オレンジ(スィートオレンジ) ・(6)カキナ ・(7)カツオナ
 ・(8)亀戸ダイコン ・(9)カラシナ ・(10)カルドン ・(11)キニラ
 ・(12)小カブ(コカブ) ・(13)サヤエンドウ ・(14)サラダナ
 ・(15)セロリ ・(16)タアサイ(キサラギナ) ・(17)豆苗 ・(18)ナバナ
 ・(19)二年子ダイコン ・(20)ハーブ ・(21)ハッサク ・(22)マナ
 ・(23)ミイケタカナ ・(24)レモン ・(25)ワケギ

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(1)アシタバ(春3月)

 アシタバは漢字で明日葉。きょう摘んでも、明日にはまたすぐ若
葉が出てくるほど草の勢いが強く、食べると非常に精がつくといわ
れます。

 日本の中南部の海岸、とくに房総から三浦半島、紀伊半島までの
太平洋の海岸、伊豆七島、小笠原に分布。八丈島に多いところから
ハチジョウソウの名もありまた、アシタグサともよばれます。

 茎の高さは1mくらい。茎や葉柄が太く、切ると切り口から黄色
い汁がにじみ出す特徴があります。葉は大きく光沢があり、ウドや
ブドウに似ています。葉は1、2回3出葉の複葉(茎から3枚の小
葉、またはもう1度3枝に分かれた先に3枚の小葉をつける)。

 8月から9月ごろ大きな笠のような花穂を出して、淡い黄色の小
さな花をいっぱい咲かせます。花のあと長楕円形の翼のある果実を
つけます。

 アシタバは、八丈島や伊豆七島では乳牛のえさに利用、これを食
べさせると乳質がよくなり、また乳量も増えるという。

 この草はシシウド属(アンゲリカ属)に属し、アンゲリカはアンジェ
ルス(エンジェルスー天使)で、同属に強心剤として薬効のあるもの
があり、死者をよみがえらせるところからついた名前だという。利尿、
緩下、催眠などにも薬効があるという。



 この若葉は緑黄色野菜のひとつで、ビタミンA効力のカロチンが
多く、またビタミンCや鉄分も多い。冬も枯れず一年中とれるが春
から夏にかけてとくに多く採取されます。伊豆七島ではつくだ煮、
漬け物としてみやげ物に売り出しています。

 種子からでも簡単に作れ栽培もやさしいという。若葉をゆでてお
浸しに、ゴマ和え、酢の物、味噌和えなどに利用します。
・セリ科シシウド属の多年草

・薬効・繁殖力が強く、強壮作用があるとされています。若葉は緑
黄色野菜のひとつ。

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(2)イヨカン(春3月)

 イヨカン(伊予柑)はミカンと同じように、ビタミンC,カリウ
ムが豊富です。肺を潤し、咳を止める作用があるといいます。

 伊予(いまの愛媛県)という名はついていますが、出身は長門(な
がと)国(長州・いまの山口県)だそうです。1889(明治19)年、
山口県萩市の中村正路園という農園でミカン類とオレンジ類の自然
交雑による新種が生えているのをを発見しました。1982(明治25)
年、「穴戸(あなと)ミカン」として発表します。穴戸は長門国の
旧称。

 その発表前の1889年、かんきつ類を視察に来ていた愛媛県松山
市道後温泉の三好保徳という人がまだ名前もないこの新種に注目。
苗木を手に入れて持ち帰り、栽培してみるとあざやかな赤みがかっ
た色に、舌にとろっとする甘味のミカンがとれた。「これはいける
ッ」と思わずひざを打ったという。

 そこで彼は栽培・普及にこれ努めた結果、この苗木が瀬戸内海に
面した土地になじみ、急速に普及していきました。そして昭和5
(1930)年にイヨカンと命名、いよいよ栽培が盛んになります。そ
の結果、次第に穴戸ミカンの影は薄くなります。

 穴戸ミカンはその後も改良が続きます。1950(昭和25)年にな
り、同じ松山市の三島健一という人の畑で早熟で果肉がよくしまっ
ているイヨカン(三島イヨカン)を発見。



 また昭和30年(1955)松山市宮内義正園でも枝変わりのイヨカ
ンを発見。育成したところ、果実をつける年齢が早く、豊産性でそ
の上種子の数も少なく、甘味が強い優良種ができました。1966(昭
和41)年、宮内イヨカンと命名され、種苗登録されています。

 かつてはイヨポカン、イヨミカンなどと呼ばれていたが、昭和5
年2月、河野角太郎という人の提案で「イヨカン」と命名されまし
た。果肉は濃黄赤色で多汁。甘味が強く味がよくもっぱら生食用。
愛媛県のほか静岡、山口、和歌山県でも栽培しています。

・【薬効】
ミカンと同じように、ビタミンC,カリウムが豊富。肺を潤して咳
を止める作用があるそうです。
・ミカン科ミカン属の常緑低木

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(3)ウグイスナ(春3月)

 ウグイスナは、コマツナの一種で春に出荷されるもの。ウグイ
スが鳴きだすころとれるので名前がついたという。コマツナは、
年内からとれる早生、「よしず」の霜除けの下でとれる中生、春に
なってからとれる晩生のウグイスナがあります。晩生ほど菜の色
が濃く、葉に丸みがあって、トウの立つのが遅くなります。

 初春にまいた種から葉が3〜4枚出たころつまみ菜として収穫
します。ウグイスナの名前は昔からあって、室町時代末期の永禄
2年(1559)4月に降ったヒョウのため、「ウグイスナ」が大きな
被害を受けたとの記録が残っていると聞きます。

 東京都江戸川区中央の香取神社に「小松菜ゆかりの里」の石碑
があります。
・アブラナ科アブラナ属の2年草



【効能】鉄分・ビタミンA、C、カルシウムが豊富なアルカリ性
食品。便秘に効ありとのことです。

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(4)エシャロット(春3月)

 エシャロットというのはフランス名で、英名はシャロットだと
いう。そのフランス名エシャロットがスーパーや八百屋さんで売
っています。味噌をつけた生食は酒の肴に結構いけます。

 ところが、このエシャロットは、同属のラッキョウを軟白した
もので、静岡県が栽培地だという。一時はこれをエシャラッキョ
ウともいっていました。

 それでは「ホントウ」のエシャロットとはどんなものか。エシ
ャロットは、約2000年前タマネギから変化してできたといわれ、
原産地などは一切不明の霧のなか。

 古くからヨーロッパで栽培され、とくに香辛料としてフランス
料理にもよく使われています。オニオン、ガーリックのような刺
激臭をもっていて、鱗茎をすりおろしてソースに入れたりします。
春の葉もやわらかく、生食、煮物にも用いられます。



 エシャロットは、ネギに似た形ですが、ずっと小形。高さは30
センチ。地下茎は肥大して鱗茎になっています。夏は葉を枯らし
て休眠し、秋からまた茂りはじめ、次の年の初夏に白いネギ坊主
のような花を咲かせますが種子はできないといいます。
・ユリ科ネギ属の多年草、タマネギの一種の小形で株立ちになる
もの

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(5)オレンジ(スィートオレンジ)(春3月)

 オレンジといえば、日本ではスィートオレンジのこと。甘いの
でアマダイダイ(甘橙)ともいっています。インド原産で、古い
時代に中国に、そして15世紀にはヨーロッへ渡り、地中海地域で
栽培され、次第に世界に広まっていったという。

その間、次つぎに新しい品種が生まれ、多くの系統に分化してい
きました。

 オレンジは、品種が多く、大きくわけると普通系オレンジ、ネ
ーブル系、ブラッド(血ミカン)、無酸オレンジの4系統がありま
す。

 普通系(ヘソがない)・バレンシア種 明治に日本にも入ったが、
耐寒性が弱く、栽培はわずか。輸入オレンジはたいがいがこれ。・
福原オレンジ 日本で栽培。バレンシア種に似ているが、すこし
皮厚。果肉はやわらかく、甘味酸味ともに強い。


 


 ネーブル系 ネーブル(ヘソ)がある。国内で栽培。品種のワ
シントンネーブルは明治22年(1889)に導入。昭和に入り
各地で優良枝変わり品種が発見された。愛媛県の鵜久森(うくも
り)ネーブル、清家ネーブル、広島県の丹下、福岡県の吉田、静
岡県の森田、鈴木ネーブルなど。

 ほかにブラッドオレンジ 果肉が赤紫色。無酸オレンジなどが
あります。
・ミカン科ミカン属の常緑小高木

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(6)カキナ(春3月)

 カキナは寒さには強い野菜。だれにでも好まれる青菜であり、
緑黄野菜です。収穫は三月上旬からはじまり、ちょうど野菜の端
境期にあたることから重宝される野菜です。

 さっばりした味は早春の食事を飾ります。また割り合い長い間
収穫でき、摘んでもまた芽がどんどん出てくるので、近くの菜園
に栽培しておくと大変便利。

 品種は「宮内菜」が多く作られ、生育が旺盛で茎立ちがよく、
また甘味と風味に富んでいて、葉柄が長いため収穫しやすい品種
です。



 ビタミン類は野菜の中でも最も多いグループに属します。ビタ
ミンCのほかにビタミンA、食物繊維が多く含まれます。お浸し、
ゴマ和え、油いため、汁の実、浅漬けなど多様です。
・アブラナ科アブラナ属の2年草

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(7)カツオナ(春3月)

 漢字で書くと鰹菜。煮野菜や汁の実に使うと、かつお節のだし
を入れたような味がでるのが名前の由来。

 カラシナの類とされ、そのうちの九州などで栽培の多い、タカ
ナから分化したものと考えられます。

 しかし、タカナ類としてはやや小型で葉は大きく広く、ちり
めん状で緑色。タカナのように辛味がなく煮物にも利用されてい
ます。



 成長につれて少しずつ節間がのび、下葉からかきとって利用し
ます。漬け物、和え物にも。

 大正10年ころ、福岡市箱崎町の木村半治郎というお人が、従
来のものの中から葉が大きく中央脈の広いものを選び出し、近辺
に広めたのが近種の「広茎かつお菜」だといいます。
・アブラナ科アブラナ属

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(8)亀戸ダイコン(春3月)

 根の肩が丸くて太く、急に細くなる円錐形で小形のダイコン。
「亀戸ダイコン」。東京付近で栽培されます。3月から4月にか
けて出荷され、4月になってからの晩生がいちばん味がいいという。

 落語などでもよくいうように、かつてはダイコンを「ダイゴ」と
か「デエゴ」などといいました。昔、東京の南葛飾郡亀戸村(い
まの墨田亀戸)には、名物の於多福(おたふく)ダイゴがありま
した。これが一名、カメイドダイゴ(亀戸ダイコン)として有名
になったという。



 肉質がやわらかく根や葉をいっしょに刻んで一夜漬けのしたり、
煮もの、おろしダイコンなどに利用します。葉の濃緑と純白な軸
との対比の鮮やかです。

・アブラナ科ダイコン属の越年草草本

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(9)カラシナ(春3月)

 葉が辛いのでカラシナ(芥菜)で、黄色い種子を粉末にしたもの
が、おでんや納豆に添える「からし」です。種子には薬効があり、
ギリシャ時代にはヘビにかまれたり、サソリに刺されたときにこれ
を酢でねって軟膏にし、傷口に貼ったといいます。

 また、かつては粉末を塩水でこねて泥状にして皮膚にぬり、気管
支炎、肺炎、神経痛の治療に用いたこともあります。カラシナは一
名雀芥(チュエチェ)ともいうそうです。スズメがこの実を食べる
と興奮してはねまわるという。(単に辛くてはねているのとちがう
かなあ)

 原産地は、あのイラク南部からアラビア半島あたり。そこから古
ーい時代、シルクロードを通り、インドや中国に導入されたという
から、大変な旅人(菜)なのであります。

 そこでいろいろな形に分化し、いまでは中国を中心にアジア南部
で重要な野菜になっています。中国での栽培は古く、紀元前5、60
年の本「礼記」(らいき)に書かれているという。



 日本には弥生時代、中国を経由して入ってきたというから古い。
やはり中国に関係があり、カラシナはもしかしてカラ(唐)とシナ
(支那)のこと??ナンちゃって。

 日本でも平安時代から記録があり、日本最古の本草書「本草和名」
(918年・深江輔仁著)や、律令施行の細則を記した「延喜式」(92
7年)にも出ています。

 種子からからしをとり、春先にとうを食べるカラシナに対し、そ
の一種茎葉用にタカナがあります。タカナは高菜で、カラシナにく
らべ背が高いためについた名前。

 日本では、古くはカラシナとタカナに対する日本名と中国名との
対照がはっきりしてはいませんでしたが、先の「本草和名」には「草
冠に松」という字でタカナが区別されているという。

 また古くはカラシナは「加良之(からし)」、タカナは「太加奈(た
かな)」とも書かれました。変種にはタカナのほかに、オオガラシ、
チリメンナなどがあります。

【効能】体を温め食欲増進。からし粉はリウマチ、神経痛、痛風、
肩こり、肺炎、気管支炎、のどの痛み、扁桃腺炎などに。肉の臭み
を消す作用があるので肉料理に使用。
・アブラナ科アブラナ属の1、2年草

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(10)カルドン(春3月)

 カルドンとは聞き慣れない名前です。これはアザミの一種で、ア
ーティチョークはカルドンから改良されたといわれます。

 アーティチョークは花の蕾がついた茎の先端のふくらんだ総苞片
のもとのところをゆでて食べますが、カルドンは主にとう立ちしな
い前の葉柄を軟白して野菜として食べます。



 カルドンは、地中海沿岸とカナリア諸島の荒れ地に野生。長さ50
センチにもなる光沢のある葉が群がってついているそうです。

 ヨーロッパでは紀元前から食用とされ、いまではアメリカでも
野生化しているという。

 栽培は春に播種、土よせして軟白したり、10月ごろ葉柄をわら
などでしばり、包んで軟白して半月後収穫するそうです。
・キク科チョウセンアザミ属の多年草。

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(11)キニラ(春3月)

 キニラは漢字で黄韮。農林省の統一名称になっています。薬用
のニラ株を養成、日光をさえぎって軟化栽培したもの。ニラモヤ
シとも呼ばれます。葉が黄色なため黄ニラ。黄金のように美しい
というのでコガネニラの別名もあります。

 キニラは、中国では韮黄と書き「ジオウホワン」。日本と文字を
入れ替えただけです。現地でも重要な野菜になっているとか。原
産地の中国から導入、古くから岡山県で栽培されていたという。

 形は普通のニラと同じで、特有の香りはあるもの、軟らかく甘
みもあり、アクも少ない。ニラと同じように調理するが、炒めす
ぎないよう。豚肉と炒めたり、春巻き、ワンタンの具、スープの
実、ゴマ和えなどに利用されます。



 中国では、キニラと豚肉の細切りと炒めて「春餅」(チュンビン
・小麦粉をこねて薄く焼いたもの)で包んだものを初春のご馳走
にするそうです。

 ニラにはその他、とう立ちさせて若いつぼみと茎を食用にする
花ニラもあり、軟らかくかすかな甘みが喜ばれています。
・ユリ科ネギ属のニラを軟化栽培したもの

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(12)小カブ(コカブ)(春3月)

 カブがまだ十分成長する前、根の直径が4〜5センチくらいの
小さな時に収穫し、葉とともに出荷します。葉も一緒に食べるの
でほかのカブより栄養価が高い。

 小カブは大きくなる前に収穫するため、出荷までの日にちが短
く、早いものは30日くらい。小カブは一年中出回っていますが、
本当の味は2月下旬から3月にかけての十分寒さにあったものが
よいという。



 東京の金町小カブ、新潟の寄居カブ、大阪の天王寺カブ、奈良
の今市カブなどが有名です。

 漬け物のほか、かぶ葉ともにみそ汁やケンチンの実、煮浸しな
どに利用されます。またぬかみそに漬けると甘味があって齒ざわ
りがやわらかく辛みも幾分加わり美味。葉も一緒に漬けるとやわ
らかく味も最高です。
・アブラナ科アブラナ属の野菜

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(13)サヤエンドウ(春3月)

 エンドウの内、若い莢ごと食べるのがサヤエンドウで、莢をむ
いてまだやわらかい未熟な豆がグリーンピース、莢と未熟な豆を
いっしょに食べるのがスナップエンドウ、また若い葉とつるを食
べるのが豆苗、さらに熟した豆を乾燥させて食べるエンドウマメ
があります。ただエンドウマメは野菜ではなく穀物として扱われ
ます。

また、サヤエンドウには、莢が小さい種類の上品な感じのするキ
ヌサヤエンドウと、莢の大きい種類のフランス大サヤ、オランダ
などの大サヤエンドウがあります。

 フランス大サヤはフランスから、オランダはアメリカまたはカ
ナダから導入されたもの。サヤエンドウとして代表的なものはキ
ヌサヤとオランダです。

 オランダはオランダサヤエンドウ、略してオランダザヤとかオ
ランダ豆と呼ばれ、莢の長さが10センチ前後で幅も広いのに対
して、キヌサヤは草丈が矮小で、莢も4から5センチと小さい。

 そのうちキヌサヤエンドウは、絹莢豌豆と書き、その名は新鮮
な莢をすり合わせると、絹さばきの時に似た音がするのでその名
があります。莢がやわらかく、戦前は冬でも暖かい伊豆半島で1
2月の内から出荷され、人気が高く高値で売れたので「成金豆」
の別名もあったという。

 品種は、伊豆半島で栽培される「伊豆赤花」、愛知県渥美半島で
作られる「渥美白花」のほか「三十日絹莢」、「四十日絹莢」など
があります。



 エンドウの原産地は、ヨーロッパ南部から地中海沿岸地域、カ
フカス(コーカサス)の南部、イランあたりらしい。日本には九
から10世紀にごろには伝来していたらしい。

 サヤエンドウは江戸時代に伝えられ、江戸時代後期天保3(1832)
年の「草木六部耕種法」(佐藤信淵著)の「需実」篇に記録があり
ます。その後明治時代以降、いろいろな新しい品種が欧米から導入
されました。

【効能】カロチン(ビタミンA効力)が多く、またビタミンB1、
B2、Cもあり、緑黄色野菜に属しています。整腸、健胃作用が
あり、胃腸の弱い人、下痢やおう吐しやすい人に適した野菜だそ
うです。
【選び方】
 選ぶときはサヤの緑があざやかなもの、また店の人に怒られる
かもしれないが、ふたつに折ったときポキッと勢いよく折れるも
のがよい。(原産地、来歴などは→エンドウマメを参照)
・マメ科エンドウ属の1、2年草

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(14)サラダナ(春3月)

 葉が柔らかく、サラダや料理のつけあわせとして利用されるそ
の名もサラダナ(サラダ菜)。レタスの一種です。

 サラダナはレタス類のなかのタマチシャのうち、バターヘッド
型のものをいい、葉を食べるとバターのような滑らかな感じがあ
ります。同じタイプにバターレタスという品種があります。

 またクリスヘッド形の玉レタス(ふつうにいうレタス)とは同系
のものだという。レタス類は中近東、小アジア原産といわれてい
ますが、タマチシャはヨーロッパ生まれだという。

葉は、緑色でふちにきざみがありません。結球種に属するため、最
後は結球しますが、その前本葉が14から15枚くらいで半結球の時、
出荷されてしまいます。

 サラダナが日本に入ってきたのは明治大正のころといいいます。
いまはレタス(ちしゃ)といえば玉レタスのことですが、戦前は
「ちしゃ」の代表は、サラダナが主だったこともあったという。



 ふつう、レタスは葉が淡い緑色なのに対し、サラダナは濃い緑
色のものが多く、とくに濃いものは黒葉といわれて喜ばれ、以前
は「江戸川黒葉ウエヤヘッド」という品種が、東京の江戸川区で多
く作られていました。その他淡鮮緑色のワイヤヘッドなどの品種
があります。

 1966(昭和41)年、農林省が名称登録した「岡山サラダ菜」
も黒葉を特長として売り出しています。

 タマレタスに比べカロチン(ビタミンA効力)、ビタミンCが
多いという。葉が濃緑色でつやがあり、葉の肉の厚いものがよい
といいます。サラダや料理のつけ合わせとして生食、また煮込み
ものに利用されます。

 主に都会の近郊で栽培され、苗床にタネをまき、本葉が3枚出
たころに畑に定植。ほとんど年中栽培できますが、冬季はビニー
ルトンネルやフレームで栽培されています。生食に合うよう改良
された作物です。

 生食に合うよう改良されたもの。鎮痛作用があり、イライラ感を
とり、不眠症などによいという。

【効能】鎮痛作用あり。イライラ感・不眠症
・キク科アキノゲシ属の1年草

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(15)セロリ(春3月)

 いまでは生食やサラダ、スープとおなじみのセロリも渡来当時
は独特の強い香りが日本人になじまず、普及しなかったという。

セロリはセルリ、オランダミツバ、キョマサニンジンなどの異名
もあるセリ科の1、2年草。ヨーロッパ原産とされ、ヨーロッパ
中部から南部、アフリカ、南アメリカ、西アジア、西インドとい
う広い地域に分布しています。原産はスウェーデンだとの説もあ
り。

セロリは古代ローマ、ギリシャ時代から整腸剤、強精剤など薬用
にされ、香ばしく、香気が酒の悪酔を防ぐなどともいわれ、盛ん
に食べられ、またミイラの首飾りとして装飾にも用いられていま
した。当時の名はセリノンだったが少しずつ変わりいまではセロ
リに。

中世まではもっぱら生食されていたセロリですが17世紀になって、
煮て調理するといっそう風味が増し、薬効も変わらないことがわ
かり、ますます利用されるようになります。野菜として栽培を始
めたのはフランスで、1623年ころから。そしてイギリス、オ
ランダ、イタリアへ伝わっていきます。(栽培はイタリアで始ま
ったとの説もあり)。



一方、東洋へは西アジア経由で中国に渡ります。7世紀というか
らかなり古い話ですが栽培は17世紀になってから。野生型に近
いものだったとか。

日本へは豊臣秀吉の朝鮮出兵(1592年)の時導入したのが最
初。加藤清正にちなんで「清正ニンジン」と呼んだという。その
後、オランダ人が長崎に西洋種を持ち込み「オランダミツバ」の
名がつきます。

明治初年(1868)、やっと日本でも栽培を始めるが、特有の香
りがどうも日本人に合わず、栽培は長野、静岡、愛知県内の特定
産地のみ。本格的に消費されるようになったのは第二次世界大戦
後。食生活の洋風化にともない、肉類の添え物に、また健康野菜
として消費は急上昇していくのでありました。

【効能】ビタミンA(カロチン)が多く含まれている野菜。高血
圧、頭痛、目まいに効果があり、整腸剤、強壮剤としても使用。
・セリ科セロリ属の1年または2年草

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(16)タアサイ(キサラギナ)(春3月)

 タアサイは中国江蘇省、上海などで多く栽培され、冬の間の野
菜のひとつになっているという。日本でもこの近縁種が戦前に導
入され、キサラギナ(如月菜)、ヒサゴナ(瓢児菜)、ちぢみユ
キナ(雪菜)の名で北関東、東北地方で冬菜として栽培されてい
ました。日中国交回復前後に再導入されたのがこのタアサイ。

 漢字でとう葉(とうは土偏に日の下に羽)と書き、「とう」は
つぶれたとかへこんだという意味だそうです。冬場は全体が扁平
に育つ特色があるからという。葉柄が長く、先端に近円形のサジ
のような葉身がつきます。葉は濃い緑色から暗緑色でしわがより
やや肉厚。分化する速度が早く、少し長く畑におけば葉数が数十
枚にもなりさかずき形の株になります。

 冬場は葉は放射状にビッシリ広がるが、気温が高いと葉が立ち
あがり、温度によって半立性になったりロゼット状になったりし
ます。一年中出回っているタアサイ。同じ品種なのに秋冬期とで
は形がちがうため、ちょっとまどいます。花芽は冬の低温時形成
され、春には淡黄色の十字花をつけます。



【効能】ビタミンA、Cや鉄分、ミネラルも多く、カロチンの含
有量はキャベツの100倍といわれています。
・アブラナ科アブラナ属の中国野菜

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(17)豆苗(春3月)

 エンドウの内、若い葉とつるを食べるのが豆苗です。春先から
初夏の生育旺盛時に、若茎葉をつみ取り乾燥して保存し、野菜の
不足時に湯で戻し利用にします。日本人の趣向にも合う品目です。

 中国では、豆苗用に小粒のエンドウで節間が短く茎葉のよく茂
る品種を用いているそうですが、わが国では専用品種が少ないの
で若莢用の品種でスナックエンドウ系を利用しています。



 作型は、9月から10月まきで春から収穫する型と、早春まき
で6月から7月に収穫する型があります。

 春まきは分けつが少なく密植するのがポイント。真夏の生育は
劣りますが、8月下旬から生育するので周年生産も可能です。
・マメ科のエンドウ属エンドウの若菜とつる。

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(18)ナバナ(春3月)

 アブラナ科の野菜の花のつぼみは、元来古くから各地で食用と
して利用されてはいました。なかでも房総の安房地方では、江戸
の昔からナタネのつぼみを食べていたといい、昭和20年ころから
は東京市場にも出荷しています。

 洋種ナタネも用いられてはいますが、多くは和種ナタネ。和種
ナタネは、明治以後油の収穫の多い西洋ナタネが導入されてから
は、油料作物としての価値はなくなってしまいましたが、まだ各
地に葉菜として、また鑑賞用切り花として残っています。



 ところがここ数年、花を食べることが流行。ナバナ栽培も全国
的になり、ナバナ用の品種まで出現しています。主産地は千葉県
白浜町、鋸南町、三重県長島町。
・アブラナ科アブラナ属のナタネのつぼみ

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(19)二年子ダイコン(春3月)

 1970年代末あたりから、中国華北型ダイコンと自然交配で
できたとされる宮重ダイコンの総太品種から育成された青首ダイ
コンが、すっかり人気を得て、店頭には青首ばかりならんでいる
感じです。しかし、それまではいろいろな品種のF1が、季節や
用途、地域に応じて供給されていたことも忘れてはいけません。



 古来からのとうの立ちにくい系統を、秋にまいても翌春とうが
立たず食用になるよう改良したのが、二年子ダイコンや時なしダ
イコン。辛みが強くダイコンおろしやぬかみそなどによい。

 大阪の春若ダイコン、名古屋の春福ダイコン、福井の愛宕ダイ
コンなども形は短いが、この二年子ダイコンの仲間だそうです。
江戸時代の本には「三月大根」と出ています。
・アブラナ科アブラナ属の野菜

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(20)ハーブ(春3月)

 最近のブームで、あちらこちらにハーブ園ができています。ハ
ーブは、香辛料のうち、おもに葉、茎を利用するものの総称。

 西欧では昔から料理の風味づけ、肉の臭み消しに使われ、ハー
ブティや染料、香料、入浴剤にも利用されています。

 種類が多く、ローズマリー、タイム、セージ、バジル、オレガ
ノ、ミント、ローレル、マージョラム、フェンネルなどが主なも
の。



 ローズマリー シソ科。地中海沿岸地方原産。清涼感のある甘
い香りとほろ苦さ。ウースターソースの添香料。この花からとっ
たはちみつは最上級。葉をかんで口臭を消します。

 タイム シソ科。ソース、トマトケチャップ、スープなどに利
用。防腐剤の作用も兼ねるという。日本には明治初年に伝来。強
い香りと辛さは舌がしびれるよう。

 セージ シソ科。サルビアの仲間。ヨーロッパ南部原産。葉は
薬用にも利用。明治23年ころ日本に渡来。全草に軟毛があります。

 バジル シソ科。日本には江戸時代伝来。葉をシチュー、スー
プ、サラダに入れます。いくつかある栽培種のうち、スィートバ
ジルが普及しています。

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(21)ハッサク(春3月)

 ハッサクは八朔で、旧暦の8月朔日(ついたち)の意味だとい
う。いまの暦のだいたい9月のはじめ。ハッサクはこのころから
食べられるというのでその名がついたといわれます。

 しかし、その時期はまだ果実は未熟で、実際には12月下旬か
ら1月上旬に収穫し、1〜5月ごろまで貯蔵して出荷します。

 ハッサクは江戸時代後期の1860年(万延元)、広島県因島(い
んのしま)市田熊町の恵日山浄土寺の境内で、住職の恵徳上人が
みつけた偶発実生。住職は「八朔(はっさく)」と命名。毎年八
朔の日に果実をとり檀家に配ったとか。1890年(明治23)
愛媛県で贈植、愛媛県の特産品に発展していきます。



 一方、発見地の因島でも明治末から大正初めにかけかなり栽培
され、昭和初期から少しずつではありますが市場価値も認められ、
広島県下に普及しはじめます。そして1950年(昭和25)ご
ろから西日本各地で栽培されるようになりました。いま和歌山、
愛媛、広島、徳島県で多く生産されています。

 木の性質、果実がブンタンに似ており、ブンタンとの雑種では
ないかと考えられています。木は強く、大樹になり枝は立ち、5
月ごろ白い花を咲かせます。果実は篇球形。

 枝変わりとして濃橙色で甘い農間紅八朔、早生種の早生八朔が
あります。
・ミカン科ミカン属の常緑低木

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(22)マナ(春3月)

 カナで書くとなんのことだかわかりませんが、漢字では「真菜」、
ナットクです。

 マナは在来のナタネとイサイ(またはオオサカシロナ)との自
然交雑でできたものといわれており、主に野菜用に栽培されてい
ます。仙台地方の名産で冬の葉菜として利用。



 マナには中生と晩成(オクマナ)があって、また葉に毛のある
ものとないものがあり、さらに葉が丸いものと切れ葉のものに分
かれています。

 この丸葉のものをマナといい、切れ葉のものをハタケナとよん
でいます。ハタケナはアブラナに近いとされ日本在来のもので、
地方に小規模に栽培されています。
・アブラナ科アブラナ属

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(23)ミイケタカナ(春3月)

 これは福岡県三池で栽培。漬け物として企業化もされているミ
イケタカナ。

 タカナの一種で、全般に大きく多肉質。大きい葉は中央脈の幅
がとくに広く、葉の部分は紫色をおびていて、葉のヘリの切れ込
みがあまりありません。



 この種類は「多肉性高菜類」などと分類され、タカナ自体は遠
く平安時代の本に既に記録がありますが、この種類は明治中頃、
中国から導入された青菜(セイサイ)が元になっていて、福岡で
柳河高菜が生まれ、これにいままであった品種紫高菜を交配して
できたのが、このミイケタカナ。

 タカナはカラシナと同類で、芥子油の成分が含まれているため、
菜漬けに適し、特にミイケタカナは優れているといいます。
・アブラナ科アブラナ属の越年草

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(24)レモン(春3月)

 その酸っぱさと、ビタミンCの豊富さで知られるレモン。その昔
世界中の海を股にかけたイギリスの船員たちは、「ライミズ」と呼
んでいたレモンとライムを大量に内に貯蔵して運び、ビタミンC
を補給し、壊血病の予防にそなえたという。

 そもそもレモンは、インドのヒマラヤや西部が原産地。温帯南部
から熱帯にわたって栽培されています。

 レモンは10世紀に原産地から地中海沿岸に入り、14世紀にアメリ
カに伝播。初めイタリアが主産地でしたが、いまではアメリカ、イ
タリア、スペイン、オーストラリアなどが主産地になっています。

 レモンが日本に初めて渡来したのは、明治8、9年だといいます。
アメリカ・サンフランシスコ領事館からネーブル・オレンジ、ブド
ウ、イチゴなどの苗木といっしょに、レモンの苗木を勧業寮に送っ
てきたもの。

 しかし、日本の高温多湿で、レモンの大敵である壊瘍病発生しや
すく広島県、和歌山県、四国、九州地方に栽培されているだけ。

 その地方の栽培は、明治末から大正初期に始まったもので、農林
省でもレモン栽培の必要を認め、1917年(大正6)にはさらに、ア
メリカからユーレカ、リスボン、ビラフランカなどの品種の苗木を
輸入、広島県大長柑橘試験地で、いまの広島県下のレモン栽培のも
とになりました。



 品種のユーレカは、1877年にアメリカ・カリフォルニアで、シ
シリー種の実生から選抜育成したもの。日本には1910年(明治43)
に導入。とげが少なく寒さにやや弱く、収量も少ないが品質がよい。
果実が木の外側になり外観もよいといいます。

 またリスボンは、原産地はポルトガル。樹勢が強く、高さ4、5
mにもなり、枝にとげが多いうえ、寒さに弱く、果実が木の内部に
なることが多い。

 日本では5月ごろ開花、10月から12月ごろ収穫しますが、カリ
フォルニアなどレモンは適地では年に3回開花し、次々に実るので、
1年中収穫できるといいます。

【効能】レモンが酸っぱいのは、クエン酸が働くためだという。最
近、クエン酸そのものを服用する「クエン酸療法」という療法が一
部で行われていますが、実行している人に聞いてみると「たしかに
疲れがとれてよい」とか…。

 ビタミンCは、いつまでも破壊されずに残り、疲労をのぞき消化
をよくするなどの効果があります。疲労回復はバツグン。風邪を治
し、消化作用を助けるアルカリ食品。
・ミカン科ミカン属の常緑小高木

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(25)ワケギ(春3月)

 古名は冬葱。ワケギは、夏に葉が枯れて休眠するが、秋からふ
たたび葉が出て茂り、11月から4月末まで出荷され、とくに3月
〜4月に入ってネギがトウが立ち、かたくなってから重宝される
野菜です。

 ワケギは、ギリシャからシベリア地方原産とされ、日本には、
中国を経て5世紀ごろに渡来したといわれます。



 江戸中期、貝原益軒『大和本草』には「葱は本朝四種アリ大葱
ワケギカリキアサツキナリ・・・小葱に二種アリ根トモニ分テ取
アリワケギト云是冬葱ナリ・・・」などとあります。

 いままではネギの変種として取り扱われてきましたが、どうもネ
ギとは習性が違うようだということになり、春に土寄せし軟白する
と、もっと軟らかになります。
・ユリ科ネギ属の2年または多年草

 第1章【春の野菜・果物】(3月)終わり

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