あとがき

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 前回発行の「イラスト家庭行事なんでも事典」を書いているとき、
どうしてもつきあたるのが、節供、七五三、成人式などの人生儀礼
でありました。

 このなんとなく気になる人生儀礼が本当に気になり出し、のめり
こむようになったのが2年前。誕生から、成育、結婚、子育て、実
年、葬送などの人生儀礼、冠婚葬祭はシキタリの世界です。

 とかくシキタリはこむずかしく、ああだ、こうだと、こだわり始
めたらキリがありません。習慣のちがいで「うちの方ではこうだ」
「いや、こうするのが正式だ」とつかみ合いになりかねません。

 私の最もにが手できらいなシキタリ、習慣儀礼……。よし、そん
なにむずかしいものなら、なぜそんなことをするのか、なぜそんな
ことが必要なのか、シロウトの私が、シロウトの目で、シロウト考
えで、シロウトにわかるよう、シロウトっぼく、マンガチックに書
き、また描いてやろうと考えました。

 本来なら専門家の監修を受けるべきかも知れませんが、そうなる
と、アッチの説もコツチの説もと盛りだくさんにしたくても、その
先生の説だけ書くようになり、ヤジウマ恨性まる出しの本という意
図がうすれてしまいます。そこであえて先生方の監修は受けないよ
うにしました。

 だから、これら人生儀礼のやり方、マナー、タブーなど、ノウハ
ウについては専門書をひもといていただき、本書はオモロイ読物と
して、楽しみ半分でみていただきたいと思います。

 儀礼、シキタリは時代とともにどんどん変わります。初めは喜び、
悲しみの心のあらわれであり、祈りだったものが、次第にひとつの
形式にまとまり、どうしたらいいかわからないとき、こうすれば安
心という「めやす」になっていった。それが後世にいろいろつけ加
えられ、おり曲げられ、飾られ複雑になり、ワケのワカラナイもの
になったのではないかとシロウト考えに思っています。

 しかし、1冊にまとめ終わったいまでも、シキタリや儀礼なんか
好きになれず、ハッキリいってきらいなことに変わりはありません。
でも調べてみると、ナルホド、ヘエーと思うこともたくさんありま
す。

 妊娠し、魔の日にまく腹帯は、昔は夫がまいてやる役だったとい
います。妊娠は夫婦の共同作業。夫の喜びと祈り、妻へのいたわり
です。また結婚式などの引出物。これはもと、客をもてなしたあと、
帰り際に馬を庭先に「引き出して贈った物」のなごりとか。だから
「引出物」………ナルホド。その他、喪服は喪に服す期間、ずっと
身にまとう白い服だった……。また戒名は本来、居士とか信女とか
の「位号」の上の2文字「法号」をいい、院だ道だと長いだけが能
ではないことも知りました。

 そういえば戒名や墓石を調べに、墓地の中をウロウロしたとき、
「従何位勲何等」と肩書つきの戒名をみつけました。ウーム。あの
世でも勲章がものをいうのかな。それともエンマ大王に「なまいき
なヤツだ」といじめられているか……。いずれにしてもオレには関
係のないこと、深く考えない、深く考えな なお、本書の中の「年
間行事」は前回の「家庭行事なんでも事典」をできるだけ補足する
ようにつとめたつもりです。また、大人から、小、中学生にも読ん
でいただきたく、平易な文章にし、読みにくい漢字にはかなをふり
ました。

 最後に私の愚見を忍耐強く聞き、励ましと助言をいただいた、富
民協会の河上定雄編集統括部長と編集部のみなさんに深くお礼を申
し上げます。
昭和62年2月
とよた 時


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本製品は、1987(昭和62)年、財団法人 富民協会(毎日新聞社)
より出版された「イラストひとの一生なんでも事典」に、追記、改
訂したものをCD化したものです。
※財団法人 富民協会は解散しております。

「あとがき」終わり

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