『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第9章 路傍の石碑

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▼09-15「月待塔01」三日月/十三夜/十四夜/十六夜

【略文】

三日月待は、3日の夜に出る月を礼拝し、病気や厄徐けなどの祈願
をするもの。十三夜塔は、13日の夜、知恵、学徳をつかさどる虚
空蔵菩薩を本尊とする十三夜待の講中が建てたもの。十六夜塔は十
六夜の月をまつった塔。文字塔と、大日如来像・阿弥陀如来像・聖
観音像・如意輪観音像・地蔵像などを彫った刻像塔があります。

▼09-15「月待塔」01(三日月/十三夜/十四夜/十六夜)

【本文】
 月の満ち欠けは人の生命力にかかわっていると信じられ、月への
願いごとも病気平癒や安産、育児など人の体に関したことが多いよ
うです。

 ・【三日月待】(みかづきまち):三日月待という優雅な名前の月
待(つきまち)行事があります。陰暦のある決まった月の3日の夜
に出る月を礼拝し、病気や厄徐(やくよ)けなどの祈願をするもの
で、静岡県西部地方行われたと聞きます。

 七夜待塔というのもありが、七夜待(ななよまち・しちやまち)
は7日の夜に月を待つのではなく、17日〜23日(旧暦)までの七
日間連続して月待をしたものであり数字の順序ではないようです。

 ・【十三夜塔】は、13日の夜、知恵、学徳をつかさどる虚空蔵菩
薩(こくうぞうぼさつ)を本尊とする十三夜待の講中が供養の記念
に建てた石塔です。十三夜の月見の中でも旧暦9月13日の夜の月
見(豆名月・栗名月)は有名で、姥月・女名月・小麦の月などの異
名もあります。

 本尊の虚空蔵菩薩は、数字の13となぜか昔から関係が深いよう
です。これは「三十日仏説」という説から来ており、それによると
虚空蔵菩薩の有縁日は13日であるという。そこから初七日から三
十三回忌までの仏事にそれぞれ仏を配した「十三仏」(十王に三仏
を加えてつくった)でも、13番目に当てられています。

 また奈良市、京都、茨城県福島県など各地の寺院で行われる「十
三参り」の行事でも厄年(やくどし)とされている13歳になった
男女が虚空蔵菩薩に参拝しており、ここでも虚空蔵菩薩と十三の数
字が結びついています。

 十三夜塔は山形県に多いようで、南陽市東正寺境内にもあります
が年号は不明です。飯豊町涌沼神社の自然石の塔は文化9年(1812)
の年号があります。また高畠町一ノ宮神社に十三夜需塔の文字のあ
る石塔があります。この「需」は「マチ」で十三夜待の「待」であ
り、祭りのマチなのだそうです。

 ・【十六夜塔】は、北関東に多く分布しています。栃木県には「下
野の野仏」によるだけでも九基あるという。やはり文字塔と刻像塔
があり、刻像塔には大日如来像、阿弥陀如来像、聖観音像、如意輪
観音像、地蔵像などの塔があります。


▼【参考文献】
・『日本石仏事典』庚申懇話会(雄山閣)1979年(昭和54)
・『日本大百科全書11』(小学館)1984年(昭和59)

 

 

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