『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第9章 路傍の石碑

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▼09-10「十 王」

【本文】
 村はずれのお堂の荒壁を背にして十王の石仏がならんでいます。
これは死後の世界の冥府(めいふ)で亡者の罪状を裁く10人の判
官のことだそうです。十王とは、秦広王(しんこうおう)、初江王
(しょこうおう)、宋帝王(そうていおう)、五官王(ごかんおう)、
閻魔王(えんまおう)、変成王(へんじょうおう)、太山王(たいざ
んおう)、平等王(びょうどうおう)、都市王(としおう)、五道天
輪王(ごどうてんりんおう)の10神です。

 死後、未来の生を受けられないものや、中有(ちゅうう)(次の
生を得るまでの49日間)の亡者は、初七日から二七日、三七日、
四七日、五七日、六七日、七七日、百ヶ日、一ヶ年、三年の10回
まで、各王のもとで順番に罪の重さを判定され、次に生まれる場所
を決められるという。しかしちゃんと抜け道があり、生前に十王に
供養を行ってあるものは罪を軽くしてもらえるのだそうです。

 これは中国で仏教と道教の混ざってできた思想で、日本には平安
時代末ごろ禅宗とともに入ってきたとされています。ちなみに三途
の川のほとりで亡者の着ているものをはがすという、奪衣婆(だつ
えば・ショウヅカバアサン)はこの信仰が日本に入ってきてから誕
生したといいます。

 さらに十王にそれぞれ本地仏(ほんじぶつ)が割り当てられるよ
うになりました。十王の石仏は、各王をそれぞれ一体ずつ、別々に
彫ってあるものや、石塔の一面に十体全部刻んであるもの、また石
塔の各面に十体をそれぞれに分けて刻んであるものなどがありま
す。

 忌日と十王(垂迹(すいじゃく))・本地仏はそれぞれ次の通りで
す。初七日(垂迹秦広王・本地不動明王)、二七日(初江王・釈迦
如来)、三七日(宋帝王・文殊菩薩)、四七日(五官王・普賢菩薩)、
五七日(閻羅王・地蔵菩薩)、六七日(変成王・弥勒菩薩)、七七日
(太山王・薬師如来)、百ヶ日(平等王・観世音菩薩)、一周年(都
市王・大勢至菩薩)、三周年(五道天輪王・阿弥陀如来)。


▼【参考文献】
・『日本石仏事典』庚申懇話会(雄山閣)1979年(昭和54)
・『日本大百科全書11』(小学館)1984年(昭和59)

 

 

 

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