『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第8章 草木の神

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▼08-01「榊(さかき)

【本文】
 サカキは漢字で榊(国字)、栄樹、賢木と書きます。栄樹は年中
葉が緑色のためといいますが、ほかにもそういう樹木はたくさんあ
り、なぜサカキだけいうのかは不明です。カミシバやサカシバとも
呼ぶのは神柴の意味なのでしょうか。福島県中川村ではナンテンの
ことを「さかき」と呼んでいるそうです。京都の吉田神社のように
サカキをご神木としている神社もあるそうです。

 しかし、古来詠われてきた歌の「さかき」は香りがあるとあり、
いまでいうサカキではなくシキミをいうのではないかいう論争があ
りました。紀貫之の歌に「おく霜に色もかわらぬ榊葉の香をはや人
のとめて来つらへ」とあり、神楽歌や『源氏物語』、その他の書に
も「榊葉の香」とあるからサカキの葉は香がよいはずだというので
す。

 その上「さかき」は小香木(さかき)の意味で香ばしい常緑樹の
意味なので、クスノキ科のタブノキ、クスノキ、ヤブニッケイ、シ
ロダモ、またモクレン科のシキミ、オガタマノキなどのことだとい
う本もあるので厄介です。また「さかき」は境の木の意味で、神域
の境に植える木で、常緑樹、落葉樹どちらでもよいという説もあり
ます。

 しかし、畔田(くろだ)伴存という人は、香とあるは香気のこ
とではなく、艶や色のうるわしいことを讃えているといい、さら
に『万葉集』などから、昔からシキミとサカキははっきりと区別
していたので、いまのサカキのことでよいと結論づけています。
サカキが少ない本州中部や生えていない東北地方、北海道では同じ
ツバキ科でよく似たヒサカキやモクレン科のオガタマノキも葉がよ
く似ており同様に使うようです。


▼【参考文献】
・『植物と伝説』松田修(明文堂1935年(昭和10)
・「世界の植物」週刊朝日百科
・『日本大百科全書10』(小学館)1986年(昭和61)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎編(東京堂出版)1984年(昭和59)

 

 

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