『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第7章 偉人・英雄神

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▼07-19「頼政神」

【本文】
 源氏だ平氏だとつづくようで恐縮です。頼政といえばヌエ退治で
有名です。夜ごとに近衛院を悩ます物の怪に、源頼政が警固をして
いると黒雲があらわれ怪しい姿が見えます。源頼政が矢を放つと見
事に命中、空から何か落ちてきました。

 それはナント、頭がサルで体はタヌキ、尾はヘビ、手足はトラで
鳴き声はヌエという化けものだったという。それにより帝の病は治
り、師子王という剣を賜ったという。『平家物語』(巻四)に出てく
るお話です。

 源頼政(1104〜80)は平安後期、源平争乱時代の武将で弓の名
手であり、歌人でもあります。1156年(保元元)、保元の乱では源
義朝に従い後白河天皇側につき、崇徳院方の源為義・為朝らと戦い
勝利を治めました。また五九年の平治の乱にははじめ義朝側につい
ていましたが、変心して平清盛方について勝利。「平家にあらずん
ば人にあらず」の時代、源氏の身ながら従三位(じゅうさんみ)と
いう破格の待遇を得ます。

 1180年(治承4)、平治の専制を怒り、源氏の世にしようと以仁
王(もちひとおう)にすすめ、平家討伐をはかって兵を挙げ京都宇
治川に陣を張りましたが、戦いに利あらず平等院で自決。それをあ
われみ種々の伝説が生じます。家臣の河辺三郎行吉が山伏姿で頼政
の首を運び出し、墓や祠をつくったところが茨城県古河市にあり、
全国に頼政塚があります。

 西丹沢、神奈川県山北町神縄の頼政神社の境内のトチノキは「か
ながわの名木100選」の1つで、昔、飢きんの時、このトチノキ
の実を食べ何人もの命が救われたと立て札にあります。布なわでな
らす鈴の音に混じって、遠く三保ダム公園がにぎやかでした。

▼【参考】
・『日本架空伝承人名事典』大隅和雄ほか(平凡社)1992年(平成
4)
・『日本大百科全書22』(小学館)1990年(平成2)
・『日本伝奇伝説大事典』編者・乾勝己ほか(角川書店)1990年(平
成2)
・『平家物語』:日本文学全集7『平家物語他』井伏鱒二訳(河出書
房新社)1960年(昭和35)
・『平家物語』(巻第四)一四(六五)鵺の事

 

 

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