『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第6章 動物の神
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▼06-07「鹿の神」
【本文】
鹿はかつては「シシ」と呼んでいました。また肉に臭気があるの
で「カノシシ」ともいっていたという。奈良の春日大社や、広島県
の厳島神社、茨城県の鹿島神社、宮城県金峰山神社、千葉県船橋大
神宮などでは神のお使いとしています。神の乗り物とも考えられて
おり、各神社では神聖な動物として特別に保護をし、その氏子たち
は鹿の肉を決して食べないそうです。
鹿はまた、神意を占う霊力があるとされ、古代には鹿で占うこと
が盛んで、いまでも奥多摩の御岳神社や、群馬県貫前神社では鹿の
骨を焼いて、その割れ方で吉凶を占う「鹿占」が行われています。
お祭りにもよく登場し、東北地方では「鹿踊り」が踊られています。
これも霊力があるとされるところからきているもの。また寄り神
信仰で海から神が鹿に乗ってやってきたと伝える地方も多い。茨城
県鹿島地方、秋田県男鹿半島など鹿にちなむ地名が多いのは、そん
な伝説にちなむのでしょうか。
鹿が美しい女性を生む話も各地にあります。これは男性の精が触
れた草を食べた鹿が、妊娠して美女を産んだという話になっていま
す。ただ生まれた女性の足先がふたつに割れて、まるで鹿の蹄のよ
う。それを布で隠し包み、この布の形が次第に足袋に発展したのだ
という伝説もあります。
鹿の体内には、鹿玉というニワトリの卵くらいの玉があり、それ
を産んだ鹿たちが角から角へやりとりして、玉遊びをするといい伝
えます。その玉を大事に秘蔵すれば、富が増してお金持ちになると
もいわれます。
また年老いた枝分かれした角や、変わった形のものには、霊力が
宿っているとされ、諏訪神社など鹿の角をお宝としている神社もあ
ります。
▼【参考文献】
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎編(東京堂出版)1984年(昭和59)
・『動物信仰事典』芦田正次郎著(北辰堂)1999年(平成11)
・『日本大百科全書10』(小学館)1986年(昭和61)
・『日本の祭り・四季のうつろい』サンケイ新聞
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