『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第6章 動物の神

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▼06-03「カラス神」

【前文】

カラスはその色や頭の良さなどから神秘的な鳥とされ、山の神のお
使いとも見られています。大昔から吉凶両面で聖なる鳥として信仰
もされてきました。祖父母の時代くらいまではカラスの鳴き声を悪
いことの起きる前兆として気にしていました。それをカラス鳴きと
いい、地方地方で鳴き方の伝承がありります。

▼06-03「カラス神」

【本文】
 カラスはその色や頭の良さなどから神秘的な鳥とされ、山の神の
お使いとも見られています。大昔から吉凶両面で聖なる鳥として信
仰もされてきました。祖父母の時代くらいまではカラスの鳴き声を
悪いことの起きる前兆として気にしていました。

 それをカラス鳴きといい、地方地方で鳴き方の伝承がありります。
一羽だけで淋しい鳴き方をするのを「一羽カラス」といったり、「だ
んご食いて〜」と聞こえるように鳴くのを「死にガラス」などさま
ざまに解釈されています。

 農村では、あらかじめ早稲(わせ)、中手(なかて)、晩稲(おく
て)と決めた米を畑などに置いて、カラスがどの米を食べるかで、
その年にまくイネを占ったりします。1月の小正月には「鳥追い」
という行事を行い、同じ時期にカラスに餅を与えるしきたりもあり
ます。

 サッカーの3本足でおなじみの八咫烏(やたがらす)。熊野神の
お使いとされ、熊野那智などの護符にデザインされ、烏牛王(おか
らすさん)とも呼ばれています。八咫烏は『日本書紀』や『古事記』
の神武天皇東征伝承に登場する頭の大きな大カラスです。

 日向(宮崎県)の高千穂宮を出発した神武天皇は、瀬戸内海を東
に進んで難波に来た時、長髄彦(ながすねひこ)と戦い、兄の五瀬
命(いつせのみこと)を失います。神武軍は南へ迂回し南紀の熊野
に着くと、山中で荒ぶる神の化身・大熊に出会いその毒気で倒れま
す。

 しかし、高天原の天照大神または高木大神に助けられ、高天原か
ら派遣された八咫烏に先導され、熊野から吉野への険しい道を乗り
越えて、大和の宇陀(奈良県中東部)へ出ることができたとの伝承
があります。大和国宇陀郡には八咫烏神社がまつられているといい
ます。

ちなみに、日本サッカー協会のシンボルマークの八咫烏は、協会
の前身・大日本蹴球協会の創設に尽力した内野台嶺(漢文学者)ら
のアイデアをもとに、彫刻家の日名子実三のデザインで1931年(昭
和6)に採用されたものだそうです。これは天武天皇が和歌山県熊
野に通い、蹴鞠をよくしたことにちなむという。

 また、平安時代後期の公卿で、蹴鞠の名人といわれる藤原成通(な
りみち)は、蹴鞠上達を祈願するために50回を超える熊野詣をした
おかげで、熊野大神に「うしろまり」を披露、奉納できたという。
日本サッカー協会は、ワールドカップなど、出場前には熊野三山で
必勝祈願を行っているようです。

▼【参考文献】
・『日本架空伝承人名事典』大隅和雄ほか(平凡社)1992年(平成4)
・『日本大百科全書・5』(小学館)1985年(昭和60)
・『日本大百科全書・23』(小学館)1989年(平成1)
・『日本伝奇伝説大事典』編者・乾勝己ほか(角川書店)1990年(平
成2)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎編(東京堂出版)1984年(昭和59)

 

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