『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第4章 天狗神

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▼04-27「大和葛城山と吉野の天狗

【本文】
 役ノ行者小角が修行した葛城山は、いまの金剛山から大和葛城山
一帯をいい、行者が吉野大峰と葛城山との間を岩の橋を架けようと
した岩橋山もあります。その大和葛城山と金剛山を結ぶ峰の鞍部を
高天原といい、近くに岩橋づくりの時行者に反抗し呪縛された一言
主神社もあります。

 高天原は葛城山高天坊(たかまぼう)または高間坊という天狗の
住処です。昭和の初め、愛知県岡崎市の真言宗醍醐派の属す内田恵
亮師は、呪術で遠方の地の「物品取り寄せの術」というのを披露し
ていましたが「この術ができるのは、大和の葛城山高天坊というお
天狗さまのお陰だ」いっていたそうです。

 高天坊の前身は葛城山の地主神の一言主神だという説があります
が、いまも金剛山などに数多くの呪法者がいることから一言主では
なく、役ノ行者の叔父に当たる願行上人ではないかと研究者はいっ
ています。

 金剛山には葛城神社や転法輪寺があります。社務所先にはキャン
プ場があり、つるべ式の井戸もあって一晩テントを張らせてもらっ
たことがあります。次の日、高天原の高間彦神社に寄りました。境
内は人気もなく注連縄を張った大杉が天を摩するように延びていま
した。

 岩橋を架けようとした片方のたもとの吉野にも皆杉小桜坊という
天狗がいます。吉野の奥千本に建つ金峰神社は、もと金精大明神(こ
んじょうだいみょうじん)といいこのあたりの地主神。この神は吉
野八大神の筆頭で吉野山鎮守の神さまとか。役ノ行者が感得した蔵
王権現はこの大明神の姿を変えたものでのではないかという人もい
るという。先年訪れた時は社務所が焼失していました。別棟の金峰
神社とちょっと下の「義経隠れ塔」が火事から免れたのは幸いでし
た。
▼大和葛城山【データ】
【所在地】
・奈良県御所市(ごせし)と大阪府千早赤阪村との境。和歌山線
近鉄五所線五所駅からバス葛城ロープウェイ前下車・ロープウェ
イで葛城山上駅、歩いて30分で大和葛城山。二等三角点(959.2m)
がある。そのほかは何もなし。地形図に山名と三角点の標高を記
載。三角点より東北方向120mに葛城ビジターセンターがある。三
角点より方向272mに国民宿舎がある。
【名山】
・日本山岳会選定「日本三百名山」(第280番):日本百名山以外に
200山を加える。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)
【位置】
・二等三角点:北緯34度27分22.2秒、東経135度40分56.26秒
【三角点】
点名:篠峰山
【地図】
・2万5千分の1地形図「御所(和歌山)」

▼【参考】
・『河内志』江戸時代の享保年間に編纂された畿内5か国の地誌
・『図聚天狗列伝・西日本』知切光歳著(三樹書房)1977年(昭和52)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・『神社辞典』白井永治ほか編(東京堂出版)1986年(昭和61)

 

 

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