『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第4章 天狗神

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▼04-23「御嶽山の天狗たち」

【略文】
飛鳥時代の開山以来の信仰の山・木曽御嶽山には天狗がたくさん
すんでいるという。首長の六尺坊天狗は、御嶽権現の化身とされ
文字通りの大親分。またアルマヤ山にはアルマヤ坊天狗に、八海
山には大頭羅坊天狗、三笠山には刀利天坊天狗も鎮座していると
されています。
・長野県王滝村と木曽町との境。

▼04-23「御嶽山の天狗たち」

【本文】
 御嶽山の開山は飛鳥時代だと伝え、以来多くの行者が修行して
きた信仰の山。いまでも全国各地にいる御嶽講の信者は数百万人
を超えるということです。山頂付近の一ノ池のまわりには、「三十
六童子」を安置、各所に霊神碑などもあります。

 こんな山ですから不思議な話がないはずはありません。中でも
天狗の伝説は有名で、御嶽山六尺坊(ろくしゃくぼう)という天
狗を筆頭に、アルマヤ山アルマヤ坊、八海山大頭羅坊(おおずら
ぼう)、三笠山刀利天坊(とうりてんぼう)などの天狗たちがいる
ことになっているそうな。

 首長の六尺坊は御嶽権現の化身といわれ、文字通りの大親分。
すでに神の域に入っています。六尺坊は主峰の剣ヶ峰にすむとい
う。

 また峰のひとつの摩利支天(まりしてん)山近くのアルマヤ山
には、アルマヤ坊がいてサイノ河原東方のピークに止住していま
す。大頭羅坊天狗は御嶽山の前山の八海山(はっかいさん)にす
むといいます。八海山は王滝口五合目にあります。

 そして刀利天坊は、いまはバスの終点でも田の原にある三笠山
に鎮座するという。

 御嶽行者が唱える経文の中にも、「恐れ乍ら之の座に勧請し奉る
は…大己貴神(おおなむちがみ)、少彦名神(すくなひこながみ)、
御嶽山三社大権現……八海山大頭羅神王、三笠山刀利天飛竜大権
現、阿留摩耶山(あるまやさん)大権現……」と天狗の名前が出
てきます。

 ここで修行した御嶽行者が地方の山々に移動するにつれ、各地
に三笠山、八海山などの山名がつけられはじめ、御嶽山の峰々ま
つられる天狗の分身が、勧請されはじめられたということです。

▼【参考】
・『角川日本地名大辞典20・長野』(角川書店)1991年(平成3)
・『山岳宗教史研究叢書9』(富士・御嶽と中部霊山)鈴木昭英編
(名著出版)1978年(昭和53年)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和
52)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本歴史地名大系・長野県」(平凡社)1990年(平成2)

 

 

 

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