『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第4章 天狗神

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▼04-06「山の妖怪天狗のお経

【略文】

修験道で修行する行者が、各地の霊山の天狗を招いて祈念を込める
時に唱える「天狗経」というお経があります。室町後期にはすでに
唱えられていたものらしい。その内容は「南無大天狗小天狗十二天
狗有摩那(うまな)天狗数万騎天狗、先づ大天狗には、愛宕山太郎
坊、妙義山日光坊……とつづき、48の天狗名が出てくるお経です。

▼04-06「山の妖怪天狗のお経

【本文】
 修験道で修行する行者が、各地の霊山の天狗を招いて祈念を込め
る時に唱える「天狗経」というお経があります。天狗経は、密教系
の「万徳集」や江戸時代の版元・浪華人田中玄須の「本朝列仙伝」
などにも見えるため、室町後期にはすでに唱えられていたものらし
いといいます。

 その内容は「南無大天狗小天狗十二天狗有摩那(うまな)天狗数
万騎天狗、先づ大天狗には、愛宕山太郎坊、妙義山日光坊、比良山
次郎坊、常陸筑波法印、鞍馬山僧正坊(そうじょうぼう)、彦山豊
前坊(ひこさんぶぜんぼう)、比叡山法性坊(ひえいさんほうしょ
うぼう)、大原住吉剣坊、横川覚海坊、越中立山縄乗坊(しじょう
ぼう)、富士山陀羅尼坊(だらにぼう)、天岩船檀特坊(だんとくぼ
う)、日光山東光坊(とうこうぼう)、奈良大久杉坂坊(さんはんぼ
う)、羽黒山金光坊、熊野大峰菊丈坊(きくじょうぼう)、吉野皆杉
小桜坊(かいさんこざくらぼう)、天満山三尺坊、那智滝本前鬼坊
(ぜんきぼう)、厳島三鬼坊、高野山高林坊、白髪山高積坊、新田
山佐徳坊、秋葉山三尺坊、鬼界ヶ島伽藍坊(がらんぼう)、高雄内
供奉(ないぐぶ)、板遠山頓鈍坊(とんどんぼう)、飯綱三郎(いづ
なのさぶろう)、宰府高桓高森坊、上野妙義坊、長門普明鬼宿坊、
肥後阿闍梨(あじゃり)、都度沖普賢坊、葛城高天坊、黒眷属金比
羅坊、白峰相模坊、日向尾股新蔵坊、高良山筑後坊、医王島光徳坊、
象頭山金剛坊、紫尾山利久坊、笠置山大僧正、伯耆大山清光坊、妙
高山足立坊、石鎚山法起坊、御嶽山六石坊、如意ヶ岳薬師坊、浅間
ヶ岳金平坊、総じて十二万五千五百、所々の天狗来臨影向、悪魔退
散諸願成就、悉地円満随念擁護、怨敵降伏一切成就の加持、をんあ
ろまや、てんぐすまんきそわか、をんひらひらけん、ひらけんのう
そわか」と、48の天狗名が出てくるお経です。

 天狗専門のお経があるとは驚きです。ただ、「日本八天狗」に登
場している丹沢大山の天狗・伯耆坊が抜けているのは編者のミスだ
ろうと研究者は不満げです。

▼【参考】
・『修験道辞典』宮家準編(東京堂出版)1991年(平成3)
・『図聚天狗列伝・西日本』知切光歳著(三樹書房)1977年(昭和52)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・密教系の「万徳集」江戸時代の版本浪華人田中玄須の「本朝列
仙伝」などにみられる経軌。

 

 

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