『新・ふるさとの神々』(上)加筆
第1章 山・谷・峠の神と怪物

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▼01-14「山宮・里宮

【略文】

山には決まったように祠があります。また山ろくには同じ神社のお
宮があります。山の上にあるのを「山宮(奥宮)」といい、人里に
あるものを「里宮」といっているようです。なぜかひとつの神社が
2ヶ所に社があるのでしょう。ふつう里宮は大きな社を構え、山上
や山腹の「山宮」は石の祠だったり、木の祠だったりすることが多
い。

▼01-14「山宮・里宮」

【本文】
ひとつの神社で、山の上と、山ろくの人里の2ヶ所にお宮がありま
す。山の上にあるのを「山宮(奥宮)」といい、人里にあるものを
「里宮」といっているようです。「里宮」は大きな社(やしろ)を
構えています。それに比べて、山上や山腹の「山宮」は石の祠(ほ
こら)だったり、木の祠だったりすることが多い。

そもそも「宮」とは、御屋(みや)、社は屋代(やしろ)のことで、
両方ともに神をまつってある所です。祠は神庫(ほくら)から転じ
た小さな社のことだそうです。これらは地方によって、春宮・秋宮、
下社(しもみや)・上社(かみみや)、前宮・本宮(もとみや)など
と呼ぶ所もあるそうです。

その神社の祭礼には神が両方の社を行ったり来たりするとか、季節
によって両方の社の神が交替するとも、季節で神が交互に移動する
ともいっています。また山宮と里宮にいる神は兄弟だとか、親子で
あるともいっています。

一方、日本には神去来の信仰があります。つまり、ふだん山の上に
いる神が、春になると里におりてきて田の神になり、稲作などの生
育を見守り、秋、また山に戻るという考えです。さらに伊勢神宮の
度会(わたらい)、荒木田両氏の伝える山宮の行事が、彼らの古い
葬地での儀礼かと考えられます。

そんなことから、山の神が祖霊であり、山宮は祖霊をまつったもの
(祖霊が山にいるとの信仰)との考えから、神聖な山の上に神がお
り、その神をふだん礼拝するため、人里にむかえまつったのが里宮
だという説があります。

つまりいちいち山の上に行くのはシンドイ。もっと簡単にお参りで
きる里にお宮をつくったのではないかという説です。しかし、この
説は問題が多いといいます。たとえば、伊勢の山宮の所在地は、山
上などではありません。このため、山上にある一般の山宮と同一視
することは無理だというのです。

むしろそれは反対で、村人の生活の場でまつられていた社(里宮)
が、神は天上より降臨するという信仰から、次第に日常生活から離
れた山上にまつられるようになったというのが定説になっているそ
うです。

▼【参考文献】
・『日本大百科全書10』(小学館)1986年(昭和61)
・『日本大百科全書23』(小学館)1989年(平成1)
・『世界大百科事典30』(平凡社)1972年(昭和47)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎編(東京堂出版)1984年(昭和59)

 

 

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