とよだ 時(とよた時)の自然観察

………………………………………………

●目次

・1:葉っぱのちまき
・2:野山のはがき・字書き虫
・3:ブドウのひげの謎
・4:山のゆりかご・オトシブミ
・5:葉っぱに咲く花、葉っぱになる実

…………………………………

・1 葉っぱのちまき

野山の道を歩くとくるくるとちまきのように巻かれたススキがあり
ます。フクログモの仲間の巣です。巻かれた巣をはがしてあけてみ
るとクモがあたふた出てきます。

あける時、咬まれることがあるので注意。咬まれるとかなり痛く、
なかにはカバキコマチグモのように毒を持っているものもいるので
要注意です。

フクログモの仲間には、フクログモ科フクログモ属とコマチグモ属
がいます。

毒のあるカバキコマチグモはコマチグモ属に属しています。このク
モに咬まれると、体質によってはひどい症状になるそうです。

カバキコマチグモのメスは、ススキの葉を折り曲げてちまきのよう
な形の巣をつくり、なかに卵を産みます。

しかし、卵がふ化して1回目の脱皮を終えた子グモに、よってたか
って食べられ(体液を吸われ)てやがて死んでしまうという運命が
待っています。

コマチグモの仲間には、アシナガコマチグモ・ヤマトコマチグモ・
ヤサコマチグモ・アカスジコマチグモ(北海道)などがいます。

ちなみにコマチグモのコマチは小野小町に由来して美しいという意
味だそうです。またフクログモ属のハマキフクログモは、田んぼに
多くすみ、イネの葉を三つに折り曲げて巣をつくりなかにすみます。

草地にすむヤハズフクログモは矢筈(矢の上端の弓の弦を受けると
ころ)のような模様があります。

【参考】
・「自然観察ハンドブック」日本自然保護協会(思索社)1988年(昭
和63)
・「日本大百科全書・5」(小学館)1985年(昭和60)
・「日本大百科全書・9」(小学館)1986年(昭和61)
・「小さな自然かんさつ」日本自然保護協会(平凡社)1998年(平
成10)

 

…………………………………

・2 野山のはがき・字書き虫

野山を歩いていて、文字や絵を描いたような木の葉っぱを見たこと
はありませんか。まさに「葉書」です。見つけると不思議な感じが
しますよね。

これは字書き虫(絵かき虫ともいう)の仕業です。字書き虫は葉の
中に潜って暮らす虫で、ハモグリガや、ハモグリバエの総称です。
これらの幼虫の中には、葉の内層の葉肉を食べるため中に潜り込む
習性があるものがいます。

この幼虫たちが、食べたあとが半透明に残り、まるで絵や字を書い
たように葉の表皮を通してみえます。昆虫の種類によって模様が違
うそうです。

ハモグリガは昆虫綱鱗翅目ハモグリガ科の昆虫。幼虫のほとんどが
潜葉性で、大きくなるとハンモックのような繭や絹糸の束で囲んだ
繭を作るそうです。

ハモグリバエは双翅目ハエ群の一科。どんな模様があるのか調べて
みるのも面白いものですね。ただ、植物の葉に潜って葉肉を食べる
のですから、作物だったら大変です。

字書き虫の中には害虫になってしまうものもいるというから残念で
す。ハモグリガの仲間には、モモ・リンゴ・サクラ、クリ・クヌギ、
サツマイモ・アサガオなどに潜るものもがいます。

ハモグリバエの仲間にはイネ・麦・エンドウ・十字花野菜、ネギ・
ダイズにとりつくものもいます。

・ハモグリガ(昆虫綱鱗翅目ハモグリガ科の総称)
・ハモグリバエ(昆虫綱双翅目短角亜目ハエ群の一科)

【参考】
・「世界大百科事典・3」(平凡社)1972年(昭和47)
・「日本大百科全書・10」(小学館)1986年(昭和61)
・「自然かんさつ学入門」(日本自然保護協会)1985年(昭和60)

 

…………………………………

・3 ノブドウのひげの謎

 秋の山道で色づきはじめたヤマブドウの葉の間に黒く熟した実
を見つけました。農山村で育った人ならおなじみのごちそうです。

 ヤマブドウのつるは、巻きひげで高い木によじのぼり、からみあ
ってやぶをつくります。つるは古いものになると直径が数センチに
なることもあるといいます。さっそく、背伸びをして房をとってほ
おばります。甘酸っぱい味が口中に広がり、子どものころが思い
出されます。これも山歩きの楽しみのひとつ。食べた後は、口の
中が赤紫色に染まっています。

 ヤマブドウは大昔から好んで食べられていたといいます。それな
ら畑で栽培されてもいいのではないかと思うのですが、いままで作
物としてつくられたことはなかったというから不思議です。しかし、
ヤマブドウとヨーロッパブドウの雑種は作られたことはあるそう
で、かつて「勝利」、「成功」という2つの品種があったそうです。

 ヤマブドウは、雌雄異株。葉は円形で30センチにもなり、巻き
ひげは葉と対生して一部が花穂になったりしています。

 ブドウ科の巻きひげには1回か数回の枝分かれがあります。よ
く見ると分岐点の外側に小さなうろこのようなものがあります。
これは特殊な葉だそうです。

 またこの巻きひげの枝分かれは茎の枝分かれだといいますから
ちょっと驚きます。ふつうの種子植物で、茎が枝分かれする枝は
葉のつけねの葉腋から出ます。それは巻きひげが小さな葉の葉腋
から枝分かれするのと同じ現象だからだそうです。

 このヤマブドウの巻きひげに謎があるというのです。つるから
出る巻きひげは全部の節から出るわけではありません。各節の巻
きひげのあるなしを見ると、あり、ありと続き、次はありません。
つまり「有有無、有有無」と3拍子になっています。

 しかしノブドウは例外で、「有有有……」と全部の節から巻きひ
げが出ています。なぜそうなのか分からないと学者先生も首をひ
ねっています。
・ブドウ科ブドウ属の落葉つる性植物

▼【参考文献】
・「植物の世界4」朝日新聞社

…………………………………

・4 山のゆりか・ごオトシブミ

 林の中を歩いていると、くるくる巻かれた変な木の葉っぱがぶら
下がっているのを見たことがありますか。まるで落とし文(公然と
いえないことを文書にしてわざと道路などに落としておくもの)の
ようです。

 これはオトシブミという虫が自分の子どもを育てるためにつくっ
たゆりかごのようなものです。オトシブミはゾウムシ科に近いオト
シブミ科という昆虫でいろいろな種類がいますがその総称だそうで
す。

 この種類の虫のメスは木の葉を上手に巻いてその中に卵を産みつ
ける習性があります。虫は葉の上やふちを歩きまわり、葉の大き
さをはかり、決まったところに切りめを入れます。そして葉をだ
らりとぶら下げ、しおれかかったところを二つに折りたたんで下
から巻きあげます。

 そこで葉に穴をあけて、なかに卵を産み込み、口や足で葉をつ
かみ、円筒形のゆりかごをつくっていきます。

 ゆりかごは、虫の種類によって形が変わり、葉の半分から切り
はじめ、葉脈真ん中を残してぶら下がっているもの、葉の片方に
片寄ってぶら下がるもの、葉の全体を丸めてしまうものなどいろ
いろです。

 また、葉から切り落とされて地面に転がっているものまであり
ます。卵からかえった幼虫は、なかに巻かれた葉を栄養として食
べて成長します。

 ていねいにつくる虫や大ざっぱな虫がいます。また、ゆりかご
には右巻きと左巻きがあります。虫にも右きき左利きがあり、性
格まで違っていて面白いものですね。

▼【参考文献】
・『自然観察ハンドブック』(日本自然保護協会)1988年(昭和63)
・『雑木林の自然観察』(日本自然保護協会)1986年(昭和61)

 

…………………………………

・5 葉っぱに咲く花・葉っぱになる実

 山の中の登山道で、まわりがギザギザになった葉っぱの真ん中に、
丸くて黒い実が乗っているのを見つけます。いやいや、乗っている
のではなく、生(な)っているのです。葉っぱの真ん中に実が生っ
ている?そうなんです。ハナイカダの果実なんです。果実は直径
7〜9ミリの球形。ハナイカダは高さ1〜2メートルの落葉低木。
山地の木陰などに生えています。

 夏のはじめ、奇妙なことに葉の真ん中に淡い緑色の地味な小さな
花を咲かせます。雌雄異株で、雌花の木と雄花の木があります。雌
花は1〜3個の花が、雄花は数個集まって咲いています。花が咲い
たあとの実は、はじめ緑色をしていますが、夏からいまごろにかけ
て黒くなって熟します。

 花が咲いているころ、葉をとって水の上に浮かべてみましょう。
ナント、花をのせた筏(イカダ)に見えるではありませんか。ハナ
イカダ。うまい名前をつけたものですよね。

 どうしてこんな形になったのか。ハナイカダに聞いてもたぶん
分からないと思いますが、これは、葉腋から出た花軸が葉柄と葉
身の中央脈に癒合したためこんな形になったのだと、詳しい図鑑
に載っていました。

 ママコ、ママコナ、ヨメノナミダなどと呼ぶ地方もあり、若い芽
や葉をゆでて、ゴマ和え、クルミ和え、納豆和えに、またかき揚げ、
卵とじ、おひたし、塩漬けなどにして食べられます。くせもなくみ
んなに利用され、東北地方の主要な山菜になっているそうです。

 方言のママコ、ママコナは、果実の丸い形を米粒にたとえたもの
ではないかと牧野富太郎博士は説いています。ヨメノナミダもなん
となく分かりますよね。また、茎を切って細い棒で髄(ずい)を押
すと突き出るので「ツキデノキ」という方言もあります。

 花のころは地味なため、気がつかないで通り過ぎてしまいますが、
果実が熟し黒くなって、丸いかたまりが葉に乗っている姿はよく目
立ち、奇妙な感じをさせられます。黒く熟した果実は甘味があって
食べられます。もちろん果実酒にも利用できますよ。

 ハナイカダはミズキ科ハナイカダ属に属していますが、ハナイ
カダ属は互生葉序で、托葉がはっきりしており、散形花序であり、
がくが退化していることなどから、ミズキ科よりむしろウコギ科
に特徴が似ているところが多いという。このため学者センセイの
間では、ハナイカダ属をウコギ科に移す方がよいとの意見が強く
なっているそうです。また、独立させてハナイカダ科にすべきだ
という見解もあると聞きます。(「植物の世界」)また手元の図鑑が
古くなってしまいます。
北海道、本州、四国、九州の山地に分布。
・ミズキ科ハナイカダ属の落葉低木

イラスト漫画家(民画家)
野山と農村の民俗伝承画文ライター
とよだ 時(とよた時)
toki@toki.moo.jp
ふたつの削除して送信してください。

…………………………………………………………………………………………………

仕事部屋】へ戻る