【野の本・山の本】(05)
【いなかの神さま仏さま】
とよだ 時:山岳漫画家・田園風物

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▼道しるべの神・猿田彦神

【序文】
山里の村はずれに、猿田彦神の石碑が建っています。猿田彦神は『古
事記』や『日本書紀』にも登場する道案内の神。その姿は鼻あくま
で高くして、口元明るく、目は赤く鏡のように輝き、眼力に優れ赤
ら顔で相手をおびえさせる怪異な風貌…だそうです。また庚申の申
がサルとも読むところから、庚申さまにも置きかえられています。

▼道しるべの神・猿田彦神

【概略文】

山里の村はずれに、猿田彦神の石碑が建っています。『日本書紀』
によると猿田彦は、鼻あくまで高くして、口元明るく、目は赤く鏡
のように輝き、眼力に優れ赤ら顔で相手をおびえさせる怪異な風貌…
とあります。

よく神社の例祭のみこしを先導する鼻高で赤ら顔の神をみかけます
が、あれが猿田彦神です。『古事記』天孫降臨の条では、天の八衢
(やちまた)で高天原と豊葦原中つ国を明るく照らす異形の神とし
て登場します。天鈿女命が行って問いただすとニニギノ命のご先導
を申し上げようと出迎えていたと答えます。

邇邇芸命たち一行は、この心強い道案内のお陰で無事、高千穂に降
りることができました。無事道案内の役目を果たした猿田彦は、天
鈿女命に見送られ伊勢に帰りましたが、天鈿女命は猿田彦の猿をと
って猿女君と呼ばれたというからどうやらふたりは結婚したらしい
のです。

また庚申の申がサルとも読むところから、庚申さまにも置きかえら
れています。



▼【本文】もどうぞ
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【本文】
山里の村はずれに、猿田彦神の石碑が建っています。よく神社の例
祭のみこしを先導する鼻高で赤ら顔の神をみかけますが、あれが猿
田彦神です。猿といえば、猿は人間にもっとも近い動物として、昔
から猟師たちから「山の人」とか、「山のおやじ」、「山の若い衆」
などと呼ばれ、また密接な関係をもちつづけてきた動物です。

これは遊びや、風習、民話、社会慣習、芸能、祭礼にまでも取り入
れられており、霊的なものとして畏怖(いふ)の念さえ持っていま
す。猿は昔から山の神や、火の神、樹霊、あるいは風の神、道しる
べの神、さらに山の神からの関係から、春に里に降りてきて田の神
になるという「神去来の伝承」から作物の神にまで解釈されていま
す。

さらに「猿は山の父、馬は山の子」ともいい、猿は馬の守りとまで
いわれます。かつては厩(うまや)を祈祷をするときには、猿に幣
束を持たせながら祈りをささげられたといいます。

このような猿は神に具体的にあらわされ、その代表猿田彦神(さる
だひこがみ)として『古事記』にも登場します。『古事記』(上つ巻)
の天孫降臨の項にこんなことが出ています。

天照大神(あまてらすおおかみ)から「豊葦原(とよあしはら)の
中つ国(日本)へ降りよ」の命を受けた天孫日子番(ひこほ)の邇
邇芸命(ににぎのみこと)は、神々を従えて三種の神器たずさえ、
たなびく雲を行き日向の高千穂の嶺(みね)に向かいました。

その時、天の八衢 (あめのやちまた)、いわゆる道の分岐点にひと
りの神がいました。神は、上は高天ヶ原を照らし、下は豊葦原の中
つ国を照らしています。

その風貌を『日本書紀』(巻第二)には次のように書かれています。
「其の鼻の長さ七咫(ななあた)、背(そびら)の長さ七尺(なな
さか)余り。当(まさ)に七尋(ひろ)と言ふべし。

且(また)口尻(またくちわき)明り耀(て)れり。眼は八咫鏡(や
たのかがみ)の如くして、?然(てりかがやけること)赤酸?(あ
かがち)(ほうづきの意)に似(の)れり……」。つまり、鼻あくま
で高くして口もと明るく、目は鏡の如くかつ眼力にすぐれ、赤ら顔
で相手をおびえさせるような怪異な相であったというのです。

そこで邇邇芸命(ににぎのみこと)は、一緒に降りてきた天宇受売
命(天鈿女命)(あめのうずめのみこと)をおよびになって命じま
した。「お前はかよわい女ながら、強敵にでも気後れせずに対応で
きる力を持っている。お前が行って天降の道を塞(ふさ)ぐものは
誰か聞いて来よ」。

命を受けた天天宇受売命が、その神のところへ行って伝えたました。
すると「あは、国つ神、名は猿田?古(さるだびこ・彦)の神ぞ」。
ここに立っているのは、天孫降臨を聞き伝えたゆえに御前(みまえ)
に仕え、ご先導申し上げようと出迎えに参り、お待ち申しておりま
したという。こうして無事に天降ります。

やがて邇邇芸命は天宇受売命に、「猿田?古(彦)神をその鎮座地
に送るべきこと、またその名を負って仕えるように」といいました。
命じられた天宇受売命の子孫たちは、それからは猿田?古之男神の
名をつぎ、その氏の女を猿女君(さるめのきみ)と呼ぶようになり
ます。

ところで『日本書紀』(第二巻)には、猿田?古は「天神(あまつ
かみ)の子は、当(まさ)に筑紫(つくし)の日向(ひむか)の高
千穂の?触峯(くじふるのたけ)に到りますべし。吾は伊勢の狭長
田(さなだ)に五十鈴(いすず)の川上(かはかみ)に到るべし」
といい、天孫降臨の先導の役を果たし、無事に高千穂嶺に降臨させ
たのでありました。

そんなことから、猿田彦は道祖神にも通じ、天宇受売(うずめ)命
と2神を彫った塔もあります。また60日に1度まわってくるという
庚申(かのえさる)の庚申(こうしん)信仰の、申は「さる」とも
読みます。そんなところから猿田彦神は庚申信仰にも結びついてい
ます。猿田彦はまた伊勢の海で猿田彦がヒラブ貝に手をはさまれて
溺れかかった話も残っています。

▼【参考文献】
・「芸術新潮・日本の神々」(新潮社)1996年(平成8)
・『古事記』:新潮日本古典集成・27『古事記』校注・西宮一民(新
潮社版)2005年(平成17)
・『日本架空伝承人名事典』大隅和雄ほか(平凡社)1992年(平成
4)
・『日本石仏事典』庚申懇話会(雄山閣)1979年(昭和54)
・『日本伝奇伝説大事典』乾克己ほか編(角川書店)1990年(平成2)
・『日本全国神話伝説道指南』吉元昭治(勉誠出版)2003年(平成1
5)
・『日本伝奇伝説大事典』乾克己ほか編(角川書店)1990年(平成2)
・『目で見る民俗神3』(境と辻の神)萩原秀三郎(東京美術)1988
年(昭和63)
・『宿なし百神」川口謙二著(東京美術刊)1979年(昭和54)




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