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けふもめげずに与太ばなし(07)

山旅通信【ひとり画ってん】から(画文通信を毎月郵送
【とよだ 時】 漫画家(駄画師)、ゆうもぁ画文業

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▼山旅【ひとり画展】909号「北信・ナウマンゾウの黒姫山の伝説」

【前文】
ナウマンゾウの化石が出土したことで知られる野尻湖の真西にある黒姫
山。「北信五山」(飯縄山、戸隠山、黒姫山、妙高山、斑尾山)のひとつ。
山名は志賀高原大沼池のヌシとの化身との悲恋の末、山上の池に投身
したという領主の娘黒姫の伝説に由来するという。役ノ行者が登り七ツ池
まで行ったとき弁財天を拝したのが開山のはじまりだという。「日本二百
名山」や、「信州百名山」にも選定されています。
・長野県上水内郡信濃町。

▼909号 「北信・ナウマンゾウの黒姫山の伝説」


【本文】

 長野県北部の信濃町に、湖底や湖岸からナウマンゾウの化石発見さ

れたことで名高い野尻湖があります。一名芙蓉湖ともいうそうです。その

野尻湖を囲むように、南から時計回りに飯縄山、戸隠山、黒姫山、妙高

山、そして東側に斑尾山がそびえています。これらを「北信五山」というそ

うです。



 その一つ野尻湖の真西にあるのが黒姫山(くろひめやま)です。黒姫

山の山名は室町末期に、大蛇の化身との悲恋の末、山上の池に投身し

たという領主の娘黒姫の伝説に由来するという。「日本二百名山」(深

田クラブ選定)、「信州百名山」(清水栄一選定)。



 昔、ここで鷹狩りをしたため一名御巣鷹山。またその形から地元では

信濃富士とも呼ばれているそうです。この山の最高峰(標高点2053m・

かつての二等三角点(2053.4m)は現在(2014年3月)は亡失)は

外輪山の最高点。その北西寄りちょっと低いところに中央火口丘の御巣

鷹山(2046m・小黒姫)があります。



 外輪山と中央火口丘の間は、三日月形の火口原になっていて、大池

や七ツ池などの湿原が広がっています。山頂には石の祠があって中央

に大毘沙門天王、右側に七ツ池竜王、左側に黒姫弁財天と彫られてい

ます。『日本歴史地名大系20・長野県の地名』によれば、そもそも役ノ行

者がこの山に登り、七ツ池まで行ったとき弁財天を拝したのがはじまりだ

という。



 また平安時代中期の寛仁4年(1020)に恵心僧都源信(えしんそうず

げんしん)という天台宗の坊さんが、万民豊楽、仏法興隆を祈願。この山

に登り、黒姫弁財天の像を刻み、まつったという(「雲竜寺由来」)。また

「…本村人民該山に入り、秣(まぐさ・馬草)を刈りて耕地の肥養となし、

伐木採薪以て生計の基となす。(「長野県町村誌・戸隠村」)とも書かれて

います。



 東側山麓の信濃町柏原地区仁之倉部落は俳人小林一茶の生誕の地

として知れています。一茶の俳諧俳文集『おらが春』には「おのれ住める

郷は、おく信濃黒姫山のだらだら下りの小隅なれば、雪は夏消えて、霜

は秋ふる物から」とあります。黒姫山の山名になっている黒姫伝説は複数

あります。



 【黒姫伝説・1】戦国時代にいまの長野県中野市に、高梨氏という一族

がいました。高梨氏の武将高梨政盛(別の説では政頼)に黒姫という美し

い姫様がいたという。ある日、殿様は黒姫とお花見に出かけました。その

時白い蛇が一匹あらわれました。「姫、あの蛇にも酒盃をあげてみなさ

い」と殿様がいいました。蛇は姫が差し出す盃をうれしそうに飲み干しまし

た。



 その後、殿様のところに立派な姿の若者が訪ねてきました。「お花見の

時、黒姫からお酒をいただいた者です」。そして、自分は志賀高原の大

沼池にすむ竜なのだが、黒姫をぜひ妻に貰いたいというのです。殿様は

驚きました。竜は毎日殿様のもとを訪れ熱心にお願いします。そんな姿

にいつしか黒姫も心ひかれていくようです。



 困った殿様は家来と相談。龍に罠を仕掛けます。策略にまんまとかか

った竜は殺されそうになります。怒った竜はたちまち天にかけのぼって行

きました。そのとたん、雲がわき起こり雷鳴が鳴って城下は大嵐に襲わ

れ、濁流が家々を押し流しはじめました。



 これを見た黒姫は黒雲に向かい「あなたの妻になりましょう。早く嵐をし

ずめて下さい」と呼びかけました。その声を聞きつけた竜が天から舞い降

り、黒姫を背に乗せ妙高と戸隠の間の山に降りたち、山頂の池で黒姫と

暮らすようになりました。以後、その山を「黒姫山」と呼ぶようになったとい

うことです(『童話の森』)。



 【黒姫伝説・2】戦国時代の天文年中(1532〜1555年)。いまの長野

県中野市の武将高梨政頼が、ある日家来と美しい黒姫を伴い、志賀高

原の大沼池へ花見に出かけました。その翌日、立派な身なりの若者が、

殿様に対面を申し込んできました。黒姫に求婚を申し込みにきたというの

です。慌てた武士は若者を待たせ、家老と供に戻りましたが、その姿はも

はやありませんでした。不思議な若者は、翌日も、またその翌日も同じこ

とをいっては姿を消します。殿様もさすがに疑い家来と相談、若者に策

略を仕掛けます。



 この罠にはまった若者は、大けがを負って消えました。家来が血のあと

をたどってみると、いつか黒姫と花見に出かけた大沼池で消えていまし

た。その日から、若者はあらわわれなくなりましたが、そんなある日、化粧

をしようと鏡にむかった黒姫の首から胸にビッシリと蛇のこけらが生えてい

ます。そして姫の体は次第に蛇の体のようになっていくのでした。



 悲観した黒姫は、乳母のお種を連れて家を出ました。黒姫は妙高と戸

隠の間の山の頂上にたどり着くと、もう私は人間の姿ではないと、自分の

化粧道具を捨てました。捨てた化粧道具は7つの池になりました。さらに

両親からもらったお守りを捨てると、それは大きな池となりました。姫はそ

こに身を投げました。



 乳母もその後を追いました。それからは黒姫が捨てた化粧道具ででき

た池を「7つ池」、姫が身を投げた池を「大池」、お種が身を投げた池を

「種池」と呼ぶようになりました。しかし、それでも大沼池の主の怒りはおさ

まらず、高梨家の領地に洪水を起こし、何もかも押し流してしまったという

ことです。(『野尻湖と伝説』)。



 【黒姫伝説・3】黒姫山の山麓に百姓の貧しい父娘が住んでいました。

娘の名前は黒姫といいました。ある時父親が病気になりました。娘は一生

懸命看病しましたがよくなりません。そんなある日夢枕に白髪の老人があ

らわれ、湖にすんでいる金のフナを食べさせればなおると告げました。黒

姫はどうすれば金のフナがつかまるのか分かりません。



 するとそこへ釣り竿を持った若者があらわれ、娘の話を聞き金色のフナ

を釣ってくれました。父親の病気も次第によくなっていきました。やがて娘

と若者は恋仲になりました。しかし、ふたりは悲しいかな身分が違いすぎ

ました。若者は野尻の庄屋の息子だったのです。



 彼はやがて近郷の庄屋の娘と結婚することになりました。嘆き悲しんだ

黒姫は、ついに湖に身を投げてしまいました。若者の婚礼の日のこと、突

然黒雲が式場を覆いました。そして1匹の大蛇があらわれると、若者をさ

らうと黒姫山へと飛び去っていったということです。



▼黒姫山【データ】
【所在地】
・長野県上水内郡信濃町。JR信越本線黒姫駅の西6キロ。JR信
越本線黒姫駅から歩いて5時間で黒姫山。写真測量による標高点(2
053m)(2等三角点は亡失)がある。
【位置】
・標高点:北緯36度48分48.5秒、東経138度7分37.8秒
・三角点(亡失):北緯36度48分48.4秒、東経138度7分37.8秒
【地図】
・2万5千分1地形図名:信濃柏原

▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典20・長野県』市川健夫ほか編(角川書店)1990
年(平成2)
・『信州山岳百科・3』(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・『信州百名山』清水栄一著(桐原書店)1990年(平成2)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『日本山嶽志』(新潟の豪農高頭式編纂)1906年(明治39)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・『日本三百名山』毎日新聞社編(毎日新聞社)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『名山の民俗史』高橋千劔破(ちはや)(河出書房新社)2009年(平成
21)
・『日本歴史地名大系20・長野県の地名』一志茂樹ほか(平凡社)1990
年(平成2)


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▼第1章 【誕 生】 
 ・誕生 蒙古斑 へその緒 血液型 産湯 産飯 ・お七夜 ・命名 制限漢字
  名付け親 ・出生届 ・宮まいり ・氏神
▼第2章 【生育期】
 ・お食い初め ・初節供 桃の節供 端午の節供 菖蒲湯 ・初誕生 ・七五三
 ちとせあめ ・習い事 そろばん 書道 ・幼稚園 ・保育所
▼第3章 【就学期】
 ・義務教育 ・小学校 ランドセル えんぴつ 黒板・チョーク 先生 教科書
 通知表 校長先生 PTA 夏休み  修学旅行 教育委員会 テスト  ・初潮
 ・中学校 クラブ活動 ・入学試験 神頼み さい銭 絵馬 かしわ手 ・進学塾
 高等学校 大学校 卒業式 大学院
▼第4章 【成人・就職】
 ・成人 成人式 選挙権 酒 たばこ ・就職 会社 株式会社 社長
 会社の部門 名刺 給料 ボーナス
▼第5章 【結 婚】
 ・見合い ・仲人 ・婚約 婚約指輪 ・結納 結納品 ・嫁入り道具 たんす
 ・大安 ・招待状 ・花嫁 打ち掛け つのかくし ウエディング・ドレス
 ・新郎 ・結婚 ・神前結婚式 神官 巫女 祝詞 三三九度 お神酒
 結婚指輪 玉串奉奠 ・仏前結婚式 ・教会結婚式 ・家庭結婚式
 ・神式結婚式 ・祝儀 ・引き出物 ・忌み言葉 ・披露宴 ディナー形式披露宴
 パーティー形式披露宴 和風  披露宴 席次 乾杯 シャンパン
 ウエディングケーキ お色直し ・婚姻届 戸籍 ・新婚旅行 里帰り ・離婚
▼第6章 【妊娠・出産】
 ・妊娠 ・産科医 ・妊婦 ・出産予定日 ・母子健康手帳 ・母親学級
 ・着帯祝い 戌の日 岩田帯 助産婦 ・安産の神 水天宮 ・つわり ・陣痛
 ・出産 ・出産祝い ・流産・早産
▼第7章 【育児・家庭】
 ・結婚記念日 ・新築 建前 もち投げ 新築祝い ・中元・歳暮 ・転勤祝い
 ・病気見舞い 快気祝い ・誕生日 誕生石 星座 ・育児 ひきつけ 夜泣き
 迷信 予防接種
▼第8章 【年間行事】
 ・正月 年賀状 ・七草 ・豆まき ・バレンタインデー ・ひなまつり 内裏さま
 五人囃子 桜と橘 流しびな ・彼岸 ・こどもの日 こいのぼり ・母の日
 ・父の日 ・七夕さま ・お盆  盆踊り ・月見 ・クリスマス ・大みそか
▼第9章 【壮年・実年】
 ・厄年 厄よけ ・定年 ・敬老の日 ・年祝い 赤いちゃんちゃんこ
▼第10章 【葬 送】
 ・遺言・遺書 ・永眠 死に水 湯かん 枕かざり ・葬儀社 ・北枕西向き
 ・死亡診断書 ・死亡届 ・埋葬許可証 ・戒名 ・納棺 ・祭壇 ・通夜 ・位牌
 ・焼香 ・合掌 ・神式・キリスト教式通夜 ・葬儀 喪主 供物 花輪 数珠
 喪服 香典 不祝儀袋 ・告別式 出棺 霊柩車 神式・キリスト教式告別式
 ・火葬 ・塩 ・土葬・風葬・水葬 ・精進料理 精進落とし ・仏壇 仏具 ・墓地
 墓石 卒塔婆 ・相続 形見分け ・香典返し ・忌中・喪中 ・新盆
▼第11章 【法 事】
 ・法事(法要) 忌日 四十九日 年忌 神式・キリスト教式 ・墓参り


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