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山と里の文化伝承に遊ぶ【画文通信】(01)

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1032号「神奈川県丹沢・おなじみ表尾根」

【前文】
丹沢でおなじみのヤビツ峠から車道を歩き、二ノ塔、三ノ塔、行者ヶ岳、
新大日、木の又大日を経て塔ノ岳への尾根を「丹沢表尾根」というそうで
す。この尾根は展望がよく、また道に迷うこともなく初心者も歩け、丹沢山
塊の銀座コースとして人気があります。ここも古くから大山を行場とした修
験者たちが入峰修行に歩いていたらしい。

▼下記【本文】もどうぞ。

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1032号「丹沢・おなじみ表尾根」


【本文】
 丹沢大山から東にイタツミ尾根を経て「ヤビツ峠」に至ります。そこから

車道を歩き、富士見山荘跡経由、二ノ塔(大平山)、三ノ塔、行者ヶ岳、

新大日、木の又大日を経て塔ノ岳への尾根を「丹沢表尾根」というそうで

す。この尾根は展望がよく、また道に迷うこともなく、体力さえあれば初心

者も歩けるとあって、丹沢山塊の銀座コースとして人気があります。



 丹沢は修験道山伏によって開かれた山が多いですが、ここも古くから

大山を行場とした修験者たちが入峰修行に歩いていたらしい。丹沢の修

験は、大山を行場とした大山修験(当山派)のほかに、大山東方山中の

日向修験(本山派)と、東北東山ろくの八菅修験(本山派)があります。



 ここ表尾根は、日向修験の峰入りのコース。1963年(昭和38)に発見

された古文書に『峯中記略扣(控)』(ぶちゅうきりゃくひかえ)がありま

す。これは日向山霊山寺修験(日向修験)常蓮坊が書き留めた丹沢入峰

修行(4泊5日かけての奥駈け)の作法を示したもの。



 『峯中記略扣』には、日向薬師−大山−門戸口−表尾根−塔ノ岳−

丹沢山−蛭ヶ岳−(丹沢主脈)−青根−帰院というルートをたどると書い

てあります。



 それによると、「三月廿五日ヨリ山入札所薬師末社札納ニノ宿湯尾権

現夫ヨリ地蔵観音ノ峰木立暫ク行ヲ山ノ神有是ニ札納法示祓シ而モ是ニ

八菅山モ札納是ヨリ石尊迄ハ八菅山日向山ト同行所也八菅山ハ是ヨリ

里ニ出ル也日向山ハ是ヨリ奥ガケ行所石尊大天狗小天狗江札納夫ヨリ

閼伽ノ水有是ヨリ丹沢問答口(門戸口)江出山王権現札納此所迄ハ里人

送リ是ヨリ別レ行人斗リ山江入小家ヲカラケ一宿ス雨具以外ハ一切ナシ

一草物一枚也……」とつづきます。



 ちょっと長いですが、およそ次の通りです。入峰は3月25日より、日向

薬師から山に入り札所薬師末社、および各所に札を納めお祓いをし、大

山山頂石尊までは八菅山修験と日向山修験が同行。日向山修験はここ

から奥駆け行場の大天狗小天狗に札を納め、閼伽(あか)ノ水(仏に手向

ける水)のあるところを経て、護摩屋敷の水の先の門戸橋がある場所・門

戸口へ出る。



 ここで里人の見送りを受けた修行者の一行は、辺りの小屋に一泊す

る。雨具以外は一切なく、筵(むしろ)1枚だけである。ここから出発して烏

ヶ尾(烏尾山)に登る。烏尾山は、2羽の「ミサキガミ」ともいわれるカラスが

案内してくれたという伝説からその名がある。この山の上には蔵王権現の

石仏があり、これに札を納めてお払いをする。向ノ峰(向こうの峰)に移り

スズタケの中を行くと前尊仏(場所不明)に出る。ここで札を納めお祓い

をして一泊する。



 ……この部分についてはこんな説もあります。「ここでいう烏ヶ尾はいま

の烏尾山ではなく、三ノ塔(1204.8m)を指していると考えた方が自然であ

る。三ノ塔の北東に延びる尾根から三ノ塔の北側斜面に出ると、「向ノ峰」

の烏尾山(1136m)が視界の正面に飛び込んでくる。日向の山伏はこの

日、明日からはじまる厳しい修行に備えて水で身を清め、これから向かう

聖地への遥拝を行う必要があった。「尊仏」とは表尾根の中でも重要な聖

地 塔ノ岳の別名でもある。烏尾山から水無川の谷に向かって尾根をし

ばらく下ると、かつてはヒゴノ沢へ降りる道が通じていた塔ノ岳の遥拝地

がある。いまは植林に囲まれて遥拝もままならず塚と馬頭観音がひっそり

と建っている(『丹沢の行者道を歩く』城川隆生氏著)というものです。



 さて、『峯中記略扣(控)』に戻ります。烏尾山から北へ行くと大きな岩

(行者岳)の上に役ノ行者像がある。これより下ると「新客覗」の岩がある。

新客(初めて峰入りした者)は腰に縄をしばり、奈良山上ヶ岳「西の覗き」

のように、崖から宙づりになって下を覗かされる。



 そこから茅の尾根を登り、大日尊(木ノ又大日)に札を納める。ここから

峰に登ると「塔ノ岳」である。ここには大きな平地で、弥陀薬師の塔があ

る。すぐ西の方には富士山が見え、北に行くと黒尊仏の岩がある」。ここ

から山伏たちは主脈を通って、いまの相模原市津久井の青根に下山す

るのです。



 山中の修行は筆舌尽くしがたいほど厳しく、子供や老僧などの入峰は

とても無理だという。行者は一人一升の焼米を携帯、宿泊も野宿が多か

ったというもの。



 「檀家ト申ハ七ケ年目ニ入峰ノセツ檀廻致ス邑 郡内 青根村 青

野原村鳥屋村 煤ケ谷村 七沢村 日向村 メ六ケ村入峰先達相勤

候ニハ振舞以外諸邑ニ而金子弐拾両程相拭各々薄稼故延年ニ相成申

候漸ク一代ニ四度カ五度位也」とあり、入峰ルートと各村への「檀廻」が

記されています。



 日向修験の峰入り一行は、このように日向薬師を出発、大山の西山ろ

くにあった門戸口で一泊、烏ヶ尾の先の尊仏で一泊、竜ヶ馬場の先の弥

陀ヶ原で一泊、不動ノ峰で一泊と、計4泊5日をかけての奥駆けだったわ

けです。この峰入り修行は、1872(明治5)年の修験道廃止令施行まで

つづきました。



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典14・神奈川県』伊倉退蔵ほか編(角川書店)
1984年(昭和59)
・『古代山岳信仰遺跡の研究』大和久震平著(名著出版)1990年(平成
2)
・『丹沢』(アルパインガイド37)羽賀正太郎(山と渓谷社)1980年(昭和
55)
・『丹沢 尊仏山荘物語』山岸猛男(山と渓谷社、1999年)
・『日本歴史地名大系14・神奈川県の地名』鈴木棠三ほか(平凡社)
1990年(平成2)
・『峰中記略扣(ぶちゅうきりゃくひかえ)』常蓮坊


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・名のある人の恥知らず、名も無きわれら恥を知る。
・人と群れること、付き合うことが苦手で、フリーになって半世紀。
いまごろになってそれが一番必要な職業だと気がついた。どうりで
生きにくかったわけだ。