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山旅通信【ひとり画っ展】(05)
【とよだ 時】

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山旅通信【ひとり画っ展】931号「北アルプス・朝日岳と幻の雪形」


【概略文】
 北アルプス後立山連峰の北部、白馬連山高山植物帯の北部を仕切
る朝日岳。山頂付近では夏でもたくさんの残雪があり、高山植物が
群落しています。この山はは丸くどっしりとしていて、重量感もあ
りおおらかな山容です。

 山頂は広く標識や展望指示盤が置かれています。この朝日岳は越
後側の呼び方で、富山県朝日町湯ノ瀬・小川温泉の蓮華の湯付近か
ら見て、最初に朝日の光の当たるのが朝日岳なのでこの名がついた
という。

 この朝日町の町名はこの山に由来しています。この山は昔はヱブ
リヶ嶽と呼んでいました。江戸時代の越中の絵図および地誌類には、
恵振ヶ嶽、恵夫理ヶ嶽、?ヶ嶽と記されています。

 カタカナで「ヱフリ」、「ヱブリ」としているものももあるそうで
す。「ヱブリ」は4,5月ごろ残雪にあらわれる田をならす農具の
?(エブリ)の雪形に由来するという。

 しかしいまだにこの雪形は確認されていないということです。
・新潟県糸魚川市と富山県朝日町との境

★ご用とお急ぎのない方は、下記の【本文】もどうぞ。

▼931号「北アルプス・朝日岳と幻の雪形」


【本文】

 北アルプス後立山連峰の北部、白馬連山高山植物帯の北部を仕切
る名山朝日岳(標高2418m)。富山県朝日町と新潟県糸魚川市にま
たがり、山頂付近では夏でもたくさんの残雪、ニッコウキスゲなど
高山植物が群落しています。


 朝日岳は丸くどっしりとしていて、重量感もありおおらかな山容
です。山頂は広く標識や展望指示盤が置かれています。眺望は雪倉
岳、白馬岳、剱岳などから遠く佐渡島まで望めます。


 朝日岳は越後側の呼び方で、富山県朝日町湯ノ瀬・小川温泉の蓮
華の湯付近から見て、最初に朝日の光の当たるのが朝日岳なのでこ
の名がついた(塚本繁松「朝日岳以北の処女境(六)」)という。こ
の朝日町の町名はこの山に由来(1954年(昭和29)発足)していま
す。


 この山は昔はヱブリヶ嶽と呼んでいました。江戸時代の越中の絵
図および地誌類には、恵振ヶ嶽、恵夫理ヶ嶽、?ヶ嶽と記されてい
ます。これですべて「えぶりがだけ」と読んだという。カタカナで
「ヱフリ」、「ヱブリ」としているものももあるそうです。


 「ヱブリ」は4,5月ごろ残雪にあらわれる田をならす農具の?
(エブリ、柄振り)の雪形に由来するという。この雪形についてこ
んな伝説があります。昔、田んぼの代(しろ)かきを1日で終わら
すのを常とする百姓がいました。


 ある年、夕暮れまでに終わらせようとしていましたが、終わりそ
うにありません。そこで、大胆にも沈む太陽を呼び戻そうとしまし
た。すると天罰がおり、代かきをしていた農夫が、農具とともに遠
〜く奥山に吹き飛ばされてしまいました。


 その農夫や農具が4,5月ごろ、剱岳北方・僧ヶ岳南東にあるの
駒ヶ岳(2002.5m・富山県黒部市)にあらわれる「馬」と「鼻取り」
の雪形(『山の紋章』p166に写真あり)であり、柄夫理ヶ嶽(ヱブ
リヶタケ・朝日岳)の?(エブリ)の雪形になってあらわれている
というのです。


 しかし、駒ヶ岳の「馬」と「鼻取り」の雪形は分かるのですが、
残念ながら朝日岳の雪形は、出る場所も形もいまだに確認されてい
ません。この朝日岳のエブリの雪形については、山岳写真家であり、
雪形の研究家の田淵行男氏が『山の紋章・雪形』のなかで、幻の雪
形として詳しく述べています。


 魚津駅方面から見て、ひとつ朝日岳のエブリの雪形らしきものと
して「頂上から右手に引く稜線上の、なだらかな突起の直下の黒影」
をあげていますが、これもはっきりしません。


 さて、山名がヱブリヶ嶽から朝日岳になるのは、大日本帝国陸地
測量部の5万分の1地形図「黒部」が発行されてからだという。ヱ
ブリヶ嶽の名残は、いまは朝日岳西方1791m峰に「イブリ山」と転
訛してその名を留めています。


 朝日岳山頂の西側朝日小屋のある「前朝日」西面の「夕日ヶ原」

と呼ばれる平原は、広大でお花畑として知られています。夕日ヶ原
は大正から昭和の初めにかけて白馬岳以北の富山県側の山と谷に足
跡をしるした塚本繁松という人とが命名したところ。


 塚本繁松は、1923年(大正12)黒部の山案内人・佐々喜助七とイ
ブリ尾根を登ってここを発見。山友である鈴木弘の発案で1926年(昭
和元)に命名したもの。


 高山植物の保護などを目的とした富山県の白馬管理センターもあ
ります。朝日岳山上から北へのびる稜線は栂海新道(つがみしんど
う)として、新潟・富山県境を犬ヶ岳、白鳥山とたどり、親不知海
岸(新潟県青海町)までつづいています。


 白鳥山の西麓新潟県西頸城郡青海町上路(あげろ)地区(旧上路
村)には「山姥伝説」があるという。ここの山姥はイメージと異な
り、村人にお金や食べ物を分け与えたり、知恵を授ける、慈悲深い
人物として伝えられています。山姥神社もあり、その横には大きな
藤が木にからまった「金時ぶらんこ」もあります。


 箱根の山姥と同じように、ここも山姥の子供は金時(金太郎)だ
との説があります。その説を裏打ちするように、金時が遊んだとい
う「金時手玉石」があり、また山姥日向ぼっこ岩もあります。ここ
の山姥(鬼女)たちも漂着した外国人だったらしいという。


 何百年かむかし、荒れ狂う日本海で木の葉のようにもみ抜かれた
ヨーロッパ人の船が、流れ流れて親不知付近に漂着。そのなかで助
かった何人かがなんとか崖を登ってここに落ち着いたのではないか
という。


 何百年かも昔ですからこの変わった人種が「鬼」に見えたのも無
理はありません。当時の人たちは、その姿形を「形人の如し。長さ
2丈(6m)余、黒色赤目にして黄髪、山樹中に巣をつくって」と
まで形容しています。


 実際に山姥の住んでいたという「山姥の洞窟」というのが、白鳥
山の中腹標高900mにあります。その大きさ幅2間(約3.5m)、高
さ7間(約13m)、その奧は信州(長野県)につづいているという。
このごろでは彼女たちは信州に移ってしまったが、時にはなつかし
いこの洞穴に帰ってきて、赤ん坊の赤い着物を干すことがあるとい
います。


 そして遠く日本海を望みながら「わが住む山家(やまが)の景色、
山高うして海近く、谷深うして水遠し。前には川水こんこんとして
月真如の光をかかげ、後(うしろ)には岩松魏々(がんしょうきき)
として風常住(かぜじょうじゅう)の夢破る」と唱っているという。


 この「山姥の洞窟」に行った人の話では、洞の中はいまは15mほ
どで行き止まりになっているという。登山記念の標の札が沢山建て
てあります。近くに平たい「山姥の踊り岩」があり、山姥がいつも
この上で舞っていたのだそうです。


 文殊菩薩の石像などもおいてあり、ここは神域だったのかもしれ
ません。世阿弥が作った能の曲目「山姥」は、上路の山姥伝承が元
になっており、世阿弥本人がこの地を取材して作られたものだそう
です。



▼【朝日岳データ】
【所在地】
・新潟県糸魚川市と富山県下新川郡朝日町(合併せず)との境。大
糸線平岩駅の南西13キロ。JR大糸線白岩駅からバス、蓮華温泉か
ら歩いて3時間半で朝日岳(2418.0m)。2等三角点(2418.0m)
と、西方1132mに朝日小屋と、白馬管理センターがある。
【名山】
・「日本三百名山」(日本山岳会選定):第251選定:日本百名山以
外に200山を加えたもの。
・「新日本百名山」(岩崎元郎選定):第41選定
【位置】
・二等三角点:北緯36度49分36秒、東経137度43分47秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「黒薙温泉(富山)」



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典16・富山県』坂井誠一ほか編(角川書店)1
979年(昭和54)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「旅と伝説」三元社(1942年(昭和17)1月号)
・『富山県山名録』橋本廣ほか(桂書房)2001年(平成13)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本歴史地名大系16・富山県の地名』(平凡社)1994年(平成6)
・『ふるさとの伝説・日本発見」(暁教育図書)1980年(昭和55)
・『山の伝説・日本アルプス編』青木純二(丁未出版)1930年(昭
和5)
・『山の紋章・雪形』田淵行男著(学習研究社)1981年(昭和56)



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【目次一覧】(加筆部分)
▼第1章・山・谷・峠の神と怪物
 ・雨乞いの神 ・温泉神 ・金精神 ・蔵王権現 ・水神 ・峠神 ・一言主の神
 ・人捜しの神 ・風神 ・夜叉神 ・1山姥 ・山の神 ・山彦 ・山宮里宮
 ・雷神 ・竜神 ・薮神 ・8森神  ・川神 ・野神
▼第2章・山の妖怪
 ・一本ダタラ ・2河童神 ・巨人ダイダラ坊  ・妙義山のダイダラ坊
 ・荒船山のダイダラ坊  ・八ヶ岳の大男 ・手長神・足長神
 ・鳥海山の手長足長  ・磐梯山の手長足長 ・土蜘蛛 ・猫又神
 ・山人怪人山男 ・庚申山の怪人 ・茅ヶ岳の怪人たち  ・雪女
▼第3章・鬼神
 ・1鬼神 ・房総鹿野山の鬼 ・岩手山の鬼  ・長野有明山の魏石鬼
 ・魏石鬼の子分・常念坊  ・鬼女(安達ヶ原の鬼) ・戸隠山の鬼女紅葉
 ・大峰山前鬼後鬼 ・大江山の酒呑童子  ・三重・滋賀県鈴鹿峠の鬼
▼第4章・天狗神
 ・天狗とは・はじまり ・天狗のいろいろ ・不思議な女性天狗
 ・水天狗円光坊 ・鼻高天狗と飯縄天狗 ・天狗のお経「天狗経」
 ・日本八天狗 ・京都愛宕山太郎坊 ・滋賀比良山次郎坊
 ・長野飯綱三郎 ・東京高尾山の天狗 ・奥多摩御岳山の天狗
 ・箱根の天狗 ・丹沢大山の天狗たち ・秩父の天狗
 ・富士山の天狗 ・青森恐山の天狗 ・岩手山と遠野の天狗
 ・日光の天狗 ・赤城山の天狗 ・関東/妙義山の天狗たち
 ・立山の天狗 ・0木曽御嶽山の天狗 ・白山の天狗 
 ・伊吹山飛行上人 ・京都・鞍馬山の天狗
 ・葛城山と吉野の天狗  ・高野山の天狗  ・白峰山と石鎚山の天狗
 ・九州彦山の天狗 ・天狗の生活・食べ物 
 ・天狗の仕業か「太平記」の記述  ・山移り
▼第5章・仙人
 ・仙人とは ・仙人の階級 ・陽勝仙人 ・浦島太郎神  ・役ノ行者
 ・久米の仙人 ・竿打(さおうち)仙人  ・武内宿禰(たけのうちのすくね)
 ・泰澄(たいちょう)上人  ・日本武尊(やまとけるのみこと)
 ・都藍尼(とらんに)  ・八百比丘尼(はっぴゃくびくに) ・足柄山の五仙人
▼第6章・動物の神
 ・狼神 ・蛙神 ・カラス神 ・狐神 ・熊神  ・猿神 ・鹿の神 ・狸神
 ・野槌神(ツチノコ)  ・犬神 ・牛神 ・馬神→馬頭観音 ・鶏神 ・猫神
▼第7章・偉人・英雄神
 ・弘法大師 ・惟喬親王(これたかしんのう) ・金太郎神  ・坂上田村麻呂
 ・聖徳太子  ・徐福 ・為朝神 ・蜂子王子(能除仙)  ・弓削道鏡
 ・畠山重忠  ・普寛行者  ・将門神 ・都良香  ・以仁王 ・桃太郎神
 ・義経神 ・義仲神  ・物くさ(物臭)大神  ・頼政神(よりまさ) ・安徳天皇
  ・実盛神(さねもり) ・元三大師
▼第8章・草木の神
 ・サカキ ・シキミ ・杉の神 ・松の神
▼第9章・路傍の石碑
 ・石神 ・要石 ・甲子(きのえね)  ・4庚申塔 ・青面金剛(しょうめんこんごう)
 ・百庚申(ひゃくこうしん) ・7金比羅宮  ・猿田彦神(さるだひこ)
 ・地神(じがみ)  ・十王(じゅうおう) ・日待(ひまち)塔  ・月待(つきまち)
 ・十五夜塔  ・二十三夜塔  ・月待塔01(三日月十三夜十六夜)
 ・月待塔02(七夜十七夜十八夜十九夜廿日夜二十一夜二十二夜)
 ・月待塔03(二十四夜二十五夜二十六夜二十七夜二十八夜二十九夜)
 ・巳待塔(みまち) ・09-19天社神(てんしゃじん) ・09-20道祖神(どうそじん)
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【とよだ 時】 山の伝承探査
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