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▼山里はいかい(本文のページ)(06)
【とよだ時】(豊田時男)
▼山里のへんな神々「鬼扱いされた神」
【短略説明】
東京近郊でもよく耳にする一言主神社。
この神は吉兆を一言で告げるとされ多く
の人が参詣に訪れ、神社札などを貰い受
けています。その総元締めは奈良県御所
市に鎮座する葛城一言主神社です。この
神は役ノ行者に鬼として扱われ、行者の
怒りにふれ呪術で体を縛られ黒ヘビにな
って谷底に置きざりにされているという。
・奈良県御所市
【本文】は下記をどうぞ。
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(長文です。拾い読みしてください)
▼山里の変な神々「鬼扱いされた神さま」
【説明本文】
東京近郊でもよく耳にする一言主(ひとこ
とぬし)神社。この神は吉兆を一言で告げる
とされ多くの人が参詣に訪れ、神社札などを
貰い受けています。その総元締めは奈良県御
所市(ごせし)に鎮座する葛城一言主神社で
す。
この神が鬼扱いにされていたというので
す。遠い遠い飛鳥時代、役ノ行者は奈良県と
大阪府の境、奈良葛城山(かつらぎさん)か
ら金峰山(きんぷせん)間の空中に岩の橋を
架けるという遠大な計画を立てました。全国
からモロモロの天狗や鬼神・怪物たちが集め
られ、役ノ行者に突貫工事を命じられました。
鬼神たちは無理な注文に嘆き憂えますが、
行者はゆるしてくれません。鬼神たちは、自
分のみにくい姿を恥じて人のいない夜に懸命
に働きますが作業はいっこうにはかどりませ
ん。怒った役ノ行者は、いっしょに働いてい
た一言主の神を呼びつけ「なぜ昼間も働かぬ」
と厳しくせめます。
「そんなに無理をいうなら、もう働きませ
ん」と一言主の神は反抗します。怒った行者
は、呪術で一言主神を縛り、谷底に閉じこめ
てしまいました。これを恨んだ一言主は、都
人の魂にのり移り、「役ノ行者が天皇を傾け
んとしている」と朝廷に託宣させます。驚い
た天皇は行者を捕らえ伊豆の大島に流したと
いう(『今昔物語集』巻十一)。
また、『日本霊異記』(にほんりょういき)
上巻二十八では、一言主の神はいまでも谷底
で縛られたままだとしています。能「葛城」
でもまだ呪縛から解けないでいるとし、一言
主の神を女神の形でえがいています。この工
事がはじまったのは、ある本では695年(持
統9)、また別の記述では697年(文武元)
のことだともいわれています。
だいたい一言主は、大国主(おおくにぬし)
や事代主(ことしろぬし)などと同じ「ぬし
神」であり、国つ神であり、葛城山(いまの
奈良県金剛山)の神であるといいます。『古
事記』(下巻・雄略天皇条)によれば、「…天
皇、葛城山(かづらきやま)に登り幸(いで
ま)しし時に、……。(→)
(→)その向へる山の尾より(向こうの山
の尾根づたいに)、山の上に登る人あり。す
でに天皇の(全く雄略帝の)鹵簿(みゆきの
つら・鹵=ろ)に等しく(同じ形で)、また
その束装(よそひ)の状(かたち)、また人
衆(ひとかず)、相似(あひに)て、傾(か
たぶ)かざりき(同じだった)」。名前を聞く
と、相手も同じことをいう。(→)
(→)怒った天皇は矢をつがえると、相手
も同じように矢をつがえます。天皇は「お互
い名乗ってから矢を放とう」というと、「…
あは(私は)悪事(まがごと)も一言(ひと
こと)、善事(よごと)も一言、事離(こと
さか)の神、葛城(かづらき)の一言主の大
神ぞ」と名乗りました。(→)
(→)それを聞いた雄略天皇は恐縮し、我
が大神の御姿とは存じませんでした。そして、
御大刀(おおみたち)や弓矢、また百の官人
たちの着ている衣を脱がせて、一言主神に献
上したとあります。一説には一言主は、スサ
ノオノミコトの子だともいいます。
これほどの神ながら、それからわずか200
年後の695(持統9)年、あの役ノ行者(え
んのぎょうじゃ)に、鬼として使役されるの
ですから、その落ちぶれかたはひととおりで
はありません。鬼だけでなく黒蛇になって谷
に捨てられ、いまでは恨む気力もなくなり、
萎えてしまっていると書く本まであります。
『役行者本記』(えんのぎょうじゃほんぎ)
という本では、その谷こそ金剛山東方・御所
市西にある「蛇谷」だとし、『本朝神仙伝』(ほ
んちょうしんせんでん)では吉野山にあると
いうことになっています。
大阪府と奈良県にまたがる修験道場の中心
地だった金剛山(1125m)。その北方大和葛
城山の先に岩橋山(659m)というピークが
あります。ここはまさに金峰山へ架けようと
した岩の橋の山名です。四等三角点のある山
頂南側わずかに下った所から、西へつづくふ
みあとをものの5、6分。ピークの下に、未
完成の岩橋があります。あたりにはない大岩
が橋のたもとらしく人工的な形で金峰山へ向
かっています。
しかしその積み方は何とも投げやりで、3
つ、4つ運んできた岩を放り投げたという感
じです。これでは役ノ行者も怒るわナと思わ
ず笑ってしまいました。かつて葛城山(いま
の金剛山)山頂にあったという一言主神社は、
いまは同市森脇地区にまつられ、参拝者に「い
ちごんさん」と親しまれ、私が訪れたときも
大勢の参拝者でにぎわいそのわきで「一陽来
復」ののぼりがはためいていました。
▼【参考文献】
・『役行者本記』:『役行者伝記集成』銭谷武
平(東方出版)1994年(平成6)
・『役行者伝記集成』銭谷武平(東方出版)1994
年(平成6)
・『古事記』(新潮日本古典集成27)校注・
西宮一民(新潮社版)2005年(平成17)
・『今昔物語』(日本古典文学全集24)馬淵和
夫ほか校注・訳(小学館)1995年(平成7)
・『日本霊異記』僧景戒著:(日本古典文学全
集6)中田祝夫校注・訳(小学館)1933年
(昭和8)
・岩波文庫『日本書紀(三)』校注・坂本太
郎ほか(岩波書店)2000年(平成12)
・『本朝神仙伝』(大江匡房):日本古典全書
『本朝神仙伝』川口久雄校注(朝日新聞社)1971
年(昭和46)
・『神社辞典』白井永治ほか編(東京堂出版)
1986年(昭和61)
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