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▼山里はいかい(本文のページ)(03) 
【とよだ時】(豊田時男

▼山里のへんな神さまかかし(藁人)神」

【簡略説明】
田んぼの中のかかしも神サマです。漢字では
案山子。中国では老鴉、偶人、藁人と書くそ
うです。節分の日、炉の中にネギやニラ、生
葉、イワシの頭など悪臭を放つものをくべて
焼き、悪臭で鬼や疫病神、魔を追い払おうと
する「焼いかがし」が「かかし」の元だそう
です。「イワシの頭をヒイラギの枝にさして
戸口にさす」行事で残っています。

【本文】は下記をどうぞ。

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(長文です。拾い読みしてください)
山里のへんな神さまかかし(藁人)神」

【説明本文】
 田んぼの中でポツンと立っている、あのカ
カシもれっきとした神サマです。漢字では、
なぜか「案山子」。中国では「老鴉」「偶人」
「藁人」と書くそうです。古い歌に、♪山田
の中の一本足の案山子(かかし)天気のよい
のに箕(みの)笠つけて……とあります。こ
れは小学校唱歌に歌われたカカシ。戦前、戦
中派にはなんともなつかしい歌です。

 使い古した衣類をまとい、口をへの字に曲
げて田、畑に突っ立ち、ただひたすらに害虫
を追い、とりわけ雀(すずめ)から稲を守っ
ている……。しかしいまは時代も移りすっか
り形も変わって観光用に、また子供たちの情
操教育の一環として行っている農作業体験用
の田んぼに、色とりどりの洋服をまとってな
らんでいます。

 それでは「かかし」というのか。かつては、
鹿など野生動物を脅して作物を守る「鹿驚(か
がせ)」の意味だと言われてきました。しか
し、いまでは「嗅(か)がせ」とするのが一
般的なのだそうです。嗅がせとは、古わらじ、
毛髪、ボロ布、肉などを焼き、悪臭を出して
スズメなどの鳥類を追い払おうというもの。

 昔、節分の日、炉の中にネギやニラ、生葉、
イワシの頭など悪臭を放つものをくべて焼
き、悪臭で鬼や疫病神、魔を追い払おうとす
る「焼いかがし」という行事がありました。
これも若い人たちにはすでに忘れられ、過去
のものになりつつありますが。

 それはともかく、これがまさに「かかし」
の語源なのだそうです。いまでもお年寄りの
家では時々見かける、「イワシの頭をヒイラ
ギの枝にさして戸口に魔よけとしてさす」行
事のことだけに残っています。

 かつて、カカシには大きく分けて、三つの
種類がありました。1番めは、田んぼに注連
(しめ)をはり、竹やわらで神の依代の人形
を作ったり、神札を立てるものです。しめ、
そめなどともいいます。2番めに、悪臭を出
して鳥や獣を追い払おうとするものです。3
番めは、色や形、音などで鳥獣をおどすもの
があります。

 もっともいまは風にゆられて絶えず動く装
置やブリキ、銀紙、ハトをおどす大きな目ン
玉の風船など様々なものがあり、ときには郷
愁をさそうような「かかしコンクール」まで
開かれています。

 では、「山田の中の一本足の案山子……」
がなぜ神なのか。天気のよいのにみの笠つけ
て、ただ立っている……それだけのことかと
思ったら、大違いのコンコンチキなのです。
みのや笠をつけることは、他の世界からこの
世界にやってくる「神や異人」をあらわして
いるのだそうです。

 群馬県では、小正月にヌルデで作った「か
かし神」を神棚に供えてまつります。また長
野県では「カカシアゲ」という行事があり、
旧暦十月十日、田んぼからかかしを持ってき
て、庭にまつったりします。また餅をついて、
長く育ったダイコンをかかし様の箸(はし)
になぞらえて、一緒に供える所もあります。
カカシを田の神の代表と見ているようです。

 カカシはあの『古事記』上つ記・大国主神
の国作りの段にも出てきます。「……大国主
の神、出雲の御大之御前(みほのみさき・美
保崎)にいます時に、波の穂より天の羅摩船
(かがみのふね=細長い実が二つに割れると
船の形に似ている多年草のつる草)に乗りて
鵝(ひむし=蛾)の皮を内剥(うつはぎ)に
剥ぎて衣服にしてより来る神あり。かれその
名を問わすれども皆答えず。また所従(みと
も=お供)の諸神に問わすれども皆「知らず」
と白(まを)しき」。

 「かれに多迩具久(たにぐく=ヒキガエル)
白言(まを)さく「こは久延毘古ぞ必ず知り
つらむ」とまをせば、すなわち久延毘古を召
して問わす時に「こは神産巣日神(かみむす
びのかみ=天地のはじめに生まれた三神の
一)の御子、少彦名神(すくなひこなのかみ)
なり」と答白しき」

「……(中略)……故其少彦名神をあらわし
白せりしいわゆる久延毘古は、いまに山田の
曽富騰(そほど)という者なり。この神は足
は行(ある)かねども天下の事を尽(ことご
と)に知れる神にもありける」とあるのがそ
れ。

 この曽富騰とは「そぼつ」、すなわち雨に
濡れてそぼつの意味で、田畑に立つカカシの
ことだそうです。久延毘古も同じカカシのこ
とで、クエとは崩(く)ゆ、毘古は彦で男神
をあらわしているのだそうです。なお、石川
県鹿島町(いまは鹿島郡中能登町)のにある
久?比古(くでひこ)神社は、このカカシ神
・久延毘古神を祭神としています。



▼【参考文献】
・『神々の系図・正』川口謙二(東京美術)1981
年(昭和56)
・『古事記』:新潮日本古典集成・27『古事記』
校注・西宮一民(新潮社版)2005年(平成17)蔵書
・『宿なし百神』川口謙二著(東京美術刊)1
979年(昭和54)
・『日本年中行事辞典』鈴木棠三(角川書店)
1977年(昭和52)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎編(東京堂出
版)1984年(昭和59)
・『日本大百科全書4』(小学館)1985年(昭
和60)



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