▼山のまん画ばなし【本文】のページ(09

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▼山梨県茅ヶ岳の伝説

【略文】
茅ヶ岳にすむ孫右衛門は天狗とも仙人ともいう。山から家に帰って
みるとすでに3代もの時代が過ぎていて、誰も知っているものはい
なくなっていた。悲しんだ孫右衛門は山にこもり、ついに神通力を
得たという。今も祠があるというが確認できない。
・山梨県北杜市須玉町と同県甲斐市敷島町との境。

※ご用とお急ぎでない方は、【本文】もどうぞ。

【本文】
 『日本百名山』の著者深田久弥の終焉地として知られる茅ヶ岳は、
「ニセ八ヶ岳」とも呼ばれています。JR小海線をへだて北西にそ
びえる八ヶ岳連峰に、山容が似ているからだそうです。茅ヶ岳には、
茅ヶ岳、金ヶ岳南峰、金ヶ岳、大明神岳など4つのピークがあり、
その中の茅ヶ岳、金ヶ岳のそれぞれ怪人の伝説があります。


 茅ヶ岳の怪人は荏草(江草とも)孫右衛門といい、天狗とも仙人
ともいいます。となりの金ヶ岳の怪人は、新左衛門といい、仙人と
もいっています。このふたりが仲が悪いのだそうです。


 茅ヶ岳の怪人孫右衛門の前身は、上野国(群馬県)の人だという。
若いとき両親を亡くし、それ以来飲む打つ買うの放蕩三昧。とうと
う身を持ちくずし、親戚や村の者にも見放され、武田信玄の父信虎
の全盛時代(甲府に城を進出させたのが永正16年・1519年)のころ、
茅ヶ岳西麓の山梨県北杜市須玉町(旧北巨摩郡須玉町)の江草地区
に移住してきたといいます。


 ある時山中で仙人が碁を打つのを夢中で見ているうち、ふと気が
ついて家に帰りますが、すでに人間にして三代もの時が過ぎていて
誰も知る人がいなかったという(地元の地誌『須玉町誌』)。それか
らというもの孫右衛門は人とうまくつき合えず、ついに世を捨てて
山ごもり天狗になったという。室町時代の永正年間(1504〜20)の
ことだとそうです。


 それからは孫右衛門は、山中をすみかとし、食料のシカや猿、兎
やキツネを追って山や谷をかけまわっていたといいます。江戸時代
初期のまでは山仕事をしている人の前に時々あらわれたいうことで
す。江戸時代初期の延宝のころ(1673〜81)までは山仕事をしてい
る木こりなどの前に時々あらわれ、木の伐採の手伝いをしたり、分
けてもらった弁当を喜んで食べていたといいます。


 またたばこをやると手のひらに乗せて食べてしまうともいわれま
す。その後だんだん人と会うのがうとましくなり、時々山の中で見
かけることはあっても近づいては来なかったという。


 すっかり人々のうわさから遠ざかった正徳年間(1711〜1716年)、
江草地区の村人が山仕事中、異様な怪物が大岩の上に立ってにらん
でいるのを見つけました。逆立てた頭髪は真っ白で頬ひげは胸まで
とどき、大きな目がらんらんと光り、草の葉、木の皮をつづって着
物にしていたといいます。


 肝をつぶした村人は、命からがらわが家へ逃げ帰りました。する
とたちまち、大風が吹きはじめ黒雲空を覆い、篠つく雨ととどろく
雷鳴に村人は生きた心地がしなかったという。うっかり孫右衛門の
昼寝のジャマをして怒らせてしまったらしいのです。


 日本の仙人37人を解説した『本朝神仙記伝』(平安時代後期の漢
学者大江匡房(おおえのまさふさ)撰録)という古書があります。
それには、「是全く孫右衛門が、熟眠の場なるを知らず、草を刈て
驚かせし故に、斯る変を示したるものならんと、人々語り伝えしと
なん。今も時として姿を顕はすことあり。村人恐れて、孫右衛門天
狗といふとぞ」とあります。


 茅ヶ岳西南の尾根(いまの新左右衛門尾根)には孫右衛門天狗を
まつる祠があると聞きますがまだ確認できていません。江戸時代、
松平定能(まさ)編集した地誌『甲斐国志』では孫左右衛門になっ
ていますが『本朝神仙記伝』などでは孫右衛門の名で登場していま
す。なお、金ヶ岳新左衛門については、
『新・山の神々いらすと紀行』
、加筆部、265号をご参照下さい。また茅ヶ岳饅頭峠、あんこの
ある石「まんじゅう石」は同613号をご覧下さい。



●茅ヶ岳【データ】
▼【所在地】
・山梨県北杜市須玉町(旧北巨摩郡須玉町)と同県甲斐市旧敷島町
各地区名(旧中巨摩郡敷島町)との境。中央本線韮崎駅の北11キロ。
JR中央本線韮崎駅からバス・穂坂柳平から歩いて3時間30分で茅
ヶ岳。二等三角点(1703.6m)がある。そのほかは何もなし。地形
図に山名と三角点の標高の記載あり。
▼【位置】
・二等三角点:北緯35度47分42.21秒、東経138度30分49.5秒
▼【地図】
・2万5千分の1地形図「茅ヶ岳(甲府)」
▼【山行】
・某年6月23日(木曜日・くもり)


▼【参考】
・『甲斐国志』(松平定能(まさ)編集)1814(文化11年):(「大日
本地誌大系」(雄山閣)1973年(昭和48)
・『角川日本地名大辞典19・山梨県』磯貝正義ほか編(角川書店)1
984年(昭和59)
・『甲州の伝説』(日本の伝説10)土橋里木・土橋治重(角川書店)
1976年(昭和51)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『仙人の研究』知切光歳(大陸書房)1989年(平成元)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・『日本歴史地名大系19・山梨県の地名』(平凡社)1995年(平成7)
・『本朝神仙記伝・下の巻』宮地厳夫著(本朝神仙記伝発行所)1929
年(昭和4)国会図書館」デジタルコレクション。


▼この話は山の伝承神話 いらすと紀行 から引用しました。


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