▼山のまん画ばなし【本文】のページ(07)

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▼北アルプス・常念岳の常念坊伝説

【略文】
春、この山にできる雪形は常念坊という坊さんの姿だという。平安
時代、八面大王魏石鬼の手下の常念坊がまゆみ岳に逃げ込んだ。
それからはふもとの酒屋に怪しい僧がやってきては5合の徳利に
5升くれという。つぐと不思議に入ってしまう。「あれは常念坊に違
いない」、人々はまゆみ岳を常念岳と呼ぶようになったという。
・長野県松本市と安曇野市との境

※ご用とお急ぎでない方は、【本文】もどうぞ。

【本文】

 北アルプスの常念岳には春、常念坊という呼ばれる雪形が出て、
ふもとの安曇野の人たちに親しまれ、常念坊伝説までつくられ、ま
た農作業の目安にもされています。雪形は、前常念の東面に黒くあ
らわれ、左向きの姿で、よく見ると手に托鉢用の鉢を持っています。


 4月初旬から下旬にかけて前常念岳の東側に雪形となってあらわ
れ、ふもとの安曇野市(豊科、穂高)付近で見られます。この山は
もともとは「まゆみ岳」と呼ばれていたといいます。平安時代、坂
上田村麻呂が常念岳北方にある有明山の岩屋に住む魏石鬼八面大王
を退治したということです。


 その時大王の手下の鬼・常念坊が空を飛び、まゆみ岳に逃げ込み
そのまますみつきました。この鬼はなぜか念仏をよく唱えていたそ
うです。それからというもの、年の暮れにふもとの村に市が立つと
きまって酒屋に怪しい僧侶がやってきて、5合の徳利を出しては5
升くれという。


 酒屋の親父が頭をひねりながらもついでみると不思議に5升の酒
が入ってしまう。それを村人が聞いて、「あの坊さんはまゆみ岳の
常念坊に違いない」と話し合い、いつかまゆみ岳のことを常念岳と
呼ぶようになったのだそうです。



また密猟者がこの山の谷で野営をしていると、頂上から勤行の経と
鐘の音が夜通し聞こえ、良心の呵責にあい一晩中眠れず、2度とこ
の山に近づかなかったという話もあります。そのほか、同じ長野県
安曇野市穂高(旧南安曇郡穂高町)牧にある栗尾山満願寺のお坊さ
んの常念坊が初めて登った山なので常念岳になったという説(角川
日本地名大辞典)。


 あるいは長野県安曇野市堀金(旧南安曇郡堀金村)では田尻の正
福院(明治維新に廃寺)というお寺の常念坊という山伏が登るよう
になったのが山名のもとだともいわれているようです。


 常念坊は春、4月初旬から下旬にかけて前常念岳の東側に雪形と
なってあらわれます。この常念坊の雪形が消えると白色(ポジ形)
の万能鍬の雪形が南沢の浸食岩壁にあらわれるという。この一帯は
タカネヒカゲ・ミヤマモンキチョウ・クモマベニヒカゲなど、本州
の高山蝶9種の全部を確認できたそうです。


 ちなみに「常念が峰だけ出て雲が帯のようにひくと雨になる」「常
念に朝日が当たるとその日は晴れ」などの言い伝えがあります。


 ある8月、常念岳から三ツ股に下山。ゲート手前の駐車場にはこ
れから登る登山者数人。クルマがズラーッとならんでいます。ゲー
トを通りながらきょうは林道途中のキャンプ場に泊まり、明日に満
願寺へ寄ってみよう。キャンプ場の向かい側には木彫りの工房があ
り、ならべられたいろいろな像の中にひときわ大きい常念坊があり
ました。満願寺の住職にお会いするのが楽しみです。


 翌日、結構な距離をてくてく。ギンギラリンの太陽が容赦なく照
りつけます。たどり着いた満願寺で住職にお聞きしました。「常念
坊?春に出るアレだろ。この寺の常念坊?さあ、聞いたことがない
ナ」エッ。うーむ。知らないといわれればとりつくしまがありませ
ん。たしかに複数の本に載っているんだがな?仕方なく庭木をほめ
ながらお世辞をいって退散しました。


 ちなみに「常念が峰だけ出て雲が帯のようにひくと雨になる」「常
念に朝日が当たるとその日は晴れ」などの言い伝えがあります。そ
れにしても地方の道路には見たるのはクルマだけで人の姿がありま
せん。外を歩く人はいないのでしょうか。炎天下のせいだけではな
さそうです。
・長野県松本市と安曇野市との境



●常念岳【データ】
▼【所在地】
・三股から・長野県松本市安曇と長野県安曇野市堀金との境。大糸
線豊科駅の北西16キロ。JR大糸線穂高駅からタクシーで三股手前
のゲート。7時間で常念岳。
▼【位置】
・標高点:北緯36度19分31.9秒、東経137度43分39.2秒
▼【地図】
・2万5千分の1地形図「穂高岳(高山)」
▼【山行】
・某年8月25日(金曜日・快晴)


▼【参考】
・『北アルプス白馬連峰 その歴史と民俗』長沢武(郷土出版社)1
986年(昭和61)
・『角川日本地名大辞典20・長野県』市川健夫ほか編(角川書店)1
990年(平成2)
・『信州山岳百科1』(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本伝説大系7・中部』(長野・静岡・愛知・岐阜)岡部由文ほ
か(みずうみ書房)1982年(昭和57)
・『日本歴史地名大系20・長野県の地名』一志茂樹ほか(平凡社)1
990年(平成2)
・『柳田國男全集6』柳田國男(ちくま文庫/筑摩書房)1989年(昭
和64・平成1)
・『山の紋章・雪形』田淵行男著(学習研究社)1981年(昭和56)


▼この話は山の伝承神話 いらすと紀行 から引用しました。


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