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岳みち里みち田んぼみち
▼山と田園の伝承神話(本文のページ)(07)
【とよだ時】(豊田時男
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山旅【ひとり画ッ展】
南ア最北部の低山・山梨県釜無川源流釜無山

【短略説明】
生い茂った笹の中にわずかな踏みあと。まる
で笹の波を泳いでいくような中、目の前が開
け前方になだらかな山頂があらわれました。
ササの葉だけがゆれています。平らな山頂は
眺望はありません。西側が開けていれば中央
アルプスが目前なのにもったいない山ではあ
ります。

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(長文です。拾い読みしてください)
南ア最北部の低山・山梨県釜無川源流釜無山

【本文】
 スズランの山として有名な山梨県入笠山の
南方にある釜無山(かまなしやま)は、観光
地化された入笠山の陰に隠れ、また山頂が黒
木などに覆われて眺望に恵まれていないため
もあって訪れる人は少ないようです。この山
は赤石山脈最北部、甲斐駒ヶ岳・鳳凰山系の
北端をなしている山。

 『日本山岳ルーツ大辞典』によれば、釜無
山の「カマ」とは滝のことをいう地形語で、
この山には滝らしい滝がひとつもないという
山名だとあります。また。東面を流れる釜無
川からついたとする説もあります。この山は、
甲州側(山梨県側)・諏訪側(長野県側)双
方共通の入会になっていたそうで、江戸時代
前半の延宝8年(1680)9月、御鷹山への出
入りの禁止、大木伐採の禁止、他国の杣の入
山禁止、萩・蓬・藤葉などを山の口開け以前
に刈ることの禁止などを申し合わせているそ
うです(「釜無山入会議定書」)。

 しかし元禄12年(1699)以後、しばしば
山論が繰り返されて、とくに江戸後期の文政
10年(1827)には、御射山神戸村の入会地
囲みに端を発した山論が起こり、釜無山への
立ち入り禁止(山留)に反対する強訴事件が
あった(『日本歴史地名大系20・長野県の地
名』)といいます。どこの山でも山中の草木
材料の所有権争いが起こっているのですね。

 釜無川は一級河川。甲斐駒ヶ岳、鋸岳とつ
づく横岳峠に発する本谷と鋸岳東方の七っ釜
付近に発する中ノ川が釜無橋付近で合流して
釜無川となっています。そして一旦北流、富
士見町落合小学校付近から流れを東に変え、
甲府盆地を通り上流とは真反対の南へと流
れ、笛吹川と合流して富士川となり駿河湾へ
そそいでいます。建設省の河川台帳では釜無
川を含めて富士川となっていて、釜無川の名
は俗称になるのだそうですが、山梨県の台帳
にはこれを用いているといいます。

 上流端から笛吹川合流し富士川になるまで
の流路は延長61キロといいます。江戸時代
の地誌である『甲斐國志』には、「本州ノ人
深譚ヲ釜ト云フ、此ノ下流ニ至リテハ砂川ニ
テ深譚ナシ、故ニ釜無川ト呼ブ」。また『甲
斐叢記』には「釜はクマの転語にてクマナシ
は曲がれる隈のなき義なり(中略)蓋(けだ
し)信濃の千曲川に対て称る名ならんか」(『日
本歴史地名大系19・山梨県の地名』)とあり
ます。

 この川は、日本三大急流の上流部にあたり、
上流部に花崗岩地域を持つことから、荒れ川
として有名で、武田信玄の信玄堤も山梨県竜
王町付近にあるそうです。川の名はまた、流
水が温暖で釜をたく必要がないためにその名
がついたともいいます。さらに水流が膨張し
て氾濫「隈無し」から釜無と名づけられたと
いう説もあるそうです。

 ある年の6月、コナシの花が咲き乱れる入
笠山JA牧場のテント場を後にし、大阿原湿
原を経由して釜無山に向かいました。林道作
業のクルマが2、3走る舗装道路を進むと登
山口がありました。標識に導かれ山中に入り
ました。導かれてとはいっても生い茂って地
面も見えない笹の中にわずかな踏みあとがあ
るだけ。まるで笹の波を泳いでいくようです。

 そんな中、目の前がパッと開け、前方にな
だらかな山頂があらわれました。ササの葉だ
けがゆれています。あとは道なりに進むだけ。
平らな山頂は黒木に覆われて眺望はありませ
ん。これで西側が開ければ中央アルプスが目
前なのにもったいないことだと三角点を触り
ながら思ったことでした。


▼釜無山【データ】
★【所在地】
・長野県伊那市長谷と長野県諏訪郡富士見町
との境。中央線小淵沢駅の西12キロ。JR
中央本線青柳駅から歩いて6時間40分で釜
無山頂。三等三角点(2116.5m)がある。

★【位置】国土地理院「電子国土ポータルWe
bシステム」から検索
・釜無山三角点:北緯35度51分18.16秒、
東経138度11分10.05秒

▼【地図】
・2万5千分の1地形図「信濃富士見(甲府)」



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典19・山梨県』磯貝正
義ほか編(角川書店)1984年(昭和59)
・『角川日本地名大辞典20・長野』(角川書
店)1991年(平成3)
・『コンサイス日本山名辞典』徳久球雄編(三
省堂)1979年(昭和54)
・『コンサイス日本地名事典』三省堂編修所
(三省堂)1987年(昭和62)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ
出版)2005年(平成17)
・『世界大百科事典6』(平凡社)1972年(昭
和47)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書
房)1997年(平成9)
・『日本歴史地名大系19・山梨県の地名』磯
貝正義ほか(平凡社)1995年(平成7)
・『日本歴史地名大系20・長野県の地名』一
志茂樹ほか(平凡社)1990年(平成2)


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