▼雑学・山の伝承ばなし
本文のページ(02)
【とよだ時】(豊田時男
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奥多摩・戸倉三山刈寄山今熊山の行方不明探索神

【説明本文】

 『日本書紀』の記述によると、第27代天皇に
安閑天皇(あんかんてんのう)と
いう天皇がいます。
安閑天皇は在位531〜535(古墳時代)とあり、
また在位2年で没とする文献もあり、
なにやらいわくがありそうです。
皇居は勾金橋宮(まがりのかなはしのみや・
いまの奈良県橿原(かしはら)市
曲川(まがりがわ)町)にあったという。

 この天皇が、東行の時、
妃の橘仲皇女(たちばなのなかつひめみこ)が
浪花路で(『東京都の地名』)、
また奈良県笠縫(かさぬい)の祠に
御参籠熊野宮に渡った時、
大風雨にわかに起った時ともいいます。

 とにかくその時、
妃が行方不明なってしまったという。
しかし、安閑天皇の妃は
春日山田皇女であり、橘仲皇女は
第28代宣化天皇の
皇后(『世界大百科事典』)であるので
この記述は間違いらしい。


 ま、それはともかく、妃が行方不明になり大
騒ぎになっていたある夜、
天皇の夢枕に丹生大神(にうたいじん)
(和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野にある
丹生都比売神社の神)が立ち、
「武蔵国今熊山に詣で、祈願すれば
妃の居所はわかる」とのお告げがありました。

 早速勅使(ちょくし・
天皇の命令書を持った使い)が八王子に
やって来て、山頂の社のまわりを
3回まわって祈願し、妃の名前を大声で
呼んだところ無事発見できた
という伝説があります。
以来この山は「呼ばわり山」と呼ばれ、
人捜し、行方不明者を見つけてくれる神として
信仰を集めたといいます。

 この神は人間だけでなく
なくした物を見つけたい時、
山彦がこだまするほど大声で
「呼ばわる」と帰ってくるといいます。
以前は時々、神隠しや人さらいで
いなくなった子供の名前を呼ぶ母親の声が
聞こえてきたそうです。
山頂で大声で叫ぶのは
誘拐犯に子供を帰せと迫っているわけです。


 山宮裏の石碑にある天狗の文字や
里宮にうちわの紋章があるのは、
その犯人を天狗としているのでしょうか。
この山はまた、子供を親元から「呼ばわって」
連れてきてしまう山との意味もあるといいます。
神が誘拐するとは、あな恐ろしや。

 そもそも山頂の社殿は、
ふもとの正福寺(しょうふくじ)の重円和尚が
1364年(貞治3)、熊野本宮を勧請して
造営したのにはじまるといいます。

 南北朝時代の北朝貞治(じょうじ)3年、
南朝の正平19年(1364)に、
別当寺(神社の経営管理を行った寺)である
正福寺が社殿を造営しました。
そして今熊野山社権現としていましたが、
1868年(明治元)神仏分離令によって、
いまのような今熊神社と改称したということです。


▼今熊山【データ】
【所在地】
・東京都八王子市。五日市線武蔵五日市駅南西3キロ。
五日市線武蔵五日市駅からバス今熊バス停で下車、歩い
て1時間で今熊山(いまぐまやま)。写真測量による標
高点(505m)と、今熊神社の奥宮がある。山頂直下に
今熊神社がある。

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」)
・標高点:北緯35度42分38.48秒、東経139度12分57.41


【地図】
・2万5千分の1地形図「五日市(東京)」

【山行】
・某年6月5日(土曜日・晴れ)

▼【参考文献】
・『奥多摩』宮内敏雄(百水社)1992年(平成4)
・『角川日本地名大辞典13・東京都』北原進(角川書店)
1978年(昭和53年)
・『新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005
年(平成17)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年
(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平
成4)
・『日本歴史地名大系13・東京都の地名』児玉幸多ほか
(平凡社)2002年(平成14)

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