『いなかの神さま仏さま・上』(山と峠の神々)
第1章 山・谷・峠の神と怪物

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▼01-02「野 神」

【序文】(140字)

野神は、近畿地方では、山ろくや田畑やかわのほとり、神社の境内、
村の入り口の塚や繁みなどにまつられ、小祠や自然石、樹木を依代
にしています。この神はたいがいは、村の境とされるところにあり
ます。そして村人は、祭日以外は祟りを恐れて近づかないという。
野神といえば、農業の神とか牛馬の神とされています。

▼01-20「野 神」

【本文】
 野神は、近畿地方では、山ろくや田畑やかわのほとり、神社の境
内、村の入り口の塚や繁みなどにまつられ、小祠や自然石、樹木を
依代にしています。この神はたいがいは、村の境とされるところに
あります。

 そして村人は、祭日以外は祟りを恐れて近づかないという。野神
といえば、農業の神とか牛馬の神とされていますが、地方によって
は百姓の神、作物の神、災難除けの神ともいうそうです。

 野祭りの祭日はなぜか、5月5日の節供に行われているところが
多く、村人はその日は仕事を休み、牛と一緒に野神にお参りします。
滋賀県日野町には有名な「近江中山の芋競べ祭り」があり、近くの
野神山(のがみやま)で、毎年9月第1日曜日に行われます。祭り
では、東西2つの集落が神前で里芋の長さを競いあいます。

 このような祭りはどこにも見当たらず、「天下の奇祭」といわれ
ています。これは平安時代末期から続けられているといわれ、なぜ、
里芋の長さを競べるのかについてははっきりしていません。ただ稲
がつくられる以前の、日本人の常食だったイモの名残りであるとか、
「いも」つまり鉄器を司る神の代用であるなどの諸説があるそうで
す。

 同じ滋賀県でも8月24日に行われる熊野の野神祭りは、村の子
どもたちが、山で茅(ちがや)を刈って、祭りの当日、早朝から持
ち寄って野神山に行き、野神を祭る祭場の前の笹などを刈りとって、
そこで蛇の形のしめ縄を茅でつくり、これをカシと杉の木にかけま
す。

 また近くの橋本地区の野神は、5月5日に村中が2組に分かれ、
油単(ゆたん)、角巻(かくまき)、首襷(くびだすき)などの飾り
つけをした牛をひき、御供(ごくう)を持って参るという。

 さらに伊吹山ろくの杉沢地区では、春のシマヤスビ(終い休み日
に)、牛を飼う家々では、牛を赤い布などで飾りつけ、青竹の簓(さ
さら・竹や細い木などを束ねて作製される道具)で、牛の尻を叩い
たりして、興奮させてから、野神へ追っていって参拝するという。

 これをウシハヤシ(牛栄(はや)し)といっているそうです。滋
賀県栗東市上砥山の野神神社では「どぶろく祭り」が行われ、毎年
6月1日に近い日曜日がお祭りだという。

 また同県草津市追分町にも野神神社があって、11月に「甘酒祭
り」を行うそうです。また甲南町の総社神社で7月に、「麦酒祭り」
を行っているようです。さすがに近江(滋賀県)は昔から発酵技術
が盛んな土地柄なようです。

 奈良県では5月5日が祭日で、北部では家ごとで牛を連れて、野
神にお参りしています。中南部では集落の「講」や「組」の祭りと
なっていて、麦稈(ばっかん・むぎわら)で大蛇をつくって部落を
引き回したあと、木に巻きつけたりつるしたりして野神に納めるそ
うです。

 蛇以外の奉納物には、わら製の牛馬やムカデ、鍬や鋤などの農具
の模型のほか、牛の絵馬などもあるという。四国には、野神と同系
のノッゴという神さまがいるそうで、5月5日がお祭りだという。
このノッゴというのは、牛の死霊をまつったものだそうです。

 また愛媛県では、赤子の亡霊に近い妖怪とされているという。こ
のように野神の野とは原野のこと。野神とはそのような人間には制
御しえない領域を支配している神。あるいはそこにすむ神のことで
あるようです。

▼【参考文献】
・『世界大百科事典13』(平凡社)1972年(昭和47)
・『日本大百科全書18』(小学館)1988年(昭和63)
・『日本の民俗25・滋賀』橋本鉄男(第一法規)1976年(昭和51)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎編(東京堂出版)1984年(昭和59)

 

 

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