『いなかの神さま仏さま・上』(山と峠の神々)
第4章 天狗神

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▼04-19「日光の天狗」

【序文】(140字)

日光の天狗東光坊は、徳川家康の化身だといいます。しかし新参者
のため、奥山の古い天狗たちにバカにされ、よく騒動を起こされま
した。11代将軍家斉が日光に参詣にくることになり、あわてた水野
出羽守は、古峰(こぶ)ヶ原の大物天狗隼人坊との連名で一時退去
せよとの立て札をたてたというウソのような話があります。

▼04-19「日光の天狗」

【本文】
栃木県日光の男体山は、かつては二荒山(ふたらやま)と呼ばれて
いました。のち、二荒(ふたら)を「にこう」と読み、やがて「に
っこう」に転訛、漢字を当てて「日光」の名が生まれたとされてい
ることになっています。

ところで、日光には東光坊(とうこうぼう)という天狗がいること
になっています。この天狗は、徳川家康の化身だという説がありま
す。家康は死んだあと神になってまつられています。その神号はい
ま「東照権現」ということになっていますが、もとは天狗と同じ名
前の「東光権現」にする意見が大勢を占めていたと「東照宮史」と
いう文書にあります。

日光の奥山には、昔から名前もつけられていない天狗がたくさんい
るのだそうです。そこへ突然家康の化身の天狗が入ってきたのです。
新米天狗のくせに東光坊などという名前まであり、しかも人間ども
がお参りに来るのです。

当然、古い天狗にジャマをされ、バカにされて、よく騒ぎを起こし
たという。江戸も後期の1825(文政8)年、11代将軍徳川家斉が日
光にお参りに訪れることになりました。

そこで前年の文政7年に、日光社参奉行・水野出羽守が、日光の前
山である古峰ヶ原(こぶがはら)にすんでいる大物天狗といわれる
隼人坊(はやとぼう)と連名で、奧山の中の剣ヶ峰に高札を建てま
した。

内容は「来年、将軍が日光社参に訪れる。その間は騒ぎを起こさな
いよう、昔から天狗の山といわれた京都の鞍馬山、愛宕山、静岡の
秋葉山、福岡県の英彦(ひこ)山など、他の山に移っているように」
というものだったという。

ウソのようですがホントの出来事だという。こんな愉快な話、みな
さん信じないでしょうねえ?

▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典9・栃木県』大野雅美ほか編(角川書店)1
984年(昭和59)
・『山岳宗教史研究叢書16』「修験道の伝承文化』五記重編 (名著
出版)1981年(昭和56)
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和5
2)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)

 

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