『いなかの神さま仏さま・上』(山と峠の神々)
第4章 天狗神

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▼04-18「岩手件早池峰・遠野の清六天狗」

【序文】(140字)

『遠野物語拾遺99』にも出てくる早池峰山の天狗。酒が好きでい
つもヒョウタンを持っていていくらでも酒が入ったという。遠野
市には、その天狗の着ていた「天狗の衣」がいまでも伝わってい
るという。袖に十六紋の菊が綾織りになっていて、胴にもヒョウ
タンの形の中に菊の紋があるということです。

▼04-18「岩手件早池峰・遠野の清六天狗」

【本文】
東北の名山として早池峰山(岩手県)は、山頂に霊泉といわれる
池があり、これが山名のもとのなってといます。この山の麓には
天狗の話がたくさん残っています。その一つ、村に足の速い男が
いました。村人がそろって早池峰山参りするのときも、いつも人
の後から家を出ます。

みんながあえぎあえぎ、やっと山頂に登ってみると、いつの間に
か先に来ていて「お前たちは何をしていたのだ」と笑っています。
名前を清六天狗といい、花巻あたりの人で酒が好きで、さび付い
た小銭で酒代を払い、差し出す小さなヒョウタンには酒がいくら
でも入ったという。民俗学者柳田國男の『遠野物語拾遺99』に出
てくる話です。

清六天狗は酒が好きで、いつも小さなヒョウタンに酒をつめて持
ち歩いており、酒がなくなるとさびついた小銭を払って酒を所望
するのですが、ヒョウタンには酒をいくらつぎ込んでもみんな入
ってしまうという。遠野市には、天狗が着ていた「天狗の衣」が
伝わる家があり、それは袖の小さい青い襦袢のようなもので袖に
十六紋の菊が綾織りになっていて、胴にもヒョウタンの形の中に
菊の紋があるという。

また天狗の衣のほかに、清六の履いた下駄も大切にしていたとい
う。また清六の末孫という人がいまも岩手県花巻市にあたりに住
んでいて、まわりの人はこれを「天狗の家」と呼んでいたといい
ます。

さらにその家の娘が遠野の町でいたことがあったそうですが、彼
女は夜中にどんなに厳重に戸締まりしてあっても、どこからか出
て行って町を歩きまわり、時々人のリンゴ園に入り込みリンゴを
とって食べているという。その後一関市の方に住んでいたという
話もあります。

ある夏、早池峰山に登り、薬師岳を経由して、遠野側下る途中の
小田越えの避難小屋に泊まりました。小屋は以外と広く快適です。
日がかたむき、誰も居ず静かです。清六は飛ぶようにしてこの付
近を通るのだろうか。運よく一目でも見られればこんないいこと
はありません。

突然小屋の戸が開きました。こども連れの一家がドヤドヤと入っ
てきました。それからは賑やかなこと賑やかなこと。深田久弥選
定の『日本百名山』のひとつ。また田中澄江選定『花の百名山』
にも入っています。

▼【参考文献】
・『岩手の伝説』平野 直著(津軽書房刊)1983年(昭和58)
・『図聚天狗列伝・東日本』知切光歳著(三樹書房)1977年(昭和
52)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)
・『遠野物語拾遺』:(『遠野物語』柳田国男(角川文庫)1979年
(昭和54)
・「バケモノの文化誌」バケモノ展のパンフ

 

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